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コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/10/16)

退任するCEOの半数、辞任ではなく解任

【記事の注目ポイント】経営陣の離任を追跡調査するサービス「エクスチェンジ」(https://exechange.com/ )の調査によると、ラッセル3000指数に入る企業が過去2年間で発表したCEO退任のうち、52%は自発的な「辞任」ではなく、「解任」に相当する可能性が高いとのこと。この中には、辞任だったと説明する人や離任の潮時と感じただけだと語る人、突如として家族と過ごす時間を増やしたい衝動に駆られたという人も含まれる。

【コメント】この調査結果は非常に興味深い。いずれにしても欧米の経営トップはジョブセキュリティはほとんどゼロで、在任中常にクビになるリスクがついて回る。そう考えると、彼らの報酬が日本円以上で10億円(企業によっては100億円)以上の高額報酬となるのも、ハイリスク・ハイリターンの原則から当然と言えば当然である。一方で、日本企業のようにコンプライアンス問題以外で任期途中に退任する可能性が低かった経営者の報酬は低くて当たり前ともいえる。今後は、日本企業の経営者も業績悪化を理由に退任(解任)するケースが増えるのであれば、報酬は現在よりは高くなってしかるべきである。


米ブラックストーン、ユニゾにTOB ユニゾの同意条件

【記事の注目ポイント】世界最大手の投資ファンド、米ブラックストーン・グループは15日、不動産会社ユニゾホールディングスに対し、同社の同意を条件にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表。1株5000円で全株取得を目指す。23日までにユニゾ経営陣に同意するかどうか回答を求める。ユニゾ経営陣の対応が注目される。ブラックストーンはこれまでユニゾに買収を提案していたが、対外的に公表していなかった。今回、自ら提案を公表することで市場関係者から賛同を得る狙いがあるとのこと。

【コメント】HIS、フォートレスに続き、ブラックストーンも正式にTOB実施を表明した。数か月の間で3社からTOBを表明されているという時点で、ユニゾHDの企業価値向上の機会の大きさが明らかといえるだろう。つまり、経営陣または経営方針の刷新によって企業価値は上がると多くの関係者はみている訳で、現経営陣としては本来この事実一つとっても恥ずべき事態だ。なお、大株主のエリオットは先日取締役会に対して送付した書簡とは別に、今回のブラックストーンの提案についてもユニゾの取締役会に対して「誠実に対応するよう求める」書簡を送付したと発表している。エリオットとブラックストーンは水面下では当然連携し、今回の事態に対応しているとみられるが、ユニゾHDの経営陣および取締役会として今後の対応が注目される。


物言う株主「仕込みの秋」 来年狙われる企業は今決まる

【記事の注目ポイント】物言う株主(アクティビスト)が2020年の上場企業の株主総会に向け、活発に動いている。来年の総会で「物を言う」ためには、10月までに株主になっている必要があるからとのこと。アクティビストは企業の株主総会で増配や自社株買い、社外取締役の選任といった様々な株主提案を出すが、株主提案の提出期限は通常、総会の8週間前までとなっている。日本で最も多い3月期決算企業の総会が集中するのは6月中下旬。逆算すると、株主提案は4月中下旬までに出しておく必要があり、今後は来年の株主総会に向けて、株主となった企業に対する株主提案の検討を進めていくとみられる。

【コメント】昨年、あるコーポレートガバナンスの専門家が「2018年はアクティビスト元年となる」と発言し、大きく注目を集めた。実際に2018年以降、急速に企業に対する株主提案が増えたり、ガバナンス不全によって不祥事が発生したとみられる際には株主としての存在感を高める行動が相次いでいる。ユニゾHDにみられるように敵対的TOBにアクティビストファンドが関与することもそれほど大きな違和感なく世間に受け入れられているように見え、一昔前のスティールパートナーズによるブルドックソース事件のような対応と比べると隔世の感がある。


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