「うっとこの窓に鳩が突撃して死んだですけどぉ」
10個の爪にニラを装着したギャル漫談家が、
眠たげに喋り始めた。
ショートスリーパーが大半を占めるギャル界に
おいて、希少な超新星。
しかし客の反応は冷たい。
「ニラくせーんだよ」
「そんなんで真理に辿り着けんのかあ？」
「中華屋入り浸ってんじゃねぇよお嬢ちゃんよぉ」
「毒されてら！ 毒されてら！」
連続攻撃を浴びてギャル漫談家の怒りは頂点に
達した。
「臭豆腐！ 濃いーの持ってきてけろ！」
下手袖にいる弟弟子の臭豆腐を呼びつけ、大量の掘り立て生にんにくを持って来させた。
「てめーらの分際で、この韮雨亭おにんにくの
思考を舐め上げようたぁ100万年はえーんじゃん？ 気持ち悪いんだワ！ 覚悟しぃ！」
そう言って、ギャル漫談家は生にんにくを次々客の頭にぶつけ始めた。
「ズル剥けドブスども！ 共喰いの時間っちゃね！」
客席から、呻き声と共に再び罵声が上がった。
「語尾を統一しろ！」
「こういう時は、このハゲーって言え！」
「ギャル成分がすけねぇよ！」
一人は脳天ににんにくが刺さり、気絶していた。
ごもっともな意見にギャル漫談家は口を噤むしかなくなった。
時を刻む音だけが小屋に響いていた。