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【2021年公開】映画館で観た新作映画ベスト10を勝手に振り返ろうのコーナー

■はじめに

 皆様、あけましておめでとうございます~~🎇 どんどん1年が終わるのが早くなっている気がして戦々恐々とするとともに、「まあなんとかなるでしょ~」みたいな変な余裕も生まれてしまって、私はもうだめなのかもしれません...。

 ということで、自分の中では毎年恒例になっているのですが、年の瀬あたりに今年映画館で観た新作映画を振り返ろうのコーナーを開催しておりまして、本日もそんなことを文章にまとめられればと思っております。ほんとにシネフィルの方からすれば「なんやねん。」という感じなのですが、毎年50本は映画館で映画を観ようという制約を立てているのですが、生意気なノブレス・オブリージュ的精神で、インプットしたものはきちんとした場でアウトプットさせていただければと思っております!

 皆様の今後の映画選びの一助になればという気持ちと、つまるところ自己満足でお届けさせていただきます...!そして、体裁を気にせず、つれつれなるままに書きますので、読みづらさこの上ないかと思いますが、付き合ってくれたらこの気持ちも成仏できるはず👻 退屈な思いだけはさせないよう努力します。 

 それでは、「誰も待ってないかもしれないけど、お・ま・た・せ!」

■今年観た映画一覧

 ではでは、今年映画館で観た映画をドドンッ!と列挙したいと思います!今年はこの中で順位をつけていきたいと思います♬(映画に順位なんてつけるもんじゃないよね...。知ってる...。競争社会嫌い...。わかる...。)

1.  新感染半島 ファイナル・ステージ
2.  ワンダーウーマン 1984
3.  花束みたいな恋をした
4.  プラットフォーム
5.  哀愁しんでれら
6.  あの頃。
7.  すばらしき世界
8.  あのこは貴族
9.  野球少女
10.  ビバリウム
11.  ノマドランド
12.  ミナリ
13.  まともじゃないのは君も一緒
14.  騙し絵の牙
15.  JUNK HEAD
16.  パーム・スプリングス
17.  シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
18.  21ブリッジ
19.  ザ・スイッチ
20.  SNS-少女たちの10日間-
21.  街の上で
22.  ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから                 
23.  ファーザー
24.  映画大好きポンポさん
26.  くれなずめ
27.  クルエラ
28.  クワイエット・プレイス 破られた沈黙
29.  ピーターラビット2 / バーナバスの誘惑
30.  RUN / ラン
31.  ライトハウス
32.  ブラック・ウィドウ
33.  プロミシング・ヤング・ウーマン
34.  ゴジラVSコング
35.  イン・ザ・ハイツ
36.  ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結
37.  サマーフィルムにのって
38.  ドント・ブリーズ2
39.  孤狼の血 LEVEL2
40.  映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園
41.  ドライブ・マイ・カー
42.  フリー・ガイ
43.  竜とそばかすの姫
44.  モンタナの目撃者
45.  アナザーラウンド
46.  先生、私の隣に座っていただけませんか?
47.  クーリエ:最高機密の運び屋
48.  オールド
49.  レミニセンス
50.  シャン・チー / テン・リングスの伝説
51.  007 / ノー・タイム・トゥ・ダイ
52.  死霊館 悪魔のせいなら、無罪。
53.  ひらいて
54.  燃えよ剣
55.  かそけきサンカヨウ
56.  最後の決闘裁判
57.  空白
58.  DUNE / デューン 砂の惑星
59.  マリグナント 狂暴な悪夢
60.  エターナルズ
61.  彼女が好きなものは
62.  ラストナイト・イン・ソーホー
63.  ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
64.  キングスマン:ファースト・エージェント
65.  アイの歌声を聴かせて
66.  偶然と想像
67.  マトリックス レザレクションズ

 まじでこれを打つ作業がほんとに大変なのよ...。どうでもいいよってことで、今年は67本の新作映画を映画館で観ました~! 1年に観た新作映画の数更新~!! いえ~い、やった、ハピネス!!! 

 こうやってずらっと並べてみると、ホラーからコメディ、アクション、ラブコメ、ミュージカル、アニメ、ドキュメンタリーと、自分にしてはかなりジャンル問わず幅広く観た1年だったなと思います。

 そして、今年も邦画がすごい傑作ばっかりで驚きました...!正直にいうと、前は邦画が苦手で...。 不自然で???な展開も多いし、全部セリフで言っちゃうもんだから「なんて流暢に話す奴らなんだ...👊」って思ってたし、ラブコメが乱立されてた時代は「こいつら、狂ってる...👊」って本気で思ってました...。ただ仕事を始めると、売れっ子の俳優を使わないと人は入らないし、注目もされないし、そんな中で少しでも多くの人にわかりやすいようにベストな作品を作っていたんだな...みたいなことが理解できるようになって、「ほんとごめん、ア〇ハラ〇ド...。スト〇ボエ〇ジ...。」なんてセンチメンタルな気持ちにもなったりしました😢 話が逸れましたが、何が言いたいかというと、ほんとに邦画がそれぞれ切磋琢磨して良いものを作ろうという気合をひしひし感じて、まじで日本映画界頑張れ!応援してる!ってことです!何様だよって感じでほんと申し訳ないのですが、煉獄さん🔥しかり、五条先生🕶しかり、あまたの力を借りながら、もっともっと盛り上がってほしいなと思った所存でした。知らんけど。

■ベスト10発表~~~~!!!

 っっってことで、お付き合いいただいている皆様、ほんとありがとうございます!一端の参考になりましたら幸いです。書いてみたら、ほんとにつれつれなるままに書いてしまってオチがない感じになってしまったのですが、お納めください...。

第10位:あのこは貴族

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<あらすじ>
都会に生まれ、箱入り娘として育てられた20代後半の華子。「結婚=幸せ」と信じて疑わない彼女は、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。あらゆる手段でお相手探しに奔走し、ハンサムで家柄も良い弁護士・幸一郎との結婚が決まるが……。一方、富山から上京し東京で働く美紀は、恋人もおらず仕事にやりがいもなく、都会にしがみつく意味を見いだせずにいた。そんな2人の人生が交錯したことで、それぞれに思いも寄らない世界がひらけていく。(映画.comより抜粋)

 門脇麦と水原希子主演の映画です。この映画、お金持ちの苦悩だったり、地方出身者の苦節みたいなところに感想が終始してしまいそうですが、もっと間口は広いと思っていて、結論「環境や境遇を言い訳にせず、自分の人生を歩めているのか」ということを問う、すごくハッとさせられる内容の多い映画だなと思っています。

 華子側はお金持ちに生まれたが故の人生の閉塞感に悩むわけなのですが、言い換えるとそれは環境への諦めと惰性だと思います。なんとなく居心地は悪くないから、満足はしていないけど今の環境に居座り続けることへの批判といいますか。「お前はそれでいいのか?」と問われているような、そんな気持ちにさせる表現が多かったです。タクシーという閉じた空間や、傘という外界をある種遮断する描写が華子パートは多いのもそれを裏付けしていると思います。

 一方で、美紀は田舎の方から上京してきたはいいものの、東京と地方のギャップに驚いたり、お父さんがリストラにあったため、お金問題に悩まされることになります。美紀パートは、東京という場所へのコンプレックスというか、ある種の階級へのコンプレックスみたいなものをヒリヒリと感じさせる展開が続きます。これはつまり、境遇からの諦めと惰性への批判かと思います。美紀が幸一郎と関係を持ち続けていたことは、そのコンプレックスへの唯一のカウンターだったからなんだと思います。

 映画はそんな2人の背中を優しく押して、幕切れとなります。2人の人生に、自分の人生を重ねて考えざるを得ない、その浸透率の高さがなんとも心地よい映画でした。

第9位:マリグナント 狂暴な悪夢

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<あらすじ>
ある日を境に、目の前で恐ろしい殺人が繰り広げられるのを目撃するという悪夢に苛まれるようになったマディソン。彼女の夢の中で、謎めいた漆黒の殺人鬼が、予測不能な素早い動きと超人的な能力で次々と人を殺めていく。やがてマディソンが夢で見た殺人が、現実世界でも起こるようになる。殺人が起きるたび、マディソンはリアルな幻覚かのように殺人現場を疑似体験し、少しずつ自らの秘められた過去に導かれていく。そして邪悪な魔の手がマディソン自身に伸びてきたとき、悪夢の正体が明らかになる。(映画.comより抜粋)

 『ソウ』シリーズや『死霊館』ユニバース、最近は『ワイルド・スピード SKY MISSION』『アクアマン』などアクション大作でも才能を爆発させているジェームズワンが、久々にホラー映画に戻ってきたんだから傑作じゃないわけがないよね!カタルシスの塊みたいな映画で最高でしたよ!

 この映画をネタバレなしに魅力を語りきるのは不可能なので「もう観てくれ...!」としか言えないのですが、精神病院的な場所からのスタートから「あれ、ゴシックホラー的な感じなのかな?」と思わせておきながらの、予告編で見た恐ろおぞましい殺害シーンのつるべ打ち、からの急カーブをブレーキなしに突っ走る、というかもはや急カーブとも思わない展開が予想の斜め上を行きすぎて「最高」以外の語彙力を失いました。この手の映画を観ている人ほど裏切られる落差がすごいというか、「こうゆうパターンでしょ!」と思わせておいての正解が「なんじゃそりゃ!」すぎて狂ってるとしか思えないというか。どう考えたらこんなお話を作れるのか意味不明すぎましたね。

 なんでこんなにもハイテンションな展開に繋がるのかを考えると、ジャンルを縦横無尽に横断して、それぞれの最もテンションが上がる部分を抽出しているからだと思います。イタリア産ホラーであるジャッロ映画における「殺害シーンのカタルシス」、ホラー映画の「志村後ろ!シークエンス」、推理モノの「マトリョーシカ的謎解きドライブ」、そしてネタバレになるから言えないけど+2ジャンルぐらいが闇鍋的にミックスされています。それぞれの長所を繋げ合わせて、それでも調和が乱れないバランス感覚の良さに、「これ、進研ゼミでやったやつだ!」的すごみを感じました。

 万人におすすめできる映画では決してないのですが、あーでもないこーでもないできる闇鍋ムービーですので、ぜひ闇鍋をみんなでつつきながら観てください。

第8位:すばらしき世界

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<あらすじ>
殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、身元引受人の弁護士・庄司らの助けを借りながら自立を目指していた。そんなある日、生き別れた母を探す三上に、若手テレビディレクターの津乃田とやり手のプロデューサーの吉澤が近づいてくる。彼らは、社会に適応しようとあがきながら、生き別れた母親を捜す三上の姿を感動ドキュメンタリーに仕立て上げようとしていたが……。(映画.comより抜粋)

 役所広司さんとアウトローはなんでこんなに相性がいいんでしょうね...。まじでその筋の人にしか見えないし、ドンピシャすぎてもはや怖い...。だけど、映画の内容は人間ドラマであり、コメディっていうバランスよ...。

 主人公の三上は殺人を犯して、13年の刑期を終えシャバに出てくるわけだけど、前科者としての性というか、残酷な世界の洗礼を受けるわけです。仕事は決まらないし、免許の再発行もできない、周りの人たちには怪訝な目で見られるし、おまけに心臓に持病もある、まさに人生ハードモード。ただ、そんな中でも大型犬みたいに時に感情をむき出しにしながらも、懸命に戦おうとする三上に笑わされるし、感情移入させられてしまうわけですよ。

 そんな三上の姿に心を打たれるのは作中の人物も同じで。三上の人生をドキュメンタリーにしようと試みる津乃田との交流が描かれるわけなんですが、最初メガネをして、ビデオカメラ越しに三上を見ていた津乃田が、次第にその壁が取れていき、最後にはまさに裸の付き合いになっていく過程に「他者とのふれあいこそが人生」を過去作でもやってきた西川美和監督の作家性をひしひしと感じました。

 つまるところ、この作品は「如何にして人は許しを得るのか」を描いているのかと思いました。芸能人なんかは罪を犯してもしれっと戻っていたりするけれど、経済社会ではそうはいかないことなんてざらにあると思いますし、実際自分もそういう人に会った時にどうゆう対応ができるのかは正直わかりません。でも、そこを乗り越えることができることこそが「その人(他者)とのふれあい」であって、そこにこそ人生の美しさ、タイトルの通りすばらしき世界が広がっているのかと思います。

 三上の結末はぜひ映画を観てもらいたいのですが、観客の目を覚まさせる幕切れに痺れました。おすすめです。

第7位:孤狼の血 LEVEL2

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<あらすじ>
3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれて殺害された、伝説のマル暴刑事・大上の跡を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡。権力を用い、裏の社会を取り仕切る日岡に立ちはだかったのは、上林組組長・上林成浩だった。悪魔のような上林によって、呉原の危うい秩序が崩れていく。(映画.comより抜粋)

 広島を舞台としたヤクザ抗争映画の第2弾です。「おんどれぇ!われぶち殺すぞ!」なんてセリフが連発しますが、ラブストーリーです。大事なことなのでもう一度、内容はラブストーリーです。

 基本のストーリーとしては、松坂桃李演じるアウトロー刑事日岡と、鈴木亮平演じる化け物ヤクザの上林のVS構造なのですが、そのVS構造がイキすぎて限界点を突破しているため、『花束みたいな恋をした』もびっくりの恋愛映画みたいになっているのが本当に大好きです...。自分の損得や組織の利益なんかよりも、相手との深いつながりを重視して、ひたむきに向き合うその姿、相手へのリスペクト・尊重を忘れない姿勢にも「なにこれ、恋愛バイブル?」なんてことを考えていた私はおかしいのかもしれません...。

 また、私のオールタイムベスト第2位の『ダークナイト』にプロットが似ている点も自分好みだったのかもしれません。そこら辺の悪役とは一線を画す上林、正義のためにはアウトローにもなるグレーすれすれの日岡、求めすぎるがために鏡像関係になってしまう2人など、とにかく共通点が多いなと観ていて思いましたね~。

 ただただなによりも、鈴木亮平の上林がとにかく最高で、日本映画でここまでの強烈悪役を誕生させた時点で、すでに5億点はでてると思います。鈴木亮平好き、ダークナイト好き、ヤクザ映画好き、そして胸キュンを求めるすべての人におすすめできる2021年屈指のラブストーリーなので是非!(刺激少なめをご所望のかたは『花束みたいな~』の方が良いかも...。)

第6位:ザ·スーサイド·スクワッド “極”悪党、集結

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<あらすじ>
ジョーカーと別れて彼氏募集中の身になり、ますますクレイジーになったハーレイ・クインを筆頭に、最強スナイパーのブラッドスポート、虹色のスーツに身を包んだ陰キャのポルカドットマン、平和のためには暴力もいとわないという矛盾な生き様のピース・メイカー、ネズミを操って戦うラットキャッチャー2、そして食欲以外に興味のないキング・シャークという、いずれも強烈な個性をもった悪党たちが、減刑と引き換えに、危険な独裁国家から世界を救うという決死のミッションに挑む。(映画.comより抜粋)

 前作『スーサイド・スクワッド』がとにかくガッカリで、トホホな出来だったので、今作のあまりのギャップに頭クラクラしました。とにかく不謹慎ギャグのオンパレードで、悪趣味ですけどなにか?的な破天荒さの皮をかぶっておきながら、社会のはぐれ者への暖かいまなざしみたいなものも忘れないギャップ萌え間違いなしの大傑作だと思います。

 まず、オープニングから最高。前作のキャラクター+今作からのキャラクターを流れるようなテンポで紹介しきって、いよいよ作戦開始!からの...。という完璧な緊張と緩和。「人の死をここまでギャグにしやがって最低、でも好き...!」って感じでした。ごめん、感想が気持ち悪いね...。とにかく全編通じて人の死が緩和にあてがわれているため、合わない人はとにかく合わないかもしれませんが、キャラクターの魅せ方が上手だから嫌悪感は一切ないんですよね。キャラの描き方が丁寧だし、一連の殺しの過程すらキャラ造形にしてしまう、そんなドンパチやっておいて最後には社会からはぐれてしまった者にスポットライトを当てる、無駄がなさすぎる、天才か監督。

 そんな天才監督は、マーベルで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを撮ってきたジェームズガン。過去のツイートがきっかけでマーベルをクビになってしまった彼がDCに雇われて、好きな知的財産で好きな映画を撮っていいと言われて撮った映画がならず者集団のスーサイドスクワッドというのも作家性が現れているなと思いました。ディズニー傘下のマーベルでは一生作られない、俺たちが観たかったアメコミ映画でした!

第5位:空白

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<あらすじ>
女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて死んでしまう。娘に無関心だった花音の父・充は、せめて彼女の無実を証明しようと、事故に関わった人々を厳しく追及するうちに恐ろしいモンスターと化し、事態は思わぬ方向へと展開していく。(映画.comより抜粋)

 タイトルの通り、観客を空白の中へと誘い、考えることを半強制的に強いさせる圧倒的パワーに胸を締め付けられました。

 とにかくタイトルの「空白」という言葉がすべてを表していると思いました。まず、事件の発端となる万引き事件は未遂であり、はっきりと事の顛末を描かないため物語の最も重要な部分が空白になっています。その文字通りの空白に翻弄される登場人物も二面性を持たせることで、キャラ造形をグレーに、空白にしています。事故死してしまう女の子は万引きをするような子には見えないように描きつつ、でも実はしているのでは...というカットを入れたり、店長も徹底的に責められる被害者に描きながら、加害者でもあったのではないかと考えさせる展開にしており、現実世界のように人の持つ複雑さを見事に表していると思います。それを観ている観客としては、誰にでも感情移入ができるようでいて、一方で突き離すように感情移入ができなくもなるため、感情の置き場が空白となってしまうのです。このように、とにかく様々な部分を空白に、分からなく描くことで、その分からなさと徹底的に向き合わさせる内容には、鑑賞後もとにかく考えさせられました。

 考えてみれば、人間関係から恋愛においても、人は人の複雑さや分からなさのせいで悩むことになるわけであって、そういった意味でも作中の人物同様人間の分からなさに翻弄されてきた人は本当に多いのではないかなと思います。ただ、その人の複雑さにこそ魅力を感じるのも、人のめんどくさい部分であって、「人ってめんどくさいけど、でもだからこそ素敵やん?」って心の中の島田紳助が説教してました。

 私はとても人間賛歌な映画だと感じましたが、この映画を観て感じることが違うことも人の面白いところだと思うので、ぜひ感想を聞かせて下さい。

第4位:最後の決闘裁判

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<あらすじ>
騎士カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友ル・グリに乱暴されたと訴えるが、目撃者もおらず、ル・グリは無実を主張。真実の行方は、カルージュとル・グリによる生死を懸けた「決闘裁判」に委ねられる。勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者は罪人として死罪になる。そして、もし夫が負ければ、マルグリットも偽証の罪で火あぶりの刑を受けることになる。人々はカルージュとル・グリ、どちらが裁かれるべきかをめぐり真っ二つに分かれる。(映画.comより抜粋)

 『エイリアン』などの生みの親、巨匠御年84歳のリドリースコットがここにきてなお超ド級の傑作を作っちゃいました。賛否両論を巻き起こした話題作だったのですが、構造の視点、演技の視点から考えても、私は褒めざるを得ない一作なのではないかなと思います。

 この映画、1つの物語を複数の人物の視点から語ることで、隠れた真実や認識のズレを浮かび上がらせる、いわゆる『羅生門』形式を使っているのですが、この構造がミソだと思います。よくちょっと優しくされたように感じたり、ほかの人とは違うような対応をされたように感じて、「あの人、自分のこと好きなんじゃない///」とか勘違いしちゃう人とかいませんか?まさにあの現象が、それぞれの立場から物語が語られることで浮かび上がってきます。その些細なズレを構造上から見事に表現している点が、まずはめちゃくちゃすごいと思いました。

 そして、なによりその微妙なニュアンスを演技で表現する役者のすごみをとにかく感じました。要は同じ内容の場面が何回も出てくるのですが、それぞれで若干表情だったり、間の取り方を変えることで、微細な感情の違いを表現しきっていて、「表情筋どうなってるんや...」と心配になりました。演技という点でこんなに感動させられたことはないというくらい、見入ってしまう名演だったと思いました。

 ただ、この映画が非難されることもすごくわかっていて...。この映画の核となる事件が女性への性暴力であり、それをかなり映像的にしっかり描いているため、そこまではっきり描く必要があったのかとは思うし、もっとそうゆう映像が流れるということを事前に伝えるべきだと思いました。さらに、この映画へのレビューを見ていて見つけた意見なのですが、そもそも性暴力は誰にも見られない状況で行われるわけで、「あなたがひどい目にあったことを私たちは目撃した。だからあなたを信じます。」ではなく、「あなたに何が起こったのかを私たちは目撃することができなかったけど、それでもあなたの訴えを聞いて信じます。」というアプローチの仕方があったのではないかという意見があり、その通りだと思いました。そういった点においては、確かに疑問が残る映画だったことは確かだと思います。ただ、ここまでしないとわからない人間がいることも悲しいかな事実なわけで、その意味では私はこの映画は必要なのではないかと感じました。
(上記の通り、直接的な性暴力のシーンがあるため、そのことを理解したうえで観たほうが良いかと思います。)

第3位:プロミシング・ヤング・ウーマン

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<あらすじ>
ごく平凡な生活を送っているかに見える女性キャシー。実はとてつもなく切れ者でクレバーな彼女には、周囲の知らないもうひとつの顔があり、夜ごと外出する謎めいた行動の裏には、ある目的があった。明るい未来を約束された若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だと誰もが信じていた主人公キャシーが、ある不可解な事件によって約束された未来をふいに奪われたことから、復讐を企てる姿を描く。(映画.comより抜粋)

 今作も『最後の決闘裁判』と同じ女性への性暴力を描いた内容になるのですが、あちらよりもより鋭利で、誰一人として観るものに考えることを放棄させない、攻撃力高めの作品でした。

 今作が他の作品と違う部分は、性暴力をする男はクズというのはもちろんですが、それを見ないふりしてスルーしてきた人たちへも中指を突き立ててくる点です。その対象には「ほんとあいつはその辺だらしないよな」という男友達同士の甘えはもちろん、若干の自業自得でしょみたいな視線で見る同性も含まれます。つまるところ、傍観者への制裁も忘れていない点が攻撃力をぐぐぐっと高めているポイントかと思います。しかし、本当の意味で悔い改めるものへは許しを与えるという、化け物になりすぎない人間味を残している点もバランス能力が高すぎてびっくりしました。

 さらに、本作は『最後の決闘裁判』とは違い、直接的に性暴力のシーンを描かず、我々に想像の余地を残します。そうすることで、より「私たちの近くでも起こっている、起こり得る可能性のあること」として機能させている点も、作り方として非常にうまいなと思いました。

 そして、何よりもエンタメとしてめちゃくちゃ面白いという点が最も優れているポイントかと思います。メッセージ性の強さとエンタメ性の同居という意味では『パラサイト』に並ぶぐらいです。

 ただ、個人的意見として、性暴力というセンシティブな問題をエンタメとして取り扱っていいのか、この感想を書くにあたりめちゃくちゃ考えました。現にその問題で苦しんでいる人もいるわけであって、それをメッセージ性はあるといえど、エンタメ作品にまとめ上げることが果たして本当に良いのか。明確な答えが出たわけではありませんが、消費に留めるのではなく、それを通じて考え思考する、ひいては行動に移すことが私たちにできる唯一の手段だと今は思っています。まさにその点においても、ただの傍観を許さない、本作の鋭利さを感じた次第でした。ぜひ観て、思考しましょう。
(上記の通り、直接的な性暴力のシーンはないものの、性暴力がテーマの作品になるため、その点を理解したうえで観たほうが良いかと思います。)

第2位:ファーザー

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<あらすじ>
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、アンソニーはある真実にたどり着く。(映画.comより抜粋)

 主演のアンソニーホプキンスが、アカデミー主演男優賞を受賞したことでも話題になった作品で、私の映画に対する考えを地で行くみたいな映画でほんと大好きな作品になりました。

 私は映画は「”見る”という行為を通じて、なにかの人生を追体験することができるもの」と考えているのですが、本作は認知症のおじいちゃんが主人公で、そのおじいちゃんの視点を主観的に描いているため、まさに私たちは”見る”ことを通じて認知症を疑似体験することになります。その認知症描写があまりにも怖すぎて、ホラー映画になってしまっている点が本作の大きな特徴です。娘の顔が全くの別人に見えてしまったり、時間軸がちぐはぐで正しい時制を理解できなくなったりと、主人公と視線を共有するからこそ伝わるその不安や恐怖、だからこそ浮かび上がる悲壮感や病気の残酷さ、まさに映画という表現方法でしか伝えることができないことだと思いました。

 そして、おそらく細部まで計算されつくした「青」の使い方も特徴的です。青色が持つ不安や寒々しい印象を、画面のどこに、どの程度配置するのかまでおそらく考えられていて、画面から受ける印象を徹底的に管理していると思います。そのような点からも「あ、この人たちは”見る”ということを大事にしているんだな」なんて感じて、めちゃくちゃ嬉しくなりました。

 もちろん、アカデミー賞を取ったアンソニーホプキンスの演技は文句なしに素晴らしかったです。認知症が進行して5秒前に自分で言ったことすらも忘れてしまっているというめちゃくちゃ難しい演技をしているのですが、あまりにも自然すぎて、「え、まじで認知症なんじゃね?大丈夫そ?」なんて心の中のパパラピーズが心配してました。

 不謹慎な言い方で申し訳ないですが、認知症を体験する機会なんて発症してしまった時以外ないと思いますし、映画という表現を最大限活かした作品なので、「映画を観たい」という時におすすめの一本でした。

第1位:街の上で

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<あらすじ>
下北沢の古着屋で働く青年・荒川青は、たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったりしながら、基本的にひとりで行動している。生活圏は異常なほどに狭く、行動範囲も下北沢を出ることはない。そんな彼のもとに、自主映画への出演依頼という非日常的な出来事が舞い込む。(映画.comより抜粋)

 『愛がなんだ』で一躍有名になった今泉力哉監督の作品です。監督の映画論みたいなものがはっきりと刻まれており、それに深く感動するとともに、「俺のための映画だ...!」とも感じるぐらい大好きな映画になりました。

 映画のストーリーとしては、何か大きく物語が動くような劇的な出来事が起こるようなお話ではなく、市井の人々の生活を切り取る系の映画なのですが、それなのに退屈もせず何よりめちゃくちゃ面白いっていうのが本当に不思議な映画なんですよ!青という主人公を中心として、様々な人との会話をリアルに描くからこそ立ち現れる、コミュニケーションによって少し生活の温度感が上がる描写が本当に愛おしくて...。中盤に出てくる恋愛に発展するわけではないのだけれど、なにか特別な関係が生まれたような気がする夜のワンカットとかが...、もう...本当に悶絶するぐらい大好きです!

 要は、劇中でも語られますが、「普通の映画ではカットされてしまうような瞬間」ばかりで構成されている映画なんだと思います。映画では無駄だともいえるシーンをあえてワンカットで見せたり、カットせずに使うことで、すごく生活感というか、私たちの日常感が異様に引き立って、最終的には「これって俺の日常じゃね?俺のための映画だ!」とまでなってしまうというね。そこに監督の映画論を感じたというか、「誰に見られるわけでもない、映画ではカットされてしまうような、ほんとうに些細な日常というものを俺は映画で残すんだ」という宣言をしているようにも感じました。

 監督の映画は結構観ていたのですが、いわゆるこじらせ恋愛映画を撮る監督だと思っていたため、どうも好きになれないなあとずっと思っていました。が、監督の映画論を知ってから過去作を観ると、すごく一貫性を感じて、めちゃくちゃ好きな監督になってしまいました。NETFLIXで観れますので、お願い、マジで観て!頼む!

■最後に感想とほんの一握りの抱負を添えて

 ということで、いかがだったでしょうか?個人的には今年のベストは考えさせられる系の作品が多かった印象です。メッセージ性マシマシというかね🍜 それだけ受け止められる自分の中の土壌ができたんだと前向きに考えるようにします!できるだけわかりやすく自分の感じたことを言語化したつもりなのですが、わかりづらかったり、退屈だったら申し訳ございません。

 今年の抱負としては年間100本の大台に乗りたいと思ってます!が、昨年はめちゃくちゃ頑張って映画を観る時間を作り出していて...。あいてる休日には何本もはしごしたり、仕事終わりの夜に駆け込みで観に行ったり、なんなら映画館のラウンジで仕事したり...。正直70本前後が限界かなとは思っているのですが、観たかったのに見逃した作品もいっぱいあったのも事実なので、なんとか頑張りたいなと思ってます。

 最後になりましたが、お付き合いいただき、誠にありがとうございました。この記事が少しでも読んでいただいた皆様の役に立つことができたのなら幸いでございます。皆様の2022年が良い年になることを祈っております。

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