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議会がどのように存在意義を発揮していくか――広島・安芸高田市で、「どうする?2元代表制の中での議会の役割」をテーマにフォーラムを開催(輝け議会!対話による地方議会活性化フォーラム)

 九州の地方議会議員や市民などで構成している「輝け議会!対話による地方議会活性化フォーラム」(代表=盛泰子・佐賀県伊万里市議)は2023年10月28日、広島・安芸高田市内で「どうする?2元代表制の中での議会の役割」をテーマにフォーラムを開催した。2020年の石丸伸二市長の就任以来、市長と議会の対立が目立つ安芸高田市。フォーラムには市内外から約70人の地方議員らが参加し、改めて議会の役割、存在意義を考えるフォーラムとなった。

■住民を巻き込み政策競争を

フォーラムには約70人が参加。九州や四国など他県からの参加もあった。
「『住民自治の根幹』としての議会を作動させる」と題して基調講演を行う江藤俊昭・大正大学教授。

 フォーラムはローカル・マニフェスト(LM)推進ネットワーク九州、安芸高田市の未来を創る会の共催で、会場は市役所隣の安芸高田市民文化センター。九州や四国など他県からの参加があるなど安芸高田市政への関心の高さがうかがわれた(安芸高田市議は5人参加)。
 フォーラムでは冒頭、主催者側から福井崇郎・福岡県福津市議が挨拶。「フォーラムとして九州外への初遠征。議会のこれから、地方自治のこれからを学ぶ場としたい」と話した。
 第1部は江藤俊昭・大正大学教授が「『住民自治の根幹』としての議会を作動させる」と題して基調講演を行った。
 江藤氏は、首長と議会は癒着したり、対立したりすることがあるが「日常的な癒着・対立は住民のためにならない」と指摘。首長と議会は共に住民の方を向き、巻き込んで政策競争をしていく必要性を訴えた。
 国の地方制度調査会が答申の中で「住民自治の根幹は議会」と記述したのは、「(議会は)多様性に基づき、公開の場で議論しているからだ」と強調。議案の関係者や参考人を議会に積極的に招き、十分な議員間討議を行うべきだと説いた。

■「視て、診て、見える政策サイクル」

問題提起を行う林晴信・兵庫県西脇市議会議長。右端は前田隆夫・西日本新聞論説委員。

 続いて、「2元代表制の一翼として、議会は機能しているのか?」をテーマに林晴信・兵庫県西脇市議会議長と前田隆夫・西日本新聞論説委員が問題提起を行った。
 西脇市議会では自治会や各種団体との意見交換の場を年間約40回も開催。林氏は「西脇市議会の一番良い点は意識せず、いろんな市民や市民団体と気軽に意見交換を行うところにある」と自賛。市民の意見は常任委員会の所管事務調査のテーマにするなどして政策提言→予算への反映を図っている。
「年間を通じて、重要事業の執行を視ていく(監視)」→「そしてその事業が市の課題に対して有効だったか診ていく(評価)」→「そうすれば、次の改善策も見えてくる(改善)」という「視て、診て、見える政策サイクル」を構築する重要性を指摘。林氏は、「住民自治にとって議会はなくてはならないもの。そしていろんな人が行き交う土台。つまり議会は『住民自治のプラットホーム』」と強調し、参加者に「みなさんの議会はそうなっていますか?」と呼びかけた。
 前田氏は、住民・首長・議会の三者間関係のうち、住民・議会の関係が「細っていないか」と問題提起。北海道栗山町議会の議会基本条例前文を紹介し、議会として住民との関係を深める必要性を指摘した。

■「地方議会に与党も野党もない」

ワークショップ「どうする?2元代表制の一翼として、議会が機能するために」の様子。
最後のディスカッションの様子。地方議会としてのあり方に議論が集中した。

 後半の第2部は、ワークショップ「どうする?2元代表制の一翼として、議会が機能するために」(ファシリテーター:福井崇郎・福津市議)。第1部での論点を踏まえ、参加者が5~6人でテーブルを囲んで対話を行った。
 最後はディスカッション。テーマはワークショップと同様に「どうする?2元代表制の一翼として、議会が機能するために?」だった。パネリストは田邊介三・安芸高田市議と第1部の登壇者(江藤・林・前田の3氏)、急遽、筆者(千葉茂明)も加わった(コーディネーター:神吉信之・LM推進ネットワーク九州代表)。
 まず田邊氏が、石丸市長就任後の安芸高田市政の状況を「できるだけ中立的」に説明。市長と議会の対立が続き、副市長選任同意の否決や一般質問への答弁拒否、問責決議案可決などが行われた。田邊氏は「一番の問題点は『市民不在』であり、議会内で議論がしっかり行われていないこと」と話した。
 ディスカッションでは、安芸高田市というよりも地方議会としてのあり方に議論が集中。千葉からは、大津市や岩手県奥州市、宮城県柴田町の議会が政策サイクルを回しながら成果を上げている例を紹介した。
 前田氏は「議会が一塊になって動くことが大事」と指摘。江藤氏は「地方議会に与党も野党もない。議員間討議をしっかりやって説明責任を果たすべき」、林氏は「万機公論に決すべき」「(意見交換会では)住民からはクレームや要望が多い。なぜそんな声が出てくるのかを考えるのが議員だ」などと話した。
 最後にコーディネーターの神吉氏が、「議会がどのように存在意義を発揮していくかに尽きる。そのためには情報公開と参加を積み上げていく必要がある」と締めくくった。
(文・写真/上席研究員・千葉茂明)

〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html

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