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HIITで脂肪がメラメラ??の真実を書きます


はじめに

最近のフィットネス業界、つまりジム運営ビジネスでは一時期よりも言われなくなりましたが、SNSでは未だに再生回数を稼ぐコンテンツであるHIIT (High-Intensity Interval Training 高強度インターバルトレーニング)

なぜ未だに一部でHIITが人気なのかというとそのアフターバーン効果にあります。
そう「HITをすれば運動後〇〇時間脂肪が燃え続ける!」という例のあれ、です。

今回の内容はもうトレーナーの方はお分かりだとは思うのですが、一般の方はまだ誤解している方が多いのかもしれないと思い、このHIITのアフターバーン効果の真実とリスクについて書きます。
ぜひ最後までお読みください!

アフターバーンの真実

HIIT後のアフターバーン効果をもたらすのは、運動後の余剰酸素消費量 (Excess Post-exercise Oxygen Consumption、EPOC) の作用だと言われています。

実際、運動強度の高いHIITの後にはEPOCが発生し、安静時よりも消費エネルギーは増えるのですが、そのメカニズムや結果についてはしばしば誤解があるようです。

EPOCの期間中に体が消費するエネルギー源には、確かに糖だけでなく脂肪も含まれます。
ただ主に使われるのは「糖代謝」であり、脂肪をエネルギーに変える「脂質代謝」が主ではありません。

なぜなら運動中、特にHIITのような高強度の運動では、体は迅速にエネルギーを生成するために糖代謝(特に解糖系)を利用します。
これは酸素を使わずに行われるため、乳酸が生成されます。
平常時、体内にこの乳酸が多く発生することはないので、運動後、体はこの乳酸を処理し乳酸の少ない状態に回復させる必要があります。
この過程で酸素消費量が増加し、EPOCが生じます。
しかし乳酸は糖代謝のメカニズムでエネルギーとして使われるため、脂質代謝が優先されることはありません。

EPOCの間、体は酸素を使って乳酸を除去し、エネルギー貯蔵物質(ATP、クレアチンリン酸)を再合成し、ホルモンレベルを正常化し、体温を下げるなどの回復プロセスを行います。

これらのプロセスにはエネルギーが必要で、そのエネルギーは脂肪酸の酸化によっても提供される可能性があります。

しかしその量は「運動後じっとしていてもメラメラ脂肪が燃え続ける」といった言葉でイメージされるようなものではなく、実際に運動で消費したエネルギー量を上回ることはありません。

例えば15分のHIITで200キロカロリー消費したとして(これはかなり多く見積もっています)運動後24時間でじっとしていて消費するエネルギーは基礎代謝+200キロカロリーを上回ることはないのです。

これはエネルギー保存の法則で考えても明確です。

実際に運動後にどれだけの脂肪が燃焼されるかは、運動の強度や持続時間、個人の体質や食事状態など多くの要因に依存します。
EPOCによる追加のエネルギー消費は存在しますが、その量が著しく多いわけではなく、全体の脂肪燃焼に与える影響は限定的であるという研究結果が主流なのはいうまでもありません。

要するに、HIITによるアフターバーン効果は実際に存在し、その期間中には脂肪が燃焼される可能性がありますが、その効果は過剰に評価され、宣伝文句に利用されがちなのです。

しかも上記のように15分で200キロカロリーの運動をするようになるには、その人が一定の条件をクリアする必要があり、そうでない場合はかなりリスクが高いのです。

HIITに適していないor必須の対象者

HIITが適していないのは

HIITは、運動の強度が非常に高く、運動に慣れていない人、過体重の人、定期的に中強度の有酸素運動を行っていない人には実践が難しいと言えるでしょう。

HIITは体に大きな負荷をかけるため、運動の経験が少ない人や特定の健康問題を持つ人には不向きな場合があり、適切な準備運動や回復時間が必要です。

HIITが有酸素運動の代わりになるのか?

また、HIITが中強度の有酸素運動の代わりになるという表現がされる場合もありますが、それは目的により異なります。
確かにエネルギー消費量だけを見ればそうかもしれませんが、運動がもたらす効果はエネルギー消費量だけで判断することはできません。

HIITは確かに短時間で高いエネルギー消費を達成することができ、体力の向上、筋力の強化、代謝の促進などの効果が期待できます。

しかし、中強度の有酸素運動には、心臓血管系の健康を促進し、持久力を向上させる、ストレスを軽減するなどの独自の利点があります。

中強度の有酸素運動は、より長い期間持続することができ、運動中に酸素を効率よく利用する能力を高めることができます。
このタイプの運動は、HIITよりもリスクが低く、多くの人にとってより実践しやすい選択肢です。
また、心理的にも中強度の有酸素運動はストレス解消に役立ち、リラックス効果があるとされています。

ただHIITが必須の人がいることも事実です。

それは限界の運動強度でも高いパフォーマンスが求められるスポーツ種目のアスリートです。

例えばボクシングやレスリング、キックボクシング、MMAなどの格闘技の選手。
ラグビー、バスケットボールなどの球技の選手。
自転車やボートなどの競技の選手。
その他にも100%に近い運動強度を持続しながら高いパフォーマンスを発揮しなけれないけない競技の選手には必要なトレーニングです。

誤解を恐れずに言うなら、スポーツであっても「ゴルフ」「ボーリング」「野球」などはそこまで高い代謝能力は必要ないでしょう。
また陸上競技でも投擲や跳躍競技の場合、瞬発力は必要ですが、それが短時間の間に持続的に発揮しなければいけない訳ではないので、HIITが必須な訳ではありません。

トレーニングの原則の一つ「特異性の原則」で考えても、本番の競技の運動強度に準じて、必要な場合はHIITを取り入れるのが妥当でしょう。

総じて、HIITと中強度の有酸素運動は、それぞれ異なる利点を持ち、互いに補完関係にあると考えることができます。

運動プログラムには、個々の健康状態、運動経験、目的に合わせた多様なアプローチを取り入れることが重要です。

健康を考えるなら、理想的には中強度の有酸素運動をメインにして定期的な運動を行い、それに慣れた後で徐々にHIITを取り入れつつ、全体的な健康と体力レベルの向上を目指すべきでしょう。

健康のためのガイドラインを示すなら

最大酸素摂取量が年齢の平均値を越えるまでは最大運動強度の40%から始め65%で一日30分を週に5回以上。
それを最低でも3ヶ月以上継続できたら、その運動を継続しつつ、週に2回くらいを目安に取り入れると言うのが一般的なガイドラインと言えます。

HIITを取り入れる具体的な目安は?

一般の人がHIITを安全に取り入れ、その効果を最大限に得るためには、まず基礎となる有酸素運動能力を高めることが重要です。

週に5回程度の中強度の有酸素運動を定期的に行い、最大酸素摂取量(VO2 max)を年齢と体重に応じた平均値以上に向上させることは、HIITへの移行において理想的なアプローチと言えます。

最大酸素摂取量が向上するということは、心臓血管系の効率が良くなり、運動中により多くの酸素を筋肉に供給できるようになることを意味します。
これにより、運動の持久力が向上し、HIITのような高強度のトレーニングに対する身体の耐性が高まります。

また、基礎的な有酸素運動能力が高いと、HIIT中に発生する乳酸の蓄積を効率よく処理できるようになり、運動後の回復も早くなるため、運動後の余剰酸素摂取量(EPOC、いわゆるアフターバーン効果)も最大化される可能性があります。

しかし、何度も言いますがHIITは非常に負荷が高い運動であるため、運動に慣れていない人や心臓血管系に問題を持つ人には適さない場合があります。
そのため、HIITをプログラムに取り入れる前に、医師や運動専門家と相談することが重要です。
また、HIITを始める際には、運動の強度や頻度を徐々に上げていき、身体が適応できるようにすることも大切です。

特に良くSNS で取り上げられる「バーピー」「マウンテンクライマー」「スクワットジャンプ」などは日常にはない特殊な動作で、その動作特有のスキルが求められます。

しかしそのスキルの細かいポイントがSNSで丁寧に説明されることはほとんどありません。
そして悲しいことにそれを発信しているインフルエンサーは、自分の動画を見てマネをした低体力者や過体重の人がリスクにさらされているという自覚も責任もない人ばかりです。

QuestでももちろんクライアントによってはHIITを実践していますし、「バーピー」「マウンテンクライマー」「スクワットジャンプ」などを指導し、取り入れている方も多くいらっしゃいます。

しかしその場合も「Step by Step」で緻密で段階的なプログレッションのもとで実践できるようになったのです。

ですから普段運動していない人が見よう見まねで取り入れて、自らリスクを背負うようなことはしないでほしいのです。
それだけは切に願います。

このnoteでは今回のように「運動」「トレーニング」「健康」「ダイエット」などに関して、最新の科学に基づいてより正確な情報をお届けします。

少しでも興味のある方はフォローしてお待ちください。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました!


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