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点ではなく、流れを見る【じんせい論】

つい先日、取材が急に無くなった。現時点ではリスケ(日程を延期して実施)の予定だけど、もしかしたらキャンセル扱いになる可能性もある。

僕はフリーランスだから、ひとつ案件が無くなると収入減に直結するし、たとえリスケであったとしても別の仕事を入れられたかもしれないから、そういった意味でも損害はないとはいえない。

もちろん、こういったことをゼロにするのは難しい。取材対象者さんやクライアントさんが体調を崩されたり、何かしらの緊急を要する事案が発生したり、そんなことはありえる話だからだ。特に体調不良の場合、一昔前のように「這ってでも仕事第一」みたいな風潮がコロナ禍も相まって歴史的遺産になりつつあるのは、とても良いことだと僕は考えている。

とはいえ、さっき記したような事情がフリーランスにはあるから、怒りはしないにしても、ガッカリしたり、ちょっと落ち込んだり、少し前の僕ならしてしまっていたように思う。でも、今回は全くそんな気持ちにならず、すんなりと受け入れられた自分がいた。早めにお風呂に入り、夜は大好きなサザンオールスターズを聴きながら、まったりとお酒を飲んでいた。

「今日は、神様がゆっくりしなさいと言ってくれているんだな」と、そんなふうに思えたのだ。それは、点ではなく、流れを見ることができるようになってきたからなのではないかと考えている。

すべての出来事は、流れの中にある。なんとなく、その日あたりは「ゆっくりする」流れにあるように感じていて、そんな中で取材が中止になった。だから、「あぁ、やっぱりそうなんだな」と納得ができたわけなのである。

よく「一喜一憂しない」といわれるが、それは点を見ず、流れを見ようということなのではないだろうか。そして、流れでいうと、「なんだかんだで悪いようにはならないだろう」という確信めいたものを最近は持てている。根拠は何もないし、もしかしたら間抜けな楽観論者に成り果ててしまったのかもしれないけれど。

人生にはバイオリズムがあるのを40年生きてきた中で実感している。ゆったりと下降しているときはゆっくりすればいいし、勢い良く上昇しているときはそれに乗って動き回ればいい。このバイオリズムは年単位はもちろん、月や週ごとにもあるように感じている。

下降しているからといって何も凹むことはない。そんなときは何もかもダメな期間なのではなく、他にやるべきことがあると捉えると良い。

僕の話をすると、昨年の年明け直後の時期は仕事が少し下降気味だった。「今年ヤバいかも……」と、まだ近視眼的に点に囚われていたままの昨年の僕は、焦ったり不安になったりもして、ソファでウジウジと寝転がっていた。でも、今思うと不思議なんだけど、ある日パンっと切り替わって、やるべきことがひらめいたのだ。そう、あれは大雪が降った日だった。久しぶりに小説を書き始めたのである。

流れを振り返ってみると、あの時期があったから小説を完成させることができた。たぶん、そういう流れだったのである。仕事のほうも、気温が上昇するにつれ持ち直し、おかげさまで何とか復調してきた。今月などは、なかなかの案件数のために生活にハリが生まれ、朝から晩までテキパキとしている。おかげさまで、ソファにいる滞在時間が短くなった。

点ではなく、流れを見る。そうすれば、何より心が安定してラクになる。この文章を書いていて気づいたが、心の安定を保てていることが「なんだかんだで悪いようにはならないだろうという確信」につながっているのかもしれない。

フリーランスのみならず、不安や心配を抱えながら生きている人はたくさんいる。無理せず、ぼちぼちやっていきましょう。流れの出口は明るいと、信じて。

そうそう、それでね。昨年の大雪が降った日にパンっと切り替わって書き始めた小説を、来月4月にKindleで出版することになりまして。これが言いたくて、この記事を書いたわけではないです、決して。

タイトルは「BAR90's」といいます。90年代の楽曲がモチーフの物語。価格は500円で、4月6日にKindleで配信します。

<ここは、1990年代の楽曲が流れる一軒のバー。お香のにおいに包まれて眠った客は、歌に乗って、あの頃に帰る>
「BAR90's」には、人生に疲れた客が訪れる。小説家になれないフリーライター、不倫で狂ったキャリアウーマン、窮地に陥る政治家、同窓会帰りの気まずい女性2人組……。不思議な力を持つ店主のバーテンダー傘木(かさき)は、訪れた客にとって必要な90年代の楽曲を選んで流し、お香を焚いて過去への旅へと誘う。彼ら彼女らは、あの頃に帰って何を思い出すのか。
目次
第1章 空も飛べるはずだったのに
第2章 踊る君に狂った女
第3章 孤独な政治家
第4章 輝き忘れた私たち
第5章 逃避行ノムコウ
第6章 やっぱり何も言えなくて
エピローグ たまにはこうしてさ

小説「BAR90's」

よろしれければ、ご予約お願いいたします。この記事を読んだのも、流れの中にある何かのご縁……かもしれませんし。

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