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「孫子の代まで祟ってやる」・・・その言葉を発したのは。


人を恨む言葉を、思わず発してしまうような事は誰にでもある。

出世競争で後輩に先を越された時、他社に大口の受注を取られた時、
子供の頃のイジメや、理不尽な大人たちからの心身両面の暴力・・・
などなど。大なり小なり経験はあるだろうし、
思い当たる人も多いはずである。

これは、友人の前野君から聞いた、とある親子の話。

ある日前野君は、当時の家族ぐるみの付き合いをしていた彼女と、前野君の親戚であるAさん、そしてAさんの小学2年生になる息子を乗せて、買いたての大型ワゴン車でドライブをしていたらしい。

天気も良いので、少し遠出をしようという事になり、近くのインターから、高速に乗ったそうだ。

しばらくはs辞ったところで、サービスエリアに立ち寄り、給油を兼ねて昼食を取った。

そして、いざ出発!という段になって後部座席を見ると、Aさんがいない。

「ママ。どうしたのかな」

とAさんの息子に聞いても、「知らない」と答えるだけ。

しかたなく、エンジンをかけて待っていると、

「お団子買ってた~」

と言って悪びれもせず、Aさんが戻ってきた。

「おいしそうでしょ」

と自慢げに見せるのだが、その手には一本しかない。

『こっちには無いのかよ』

と前野君は呆れ気味に思ったのだが、いつもの事なので黙っていたそうな。

ちなみにそのお団子は、

串に刺さった4個の団子が上2個がヨモギ餡。下2個がみたらしという味付けで、二つの味が同時に楽しめる期間限定の品だった。

「食べた~い」とAさんの息子が手を伸ばすので、
Aさんは「汚すなよ」と言いながら渋々息子に団子を渡した。

団子を手にした息子は、違う味まで食べたかったのだろう。
あっという間に上から3個目までの団子を
パクっと口に入れて食べてしまったのだ。

後に残ったのは、最後の一個。
しかも、みたらしの蜜は半分以上息子に舐められていた。

その瞬間、Aさんはこの世の終わりのような悲鳴を上げ、

「チクショー。孫子の代まで祟ってやる!」

と真剣に怒ったらしい。

前野君は、「その子の孫子は、あなたのひ孫と孫だよ」

と心の中でツッコミを入れながら、笑いを堪えて運転していたそうである。

自分だけにお団子を買って来て、それを小学生の息子に食べられてしまったからといって祟ってしまうのだから、なんとも食い物の恨みは恐ろしいものである。

いや。恐ろしいのはAさんかな?

それでも、悪い事ばかりではない。

それ以来、前野君はドライブ中に彼女と喧嘩すると、
必ずその時の事を話すという。

すると、100%彼女は大笑いし、喧嘩していたことも忘れて、
再びドライブを楽しめるようになるらしい。

どうやらこの話は、孫子の代まで話題になりそうである。

                  おわり



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