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心の目線を揃える

街に並ぶ出店の数々。歩くだけでワクワクする見たことのない品々。フレンドリーに声を掛けてくる人。海外旅行の楽しみの一つといえば買い物。

しかしながら

「ぼったくられた!」

よく、発展途上国を旅した人や、ウガンダに滞在する方からそんな話を聞く。
 

確かに現地人と外国人では、同じものを購入する時、提示価格に数倍の差がある。

そのたび

「おい! またぼったくりかよ」

と僕もイライラしてしまっていた。だが、ここで気分が悪くなっていたのは、「だまされた」感覚に僕が勝手に陥っていただけ。
 「ぼったくる」を辞書で調べると「法外な料金を取る。むりやり奪い取る」とある。本当に彼らは、そんなことを考えているのか。 ウガンダ人から見れば、私がたくさんお金を持っているだろうと思い、何倍もの金額で交渉してきただけなのだ。逆に言えば、お金を持って無い人からたくさん取ろうとは思ってないはずだ。
 


真昼の灼熱のある日。サングラスを売り歩いているお兄さんが通り掛かった。僕はそれを買おうと思い呼び止め、「いくら」と尋ねる。彼は6万シリング(約2千円)と言ってきた。何とか交渉を重ね、3万シリングで最終決着。その時5万シリング紙幣しか持ち合わせてなく、彼に渡した。すると「お釣りを持っていなくて両替してくるからここで待ってて」と僕の意見を聞く前に走り去ってしまった。
 「うそだ。絶対に戻ってくるはずがない。やられた」

と半ば諦めながら立ち尽くしていると「暑いから、彼が来るまでこっちにいなさい」と老婆。なぜ彼が戻ってくる前提で話しているのか。彼の行方を見失った僕は、完全に盗まれたと思い、「これがアフリカか」。なんて思った。
 だが、しばらくして彼が現れ2万シリングを手渡してきた。こんなに暑い中お釣りを探すため、走り回っていたのだろうか。額には汗がにじんでいた。そして彼は「サンキュー」とだけ言い残し、また立ち去った。
 

この間に、お金を持ったまま逃げようと思えば十分に可能だったはず。彼を疑ってしまった自分と、少しでも安く買うことしか頭になかった自分が情けなくてたまらなかった。


 実は彼らが提示してくる価格も、日本円で考えると妥当な金額だったりする。賃金が安く不当労働の中、懸命に働いている彼らから「ぼったくっていた」のは僕たちよそ者ではないのか。
 

何度もしてきた見返りを求めない募金活動。しかし、一方では彼らから物をもらうのに、お金を出そうとしない自分。矛盾ではないか。
 「アフリカは、すりや万引き、ひったくりが多い危険な国だ」「貧しいから、せめて募金だけでも」と勝手な先入観と善意で心を満たしていたんではないか。心が貧しかったのは僕たちではないか。
 貧困を無くし、平等な社会を作る。僕たちが最初にすべきことは「心の目線をそろえる」ことだろう。


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