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【両利きの組織をつくる9:第五章 組織開発の本質(前半)】

本マガジンの前回までの記事は上記に入れています。

本マガジンでは、近年注目の“両利きの経営”についてAGCを題材に事例研究した書籍、“両利きの組織をつくる”について解説していきます。今回は、前回マガジンでビジョナリーカンパニーを学習した健が同期の倫也に工場で会います。(両者とも課長)倫也がこの本について解説し、その中で2人が議論していきます。今回は第五章「組織開発の本質」の前半を解説します。

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👱🏼‍;おはよう。

👨‍🦱;おはよう。今日は、第5章の「組織開発の本質」に入っていく。要するに、両利きの経営を実現するための組織能力をどのように開発するかって話だ。これまでの「両利きの経営」という理論が、「見取り図」だとすれば、本章は、それを実現するための「ルートマップ」だと著者は言っている。

👱🏼‍;ルートマップか、これまでAGCの具体例を見てきたけども、それを要素化していくイメージかな。

👨‍🦱;そうそう。でもさ、登山やマラソンも同じだと思うんだけど、始めたことでわかってくることがあるし、そこでやっと自分のルートというのが出来てくると思うよ。だから、ルートマップや知識を得ても結局実践しなければ意味がない。そこで、どう実践するのかというあたりが書いてあるんだ。

👱🏼‍;おお、わかった。

◆両利きの経営を実現する組織開発

👨‍🦱;著者の加藤氏が組織を変革させるために用いているアプローチは、「組織開発」と呼ばれるものだそうだ。

👱🏼‍;うーん、組織開発ってなによ?

👨‍🦱;著者は、「組織をworkさせるための意図的な働きかけである」といっている。

👱🏼‍;・・・・・。

👨‍🦱;あわてるなって、解説するって。(笑)いろんな解釈が混じってしまう言葉だしな。まずさ、これまで述べてきたけど組織改革ってどこで起きるのか覚えている?

👱🏼‍;もちろん。経営者(マネージャー)のトップダウンとミドル・若手のボトムアップがミートするところで起きる。変わらない場合、両者の共犯だ。これは刺さったからよく覚えている。

👨‍🦱;そう。そして、組織開発においてもトップダウンを引き出さなければならない。高速PDCA(効率化)が最重要視されることが主流の組織で、ボトムアップを期待するのがさすがに無理がある。実際もそうだし、著者も言っている。俺も若手の頃に部署内でいろいろチャレンジしたけど(その部署の)トップのサポートがない中で変革を起こしていくというのは、さざ波を作る程度で終わってしまう場合が多かった。

👱🏼‍;トップダウンがまず必要ということはわかった。ではどんな姿勢で、やり方でトップダウンを始めるべきなんだろうか。ただ、単にトップの意思を見せつけるだけでは、空回りで終わるわな。おれも自部署で、何度もから回ってきたからよくわかる。。。

👨‍🦱;だな。著書では、5つの側面から組織開発の意味をとらえている。

①組織を変えるのではなく、組織が変わるの支援する取り組みである。
②組織の能力開発である
③能力発揮ルート・ファインディングである。
④組織感情のマネジメントえある。
⑤経営に対する信頼感醸成である。

👱🏼‍;なるほど。もう少し詳しく知りたいな。

👨‍🦱;OK、ひとつづつ見ていこう、これがこの章のメインだからな。今日は2つ目までみて、次回に後半の3つを話そう。まず1つ目からだ。

① 組織開発は組織を「変える」のではなく、組織が「変わる」を支援する取り組みである。

まず著者は、他動詞ではなく、自動詞で考えろと言っている。何かを変えようとする必ず抵抗が起きる。どんな組織でも解決に結びつくネタがあるという。そのネタを入り口にして、関わりたくなるようなストーリの筋を作ることが必要だと言っている

👱🏼‍;なるほど。そうなんだよね。変えるって言った時点で、否定されていると受け取ってしまうんだよね。で、実際、外部から変化を起こされてうまくいかないどころか、むしろより働きにくなる(一見ロジカルに必要そうに思うが、本質的には無駄な仕事が増える)という体験もしているんだと思う。背景から探って、“自分たちが問題に感じている問題”から始めないとうまくいかないわな。経験あるよ。局部的なロジカルな分析ではそれがいくら正しかったとしても、混乱させてしまう可能性があるよね。

👨‍🦱;なるほど、著者も当事者が組織のノウハウやスキルで改善できることはなく、当事者が自ら変わることでしか解決できない問題がほとんどだと言っている。そのために、対話形式が有効で、それを通じて、「なに注目して、それをどう解決していくのか」という共通認識を醸成することが必要と言っている。

👱🏼‍;なるほど、そこから始めてやっとありたい姿、解決行動がうまれるんだな。

 👨‍🦱;著書ではこう書いてある。

解決行動が生まれるプロセスは、外部支援者が解を提供するというよりは、当事者が潜在的に秘めている解決策を見出していくようなものとなる。たとえば、これまであまりスポットライトがあたってこなかった部署(人材)が、実は既に解決案を持っていることが多いのだ。外部支援者が関わることで、これまでの組織の力学に働きかけて(既存のスポットライトを動かして)、組織が自ら変われる筋を探っていくのである。海外の有名企業の成功事例や他社事例ではなく、自社の事例こそが新しいカルチャーを作り、変革における感染力を持つのだ。

👱🏼‍;腑に落ちるなこれは。

② 組織開発とは、組織の開発能力である。

👨‍🦱;2つ目に行こう。著者は組織開発は個人の能力開発を目指す人材開発とは異なり、組織の能力開発だといっている。ここを混同しては、いけないそうだ。また、いくら社内研修をしても、経営の意思がないところでの研修は、組織能力開発にはつながらない。研修を受けても実践をできない、しないがほとんどだ。それを改善するために、下記5つのポイントがあるという。

👱🏼‍;おお、どんなことなんだろう。

👨‍🦱;一つ目は、「現場の困りごとから始める」ということだ。組織開発を始める上で大切なのは、「現場の困りごと」からスタートすることだという。現場では忙しくて、もしくはどうしたらいいかわからなくて困っている事柄が少なからずある。これについて「なぜできないのか」を問うのは、意味がないしモチベーションを下げる。そのため、「(現場は)変わりたくても変われないのではないか」「動きたくても動けないのではないか」というように、現場に寄り添うスタンスで取り組む必要があるんだ。

👱🏼‍;それよくわかるよ。突然やってきて、なぜ、なぜ?って正論だけ言ってしまうと、現場から余計な抵抗が生まれるな。あいつはなにもわかっていない、話しても仕事を増やすだけだと言われてしまうのが落ちだな。

👨‍🦱;そうなったら、進む変革も進まない。なので、著者は、ここで問わなければいけないのは、「何があればできると思うのか」「何がどう変わったらできそうか」という問いだという。そしてこうも言っている。ここは俺はポイントだと思った。

「なぜできないか」は問題解決志向の問いであり、原因を特定できれば問題は解決するという前提がある。だが組織の問題は原因が特定できれば解決するという性質のものではない。原因が明らかになることで、かえって事態が複雑になる場合もある。特定の部署や個人が原因とされたために感情的な対立が生じる、といったことが起き得るのだ。これに対して、「何があればできると思うのか」はコーチング的な問いであり、目的思考・未来志向の問いである。現場はポテンシャルを持っており、その発揮を妨げている制約要因を探すのである。

👱🏼‍;そうだな。進める側がコーチングの技術を持たないとうまくいかない。さらに、それは必要条件であって十分条件ではないよな。

👨‍🦱;そう、そして2つ目につながっていく。2つ目は「課題がどのレベルで起きているか意識する」だ。著者は下記のように言っている。

現場の実情を理解できると、どうしてもすぐに解決策に飛びつきたくなるものだ。新しい研修の導入などが最たる例だ。しかし、これは「組織開発の罠」と呼んでもいいと著者は言っている(下記図)

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現場の困りごとが把握できたら、その問題がどの階層レベルか捉えることが重要になる。戦略レベルから、仕組み・手順のレベルで対応は全くことなるよな。多くの場合、適切でないレベルで問題を捉えていたり、複数のレベルを混同していたりする。

👱🏼‍;個人的な経験ですは、多くの場合は組織能力レベルで捉えるべきものな気がするな。戦略や目的までは良いが、それを実行するためにどんな能力が必要かの議論がほとんどないと思うんだよね。よくあるのが、総論OK、各論・・・・・そこで思考停止、いつの間にか時間が過ぎて問題が先送りに・・なんてね。

👨‍🦱;そうしたケースでは、いったん立ち止まる必要があると著者は言っている。オフサイトミーティングや合宿などで、歴史を振り返ったりして、自分たちの置かれている状況を幅広い視野でみる必要があるという。

👱🏼‍;そうか、自分たちの環境に必要な能力は何かを歴史含め様々な角度から見ていく必要があるんだな。

👨‍🦱;3つ目は 「必要な組織の能力について当事者間で合意する」だ。当然ながら、必要な能力がわかったらそれを当事者間で、共有、合意する必要がある。著書では、こんな言い方をしている。

たとえば、ある事業において、これまでは「顧客からのオーダーを迅速に処理する」ことが求められていたとしよう。しかしAIやIoTなどのデジタル時代の到来にともなって、「顧客のニーズを予知・予測する」ことが求められるようになってきた。顧客からのオーダーを受けて動きだすのではなく、顧客のニーズを予知・予測するとなると、仕事の組み立て方や流れは根本的に変わってくる。

👱🏼‍;なるほど。その共有と合意に、コングルエンスモデルはこれに適していると思うな。

👨‍🦱;そうそう。それが次につながってくる。4つ目は「新たに築くアライメントを構想する」だ。必要な組織能力が特定され、必要性が合意されればそれをどうやって獲得するか考えなければならない。これは個人が能力を付けるという話ではない、お前の言う通りコングルエンスモデルの「KSF」「人材」「公式の組織」「組織カルチャー」の再構築を考えなければならない。著者はこう言っている。

アラインメントを形成する各要素について変更や調整が必要となる。組織全般に関わってくるため、新たな組織能力の必要性には当事者同士で合意できていても、能力形成の実行過程で衝突が起こる可能性もある。その結果として一部の基本要素が古いまま維持されると、能力形成が阻害されてしまう。だからこそ、新たな組織能力の獲得には、局所的な施策ではなく、築くべきアラインメントを意識して全方位的に取り組んでいく必要がある。

👱🏼‍;なるほど、このアライメントの調整の時は、実際に制度含め考えないといけないってことだな。

👨‍🦱;そう。そして、5つ目は 「体制と手順を整える」だ。既存の組織の中に新しいアライメントを作り出そうとすると、往々にして従来のやり方にこだわる人がいる。そこで抵抗や反発が起こる。

👱🏼‍;そうなんだよな。おれ両方の立場になったことがあるよ。若いころ、ある作業を変えたいと思って現場を説得しようと思っても、やっぱりベテランが納得してくれなくて進まないというときはあった。なんでだよと思っていたよ。でも、数年たって、俺リーダーになってうまくいっていない時に外部コンサルが来て指導する時があったんだ。その時、“よこやり入れないでほしい”って正直思ったんだ。当時のベテランの人の気持ちがわかったよ。否定されて気になってムキになってしまうんだよな。今考えると恥ずかしいよ。

👨‍🦱;なるほどな。著者は下記のようにいっている。

そうしたときは、した場合には、組織を分けて取り組むことが有効だ。「両利きの経営」である。両利きの経営は全社レベルだけでなく、事業部など特定の部署内でも実践できるアプローチなのだ。既存の業務のやり方を深掘りしつつ(カイゼン活動)、新しい業務のやり方を探索するのである。抵抗(反発)する人に無理な変化を強いるのではなく、新しい事業環境の中でも居場所を作るのだ。両利きには、「人を生かす」という発想が流れている。

👱🏼‍;そうそう。「人を生かす」という部分だよな。当時、上司が既存業務と改善業務をうまく切り分けてコンサルと共に改善業務に入ることになったんだ。それで改善に集中することになり、むしろ自分がやりたかったことがスムーズにできた。そして、当然俺は既存業務を知っているから、各種改善内容を既存業務に練りこんでいくことができた。

👨‍🦱;なるほど。既存業務がなくなることはあり得ない。新しいことを試して既存業務に還元していく。このこと自体が組織を進化させていくことになる。

👱🏼‍;② 組織開発とは、組織の開発能力である。に関しては分かったよ。

👨‍🦱;お、もうこんな時間だ。今日はここまでにしよう。次回は組織開発ポイントの③-⑤を解説しよう。

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 今回は、組織開発とは何かとそのためのポイント①②を解説しました。ちょっと中途半端なところで切り分けることになってしまいましたが、次回は後半③④⑤を解説し5章を終わらせたいと思います。終盤になるにつれて、さらに面白くなってきますので、フォロー、スキしてもらえたらうれしいです。

なお、下記はこれまでのマガジンです。気になるものがあったら是非覗いてみてください。

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