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「壊す」・・・小学生の身に起こった怪奇な現象。友達を失くした少女は。

「壊す」

青山颯良(そら)ちゃんが、クラスで浮き始めたのは小学校の3年生くらいからだった。

「颯良ちゃんが触ると壊れるからもう来ないで」

同級生の誕生会で言われたのがきっかけだった。

確かに私の周りではよくモノが壊れる。

花瓶が割れ、人形の首が落ち、楽器から音が出なくなる。

それも自分のものは壊れず、友達が持っているものだけが壊れるから
周りの目は余計苦しくなる。

小学校に入ってからは、徐々に頻繁に起こるようになっていった。

まさかそんな事が・・・と信じなかった担任の先生も、
今では飼育係や、楽器準備係には颯良を指定しなくなった。

颯良ちゃんは、自分でも他人の物からは距離を取るようにしていた。
モノの話題には近づかず、なるべく触れない。
どんな時も23歩下がって話を聞く。

そんなことをしていると、当然のようにクラスで浮いてしまう。

運命を恨むしかない颯良ちゃんは、学校に行くのが嫌になりかけていた。

それを救ったのは、麻央ちゃんだった。

「友達になって」

優しく話す麻央ちゃんの笑顔に救われた気がした。

颯良ちゃんは麻央ちゃんといつも一緒にいるようになった。

その間も、色々な物が壊れたが、
そんな時でも麻央ちゃんは

「私のランドセルも文房具も古くてもう壊れてるから
気にしなくていいよ」

と笑っていた。

ある日、麻央ちゃんが、
「家に遊びにおいでよ」と誘ってくれた。

颯良ちゃんは嬉しかった。

狭い路地をいくつか曲がったところに
麻央ちゃんの家はあった。

古い二階建てのアパートで、階段がギシギシ音を立てた。
颯良ちゃんは建物に触れないように気を付けて、
麻央ちゃんの家に入った。

食べ散らかしたカップ麺や積み重なったゴミ袋の向こうに
ボロボロの服を着た男の人が横になっていた。

麻央ちゃんは、その男の横に颯来ちゃん呼び寄せた。

ぷんとお酒の匂いがした。
伸びっぱなしの髭、荒れた肌、汚れた下着のままで
眠り込んでいるようだった。

麻央ちゃんは、その男の人を指さして言った。

「颯良ちゃん。この人触って」


           おわり



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