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映画:怪物


※本編に触れる内容がございます。

息子を愛するシングルマザーや生徒思いの教師、元気な子供たちなどが暮らす、大きな湖のある郊外の町。どこにでもあるような子供同士のけんかが、互いの主張の食い違いから周囲を巻き込み、メディアで取り上げられる。そしてある嵐の朝、子供たちが突然姿を消してしまう。

Yahoo!映画より


「怪物」が一体何を指したか人によって分かれるのではないでしょうか。

実は一切前情報のないまま鑑賞しました。
ストーリーはfilmarksにあるあらすじを確認したのみ。公式サイト、予告編など確認無し。
ただただポスターのビジュアルにグッと惹かれるものを感じ。

結論としては何も知らずに観て良かったと心から思います。
何ならポスター、あらすじからホラーだったらどうしようもう少し確認すれば良かったと開始してから思ったくらい情報無しでした。

前半はいじめ問題に焦点を当てて、意見の食い違う子供たちに親や学校がどう対処するかという一種の教育系問題提起の映画なのかな〜なんて思って観てましたがどうやらそんな感じでもなく。
どう落とし所をつけるんだろうなんて思いながら観ていました。

未鑑賞の方にもどうしても何も知らずに行って欲しいという気持ちがありどこまで書くか…

後半、こう来たかというのが率直な感想。
全く予想していない流れでした。でも、ストーリーが進めば進むほどこういう気持ちの子って多いのかもという胸が張り裂けそうな気持ちになりました。

差別の気持ちはなくても、無意識に自分の子供は違う。身近にはいない。そんな感情が誰しもあるのかもしれない。
当事者に対して、配慮した発言を心掛けるかもしれないけど長年の友達には無意識に自分の常識を押し付けた発言をしているかもしれない。そんな風に考えました。
自分が子供だった頃、「みんなと同じ」であることがどれだけ大切で、子供社会を生き抜く上で重要だったか覚えています。
少し浮いた子供だった私は当時当然のように所属するグループは無く、いじめられ、居場所がありませんでした。
家庭のルールが厳しく、みんなと同じような時間まで遊べない。みんなが持っている物と同じもので遊べない。同じテレビを観ていない。みんなと同じことができれば。とどれだけ渇望したことか。


そんな世界の中、彼らはどれだけ孤独で様々な葛藤があったか。
それに設定の年齢を考えると自分たちで言語化できない「違和感」を抱えながら生活していたのではないか。

こういった類の問題提起や主張をする映画や本など、近頃増えてきているとは感じますが子供の視点から見た世界というものは自分にとって恥ずかしながら想像のしていなかった衝撃的な内容でした。

最後の余韻を残す・観た人それぞれに解釈の仕方があるような終わり方は是枝監督だなあという感想です。
みなさまはどう感じたでしょうか。最後のあのシーンは、何を示したと思いますか。

アクションなどを演じることを軽視している訳ではないということは大前提として、日常を演じるってすごく難しいと思っているのですが、受取手にメッセージを伝えないといけないけどオーバーに演じれば日常ではなくなってしまう。でも意識しなければのっぺりとした物語になってしまう。
そういった観点から難しいだろうなと思っているのですが今回出演者全員が素晴らしかったです。すっと自然に入ってきて、でもパンチがあって。
人間って演技であんなに表情を無くして、その先の「死んだ顔」になれるんだ、なんて思ってしまいました。

面白い、盛り上がった、そういったことではなくすごい作品だったなという稚拙な表現で締めます。
今私の中にある引き出しから、自分の感情を適切に表現できる言葉が無い気がして。

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