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映画:罪の声

※本編に触れる内容がございます。

新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、昭和最大の未解決事件の真相を追う中で、犯行グループがなぜ脅迫テープに男児の声を吹き込んだのか気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)が父の遺品の中から見つけたカセットテープには、小さいころの自分の声が録音されていた。その声は、かつて人々を恐怖のどん底に陥れた未解決事件で使用された脅迫テープと同じものだった。

Yahoo!映画より

ネタバレでも何でもなく周知の事実ですので記載いたしますが、題材は1984年・1985年に日本で起きたグリコ森永事件となっており塩田武士氏作の小説が原作です。

事件自体は未解決であること、直接的な死者は出ずに終結したことから謎を多く残した事件です。

十分に映画化されていると思いますがこれから観る人はグリコ・森永事件の概要と、原作を読んでから観るとまた深みが出ると思います。

大変よくできていて、あの事件の真実はこうだったのでは?という憶測(フィクション)の作品でありながらこうだったに違いない、と思わせる構成。映画としての観点で言えば演技力でした。
本当にあった作り話、といった感想です。


犯罪組織や真実だけに固執した視点ではなく、「テープに使われた子どもたち」にフォーカスするというのは(語弊があるといけませんが)面白い・斬新な着眼点だったと思います。


私はドラマは基本的にほぼ見ないので演技しているところは見た事がなく、星野源さんの起用にどうなんだ?と思っていましたが、ただの仕立て屋から当事者になっていくところを大変繊細に演じていたと思う。(本業は、歌手?という認識であってるんでしょうか)

何より宇野祥平さんの演技がすごい!!
もうあそこで涙腺が崩壊しました。すごい演技力。
出演時間としては構成上後半からの登場なので決して(大事なキャラではあるものの)長時間の出番ではないのですが、凄い存在感。登場人物たちの中でも圧倒的でした。
鳥肌が立ち、一瞬で私は映画の中の人物の1人となり、悲痛な思い・叫びに身が引き裂かれる思いでした。


もうきっとこの事件の真実が世に出ることはないのでしょう。
映画のように何かが繋がっていって明るみに出ること、あるのでしょうか。
なぜ、子どもの声を使用したのか。作中でも触れられるシーンがありますが、やはり、なぜという憤りを禁じ得ません。
どんな内容でも子どもを犯罪に利用するとは言語道断ですが、このようにテープに声を吹き込むという行為はそそのかされて万引きをする・受け子をやるといった直接的な行為ではなく、本人たちは「関わっている」という認識がほとんどなかったのでしょうか。
犯罪に利用される子どもたちのほとんどが悪いことをしているという自覚がないと言いますが、この行為に関しては、特に、といいますか…。

そんな状態で約40年経った今も語られるような犯罪の片棒を担がされ、自身に罪はないというのに大きな十字架を背負ったまま生きることとなります。

事件から40年。10歳頃ではないかという見解が多いあのテープの声。
まだご存命かと思います。テープに使用された子どもたちが幸せでありますように。
作品として大変よくできていると感じたものの、もとになった事件がある以上なーんだ!あの映画は大変な妄想による作品だったのね!となるような真実であり、不幸な子どもはいなかったんだ!何なら(散々検証されてはいますが)機械の声だった、組織の大人の演じた声だった、なんて結末を望みます。


邦画ではベスト3に入る作品でした。

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