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自然には育たない味覚-手作りにこだわる食習慣の大切さ

人の味覚は他の感覚器官と異なって、非常に能動的な働きをしています。
見聞きする物の全てはいやがおうでも受動的に情報として入ってきますが、
味覚だけは自分の選択(意志)や親の食習慣(文化)に影響される部分が
とても大きいように思います。

もっと極端な言い方をすれば、
「味覚は意図的に育てないと自然には育たない」わけです。

幼児期における言葉の臨界期と同様に、
子供の味覚も生後〜13歳までが最も重要な時期と言われていますね。
うま味を含めた6つの味覚を鍛える上で、
それらに優先順をつける必要があるのですが私の場合「甘味」はなるべく遠ざけるやり方で食育をしています。

甘さが欲しい時は果物を食べさせるか、
特別な理由がない限りデザート類なども理由を伝えて与えていません。

甘味は子供を黙らせたりご機嫌をよくするのにとても都合のいい道具で、
それは子供以外の生き物でも有効とまで言われていますから
甘味は習慣化すると簡単には止められない「中毒性の強い味覚」
代表とも言えるのではないでしょうか。

”歯に悪し、血糖値に悪し、脳に悪し”
甘い物が1日のうち何回口の中に入ったか?食育に熱心な親御さんならば
”甘味の厄介さは周知の事実”です。

一方で子供達が意識的に鍛えている「良い味覚」は、
昆布や乾物の出汁などから出る「うま味」グルタミン酸ナトリウムです。
顆粒のうま味調味料ではなく、
あくまでも「自然のうま味」である事に意味があります。

我が家の子供達は半分日本人の血を引いているので、
離乳食の時期から手作りのお出汁を食べさせて”未発達の幼い味覚”を
トレーニングしてきました。
夫の文化であるフランスの食事からではなく、
あえて日本食の味覚を優先させたかった理由は
子供達に複雑な「うま味」の感覚を、
舌と脳で理解してもらいたかったからです。

うま味の奥から引き出される苦味や塩味(えんみ)の感覚が優れていると
将来的に「変な食事を好まなくなる」と個人的に信じているからです。

その効果があったのか、
最近では海産物の風味から見え隠れする磯の香りと
ほんのり感じる塩の味など。
かなり複雑な味や食材の香りまで識別がつくほど、
子供達の味覚は鋭くなっています。

ファストフード、暴力的な白砂糖と精製小麦粉の塊で出来たスイーツ、
粗悪な揚げ油、味覚を狂わせる調味料など、
正常に味覚が働いている場合、これらの味付けは強烈すぎて
普通に食べ続ける事ができません。

食欲を意識で抑えるのではなくて、
そもそも舌が変んな食べ物を拒否するように鍛えられている。
ここが結局は健康的な食生活を選べるか否か?の決定的な違いです。

健康な体作りは、まず正常な味覚がベースにあってこそ。
どんなに勉強が出来てお金持ちでも、
虫歯や歯周病がある人は「どこかチグハグ」な人生を送りがちです。

調味料をたっぷり使えば何でも料理は美味しく仕上がります。
フワッとした食感のパンや、何でも美味しく感じる濃い味付けは
実際に自分でやってみると分かるのですが
手作りでは再現する事ができません(いい意味で)。

手作りで余計な材料を入れないパンは、
こんな感じで硬い食感のものが多くて生地の密度が高いです。
逆にフワッとした空気のような食感で、
ほのかな甘みがあるミルキーなパンは余計な物もたくさん入ります。

子供と一緒にパンを作るとまず材料が何かを知りますし、
計量ではちょっとした算数の知識や物理を知るきっかけにもなります。
こう言った知識の副産物は、
買ってきたパンからは得られない経験です。

手作り古代小麦バゲット
こちらも手作り古代小麦のパン・ド・カンパーニュ
石挽きの全粒粉小麦で作った手作りベーグルも家族に好評でした
手作りで簡単にできる米粉のシフォンケーキ
グルテンフリーピザ(焼く前)
外で食べるより手作りした方が具材も選べて美味しいです
トマトソースも缶を使わずにトマトから簡単に作れます


ちょっと物足りないけれどあえて手作りにこだわって、
面倒でも余計な物を加えない食習慣は、
特に子供の場合、生涯に渡って長く心身の成長にも影響が出てくるので
親としては一番気を使うべき育児のパートだと考えています。

「味覚は自然には育たない」

食育は子供にだけスポットをあてた教育ではないのです。
子供と一緒にちゃんとした物を見極められる大人側の味覚と
食材選び
が結果的に質の良い味覚を持つ子供を育てるのに欠かせない
役割を果たしているのですね。

グレイス



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