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食を巡る

私にとって食とはなにか。
夕方時になるといつも食べることばかり考えてしまう。
一日の疲れで食欲がピークだ。

料理は好き。
「これをあれと合わせたら…」
「あれをこのソースで和えて、あれもこれも加えて…」
そんなことを考えながら食べるのも好き。
気に入ったレシピはノートに書き留めておいて、「次はどれを作ろうかな」とページをめくる。

ところが、今は中々時間が割けない。
病気の影響で疲れやすい体に、労働時間が伸びて中々抜けない疲れ。
家庭内の事情とか、やるべきこととか、色々重なって気力が湧かない。
最近はようやく休日の午前中たまに「鍋を使う」「パンを仕込む」ことができるようになってきたが。

うつ病になる前、私は食べることに関心もなければこだわりもなく、食べるヒマがあれば寝ていたいタイプだった。
そもそも赤ん坊の頃からミルク<<<睡眠で、体重を増やすのに苦労したとも聞く。
それが不思議なことに、うつ病後は真逆になった。

ご飯ってこんなに美味しいのか。
食べるってこんなに幸せなことなのか。
食物をほおばって、唾液がじゅんわり広がって、体全体が栄養を受け入れている実感。
それを生まれて初めて覚えた私は、これが「食事」なのかと驚愕した。
薬の影響で過食の期間もあったが、その頃は感動というよりも「止まない飢餓感」が強かった。それにしたって生まれて初めての感覚だったのだが(昔は空腹感にも鈍かったので)。

治療がひと段落した頃になって漸く、食への感動が私の中で芽生えた。
過食期に体験した衝動と欲望が、最も単純な生きるという本能へ正しく結び付いた結果だろう。

生きるということは食べることである。
そして生きるということは人間という生物であり続けるということもである。
人間である限り、食べたいものを食べたい形に生み出す、という創造すらもまた、諦めたくはない。

書いているうちに、どんどんお腹が空いてきた。
夜はまだ冷える。
ホイップクリームを特盛りにした、あつあつのココアでも作ろうか。




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