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「一緒に写真を」・・・超ショート。ホラーとも怪談ともつかない話。


「一緒に写真を」

しつこい女だった。

「俺たちもう別れただろう」

何度断っても、モトコは付きまとった。

「せっかくの修学旅行だし、良いじゃないの」

と言ってモトコは強引に腕を組んだりして二人で写真を撮ろうとした。
俺は常に友達数人と一緒に行動するようにしてその要求をかわし続けた。

「もう良いわよ。意地悪!頭おかしいんじゃないの、
こんな可愛い女の子と写真も撮らないなんて」

「おかしいのはお前だろう、
普通自分の事を可愛いなんて言う奴はいないぞ」

そんなやり取りは、修学旅行が終わっても続いた。

「持てる男は辛いな」

最初ははやし立てていた同級生たちもひと月も経つ頃には
話にも上らなくなった。いや俺とモトコの話題を
避けているようにも思える。

それはそうだろう。俺だって避けたい。

それでもモトコは、休憩時間になる度に、
俺のクラスの入口に立って俺を見つめ、眼鏡を輝かせている。
目を合わせないで無視していても、気が付くと目の前にいる。

仕方がないから俺は毎回席を立ってクラスを出ていく。

「休み時間になると二人で歩き回っているように見られているだろうな、
これじゃあ噂は消えないな」

そんな思いを抱えながら俺は廊下を逃げ回った。

「一緒に並んで写真に納まりたい」

今思えば、ただそれだけなんだから、
俺も写真くらい一緒に撮ってやれば良かったのかもしれない。
恥ずかしくて、そうしなかった自分を今は悔いている。

俺が交通事故で亡くなってしまったからだ。

もう並んで写真を撮る事は出来なくなってしまった。

日々泣き続けるモトコを空の上から眺めると、胸が苦しくなった。
本当は俺もモトコの事を思っていたのだと初めて気づいた。

だが、そんなモトコの願いは、卒業アルバムで叶えられた。

各クラスの集合写真に続いて、
「追悼」と書かれたページが作られ、
そこに、俺とモトコの写真が黒枠を着けて印刷されたのだ。

「交通事故に自殺か、一年でクラスメートが
二人も続けて亡くなるなんてな・・・」

同級生たちは卒業アルバムを眺めながら涙を流した。
その反対に、写真の中のモトコは、明るく笑っている。

「やっと二人っきりで写真が撮れたね」


            おわり



*ちょっと後味の悪いホラー、というか不思議な話になってしまった。
体調でも悪いのかな。

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