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【ネタバレ注意】『アクアマン』(Aquaman):オジ&デス対談第一弾 Vol.4

《今までに観たことがないあれやこれや》

英雄夢物語というマガジンのタイトルに相応しく、今回は「ヒーロー」についての話。スーパーパワーを持ったアクアマンがいかにして真のヒーローへと成長していくのか、そして、真のヒーローとは何なのか。素人が勢いでいきなり核心に迫る!

「ヒーローとは誰なのか」

デス さっきの話の補足だけど、あの映画のストーリーとかメッセージ性からして、ネオナチ的なものや排外主義的なものを否定していることは明らかなんだけど、それは、政治的なものだけではなくて、たとえばアメリカのコミックスゲートみたいな、「最近のDCやマーベルがダイバーシティを追及し過ぎて、女性や人種的・性的マイノリティばかりが活躍するようになってつまらなくなった」とか言って、リベラルな作品を作っているライターやスタッフなんかを攻撃しているミソジニストやレイシスト連中がいる。
 これまでのDC映画は、ワンダーウーマンをセクシャライズしたりとか、そういう連中にもウケる要素が多少なりともあったけれど、『アクアマン』にはそういう要素がゼロ。つまり、トランプみたいな上からのファシズムにも、インセルやオルトライトやコミックスゲートのような下からのファシズムにも、どちらに対してもアンチテーゼを突きつけた。それも素晴らしい。

オジサン そうですね、さっきも2つの世界の掛け橋になるという話をしましたけど、そこに繋がる話ですよね。物語も配役も。これまでのDC映画と比べてもその点が明確に示されたのも画期的だったということですね。で、さっき、アトランナもヒーローであるって言ってましたけど、ヒーローとは?って話をしておきましょうか。

デス ヒーローの定義?

オジサン そう!

デス それは色々あるけれども…まず「なにをもってヒーローとするか」というか「これはヒーローじゃないよね」っていうのが示されてるよね。例えば、オームの行いにも正当性はあって絶対悪でないけれど、地上にもいる善い人たちのことは度外視していて、そこがヒーローの要件を欠いている。
 で、ブラックマンタとお父さんの海賊集団はストリートギャングのメタファーだと思う。他のメンバーはヘルメットなんかのせいでルックスはわからないけれど、あの親子は黒人で、差別を受けた結果、他の生き方の選択の余地がなくて海賊をやってるような印象。アクアマンは、海賊行為の代償であるとして、ブラックマンタのお父さんを見殺しにしちゃうわけだけど、ヒーローへと成長していくなかで、自分の行動は正しかったのかと自問し始める。
 アクアマンは、オームの立場も考えているし、彼自身も超人ではあれど完璧な人間ではない。でも自分の関わる人びとのことをできる限り慮って行動する。結果、形式的にはアトランティスの王になるけれど、アクアマンが王になることによって、アトランティスの王座は形骸化したとも言えるんだよ。ある種の名誉職のようなもので、あの映画はアクアマンが王になる物語ではなくて、王を超越したヒーローになる物語になっているんだよね。

オジサン あの、ボクの見解を述べるとですね、アクアマンって、最初は、地上を攻めてこられると困るから、とりあえずそれ止めさせようと思って行くじゃないですか?で、戦っている中で、ブラックマンタと再会して、自分が誰かを助けなかったことで自分にとって大事なひとが傷付いたりひどい目に遭うことがあるって気づきを得る。それが大事かな、と。最初から「他人のために」ってやってるひとは、頑張っても報われなくて闇落ちしたりするんですよ、逆に。アクアマンの場合は、最初はもう少し利己的に地上に住んでる自分やお父さんのためってかんじで、でも、そこから成長していく成長譚になっているのもいいところじゃないですか?

デス そうそうそう。アクアマンは、たまたまアトランティス人の超人的なパワーを持っているけれども、人間としての弱い部分もあるし、それに自覚的。自分が犯した過ちにも向き合って、そこで、突然、高邁な精神だとか大義名分に飛躍するのではなく、あくまで、それ相応に人間らしく、誰もが感情移入できるレベルで地道に進歩していくっていう。そういう自分のできる範囲でやれることをやるし、せっかく持った自分の才能は活かすし、でも、どんなに能力があっても奢り高ぶって、その能力を濫用するようなことはしてはいけないっていうようなとこまでいくわけですね。

オジサン くくく、なんでそう若干偉そうなんですか(笑)

デス (オジサンのツッコミをスルーして)監督のジェームズ・ワンも「ヒーローの条件っていうのはマントを着て、スーパーパワーを持って…ってことじゃない」って言ってるわけですよ。アクアマンは、たまたまアトランティス人の血を引いてスーパーパワーを持っているけれど、そうでなくてもヒーローになれるっていうね…。大事なのは「能力」ではなく、精神性と行動力というか。

オジサン ふふん。「だからオレはヒーローなんだ」とか言い出すわけですね。

デス ま、そういうことですね!

「アクアマンはあざとくないのに泣かせる映画」

デス あと、オレ、大事なこといい忘れてたけど、アクアマンを初めてみたときに泣いてるわけなんですよ。私が、映画とかフィクションを見たり読んだりして泣くっていうのは極めて珍しいことであって、一度は明らかに落涙してて、その前後に2,3回くらいうるうるきたっていうか…

オジサン まぁ、デスのひとは感激したり感動したりしても泣きませんからね、基本。

デス そうそうそうそう。そうなんだよ。だからね、そういう意味でもね、オレを泣かせたっていうね、大したものですよ。しかも、そんなに泣かせようって作為のある映画ではないわけだよ。自然とそうなるようなシーンはあるけれども、特別めちゃくちゃここで観客を泣き落としてやろうみたいなさ…

オジサン 余命何ヶ月とかそういう難病ものとか…

デス そうそう、うん、あと動物ね。

オジサン 難病ものと動物ものは人を泣かせますからね。

デス そういうのがないのに。まぁ、オレが泣いたのは、アクアマンがトライデントを手に入れるためにカラケンの待つ滝の向こうに行くときに、メラとアトランナがかけた言葉ですよ。メラが「今は王じゃなくて、王を越える者が必要なんだ」みたいなこといって、アトランナが補足するかたちで、「それは真の英雄だ」って、ヒーローだって言う。泣きましたね。

オジサン 王は国の為に戦うだけだけど、ヒーローはみんなのために戦うんだ、って言いますよね。

デス で、アトランナが滝に向かうアクアマンに「怖いか?」って聞くんだよね。で、アクアマンは正直に「怖い」って言うんだよね。それに対してアトランナは「それでいい」って、で、「行っておいで」と送りだすんだよね。要するに、アクアマンは超人的ではあるけれどちゃんと人間的な感情があって、かつ人間的などちらかというと男性のヒーローとされるひとにとってはかっこ悪いとされるような感情を正直に認めて表現できる人間なわけですよね。そこがまた、なんていうか、ヒーローとしての器というか、条件と言うか…

オジサン もともとはアーサーって怖い物知らずみたいな人じゃないですか。

デス そうそう。

オジサン あんな強いし、撃たれても死なないし。だから、多分、あんまり怖くなかったんだと思うんですよね、今まで。ああやって海賊退治したりしても。でも、さっきも話したように、色んな経験をして、自分の行動一つで誰か大事な人を傷つけたり失うかもしれないとかそういうことを知ったから、「怖い」んですよね。

デス そうそう。

オジサン だから、「それでいい」なんですよね。そういうところにも、グッときたわけですよね、デスのひとは?

デス そう。そうなのよ。また、今ね、オジサンが言ったようなこととか、なぜ「怖い」に対して「それでいい」というのか、とかそれをウダウダ説明しないんだよね。うん。説明しないんだけど、見ているとそういう解釈ができるっていう。また、そういう解釈ができるだけの積み重ねがストーリーの展開の中にある。そこが素晴らしいんだよ、『アクアマン』は。

オジサン そうなんですよ。アメコミ映画ってのは何も考えないでポップコーンとコーラ片手に見ていい映画ではあるんですけど、その一方で、ちゃんと台詞によらない説明というか、台詞で説明してしまわないで、映像として色んなことをちゃんと示せてる、というのがあるんですけど、特に『アクアマン』はそこが優れていたんじゃないかなと、今、思い返してみるとそんな気がするんですよ。

デス そうそうそう。

オジサン 台詞によって状況や感情を説明したりという場面が少なくて、台詞ではなく、映像で説明されていく。

デス あと、アクアマンとお母さんが再会するシーンも、オームとお母さんが再会するシーンも、センチメンタルになり過ぎない。なり過ぎないんだけど、センチメンタルであることを否定するものでもなくて、ほんと丁度いい感じの演技をしてくれるっていうか…。だから、いわゆる娯楽大作として割と気軽な気持ちで見ていても楽しめるし、いろいろと真剣に感情移入しながらも見ることができるっていう、まぁ、その客層の射程が広くて、映画としての楽しみ方の汎用性が高いというか。そういうところもいいですね。

オジサン で、お母さんが生きてたってことは、あの兄弟にとっては、やっぱりすごく大きいんですよね。お母さんが死んでしまってるとなったら、オームはお母さんを死なせたお父さんを正当化するためにも、2つの世界があるって話を信じて、その信念に基づいて行動せざるを得ないし、お母さんが自分のせいで殺されたと思っているアーサーとしても、ある種の行動の制限があったりとか…自分のせいだと思ってるから、自分がどうなってもいいみたいなところもあって、だからアーサーは怖いもの無しだった、ってところはあると思うんですよ。でも、お母さんは生きていたし、メラのことを好きになったりもすると、やっぱり自分の行動に責任が出てくる、と。そういうことは言ってないし、そこまで映画で言おうとしているのかもわからないですけど、そういうことも考えますよね。

デス うん。

「オームは歌を歌いだす?」

デス あとは、あの、今回のアクアマンの素晴らしさと大ヒットで喜んでいるのが、パトリック・ウィルソンのファンたち。実は私もパトリック・ウィルソン好きですから。有名な映画で言えば、『ウォッチメン』のナイトオウル役だったり、あのバットマンのパチもんみたいなやつね笑、あとは彼はジェームズ・ワン人脈の人ですから、『インシディアス』とか『死霊館』でも主役級のキャラを演じてて、すごい派手な「大スター」ってタイプの俳優ではないけれど、手堅い演技ができるひとだし、ファンからすると「大スター」俳優と比べるとなかなかスポットが当たらないけれど、映画界を支えている素晴らしい俳優であるという認識だろうから、『アクアマン』みたいなブロックバスタームービーで、オームと言う主役級のド派手な役を、しっかりとカッコよく演じてて、ファンが喜ぶってのはよくわかる。

オジサン ボク、他人が自分の好きなものについて話してるのを聞くのが好きなので、ファンの人たちが狂喜乱舞っていうかんじのブログやツイートを書いてるのを見て楽しいです。

デス パトリック・ウィルソンが、それまでのイメージからするとあんまりなかった、ああいう派手な役を演じきっていることで、パトリック・ウィルソン自身もネクストレベルにいった、みたいなさ。これから役の幅ももっと広がるんじゃないか、っていう将来性にたいする喜びみたいなものもあるっていうか…

オジサン あの、デスのひとが、パトリック・ウィルソンがフレディ・マーキュリーのマネして"Somebody to love"歌ってる動画を教えてくれたじゃないですか。あれ、歌、めちゃくちゃうまいし、すごく器用なひとなんだなって感じがしました。もうこうなったら…オームも歌を歌うしかないですね。

デス あのひとはミュージカル出身らしいからね。

オジサン 2では歌を歌うしかない!

デス まぁ、歌は歌わなそうなキャラだけどね(笑)

オジサン うーん、でも、歌ってほしいな…

デス まぁ、ロキなんかもね、最初は敵だったわけだし、『アベンジャーズ』ではメインのヴィランだったのに、最終的には「救世主はここだ!」とか言っちゃうようなキャラになったわけだし、オームも『アクアマン3』とか『ジャスティス・リーグ3』くらいになると、歌を歌い始めても不思議じゃないかんじになるかもしれない(笑)

オジサン まぁ映画本編じゃなくてもいいんですけど、オームの衣装を着た状態で歌ってる動画をインスタにアップしてください、みたいな。

デス もしくはコミコンとかで…

オジサン ああ、それいいですね。

デス サンディエゴ・コミコンとかに参加して、オームの格好で登場して、観客から「“Bohemian Rhapsody“歌ってくれ」とか無茶ぶりされて歌っちゃうとか。

オジサン ボクはやっぱりアクアマンに関連するような歌を歌ってほしいです。

デス アクアマンに関連する歌?

オジサン あるいは、ミュージカルナンバーで、オームの気持ちに添ったような感じの…。有名なミュージカルナンバーで、過去にやった役の曲とかで。

デス でも、でも、“ボヘミアン・ラプソディ“はけっこうオームっぽいよ?♪Mama, Just killed a manですよ?まぁ、でも、映画の『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしてるからそっちとぶつかっちゃうからな。もっと違うのがいいかもね。ちなみにモモアさんはメタル好きですから。

オジサン そうですね。

デス モモアさんリスペクトも兼ねてモモアさんの好きなメタルを歌うとか。

オジサン う、うーん…

デス モモアさんの好きなメタルで、パトリック・ウィルソンの歌唱力を活かせるようなタイプ、だから、要するにIron MaidenとかJudas Priestとかハイトーンヴォーカル系の。

オジサン ああ。ジューダス・プリーストはヴィジュアル的にイケる気がしますね。

デス メイデンもプリーストもどっちもね、戦いの曲とか王の曲とか結構あるから。アイアン・メイデンにも“The Trooper“って曲がありますからね。なんか無理やりオームとアクアマンに捧げる曲ってことにして歌うみたいなことができなくもない。

オジサン アイアン・メイデンを歌うときはバックでトレンチに泳いでてほしいな、みたいな…

デス わかる笑

=Vol.5に続く=

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