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映画:岬の兄妹

※本編に触れる内容がございます。

港町に暮らす良夫(松浦祐也)はある晩、自閉症の妹の真理子(和田光沙)が、男に体を許して金銭を受け取ったことを知る。そのころ、良夫が勤める造船所でリストラがあり、良夫は足が不自由であることを理由に辞めさせられてしまう。困窮した良夫は妹の売春のあっせんを始めるが、次第に妹の喜びや悲しみを知り困惑する。さらに売春のことを知った友人が、良夫に忠告しに家にやって来る。

Yahoo!映画より


大変考えさせられる作品でした。

自閉症の妹真理子と、脚に障がいのある兄良夫の二人暮らし。
貧困や孤立がこれでもかと描かれていて何度も目を背けたくなるシーンがあります。

行政を頼れば良いだろう。
今のこの日本で食べるものに困るなんて。

そんなレビューを多く見かけましたが、それこそが本作で描かれる社会の構造の残酷さだと感じます。

こんな時は役所の◯◯課に。
困ったらここに電話してね。

知っているかどうかで受けられる保護が違います。
日常にある手続きでさえ、調べないとわからないこと、多いと思います。
引越しをしたら何の手続きが必要か。仕事を辞めたら次に働くまでこんな制度がある。

節約したいから格安SIMにしたいけどよくわからないからとりあえず大手キャリアのまま〜なんてよく聞く話です。

生死に関わらない、なんなら転居や機種変更のような人生に何度も必要な手続きでさえ、あれ?何が必要なんだっけ?区役所に来たはいいもののどこが担当なんだろう?と悩むことが多いはず。



お前が悪いのは脚じゃない、頭だと友人に怒鳴りつけられるシーンがありますが少々表現が乱暴ではあるものの、結局はわからない、知らないことが全てを悪い方向へと引きずり込んでしまったと感じます。
(強いていうなら良夫は身体だけが悪いのでもう少し調べる、ということがあっても良いとは思いますが)
でも、それは彼らの置かれた環境を思うと仕方ないことで彼らにはどうしようもないのです。
そもそも、困っている助けて欲しいこのままでは死んでしまうかもしれないといった状況に関して手続きが複雑すぎる。
知らないといけないことが多すぎる。

作中での表現なので敢えてそのまま使用しますが、健常者が調べて実行するようなことがこの障がいというハンデを抱えた2人にわかるでしょうか。
もし自分が2人のどちらかの立場であったら私は彼らと同じような生活になったと思います。
もし自分には障がいがなくとも、家族に同じような状況の人がいたら、冷静に何かを調べたり然るべき手続きを取れないかもしれません。

作品が伝えたかったこととは少し違うかもしれませんが本作を見ていや調べたらいいじゃん、受けられる保護があるよと思った層に、調べるところまで辿り着けない人たちがいるということが理解されるべきです。
深刻な状況な人たちこそ手を差し伸べられるべきですが、そういった人たちまで情報が下りて来ていないことを行政が理解するべきです。

不快なシーンや目を背けたくなるシーンが多々ありますが決して映画上の表現ではないということ。
思い切った作品だとずっしりと心に来るものがありました。

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