01_c勝鬨橋

01|勝鬨橋(東京都中央区)

<技術の手触り> 土木学会誌2013年1月号表紙

 本号より表紙と裏表紙にて新たなシリーズを展開する。日本の近代化を支えてきた土木施設に「過剰に」近接する。それによって私たちの先輩方が行った仕事の熱量と、ものづくりの手触りを感じ取ろうという企画である。関係各所が保有する歴史資料、図面、写真などを収集・展示する土木学会の企画「土木コレクション HANDS」と連動している。第1回の今号では、隅田川に架かる勝鬨橋に迫る。

 この橋が供用された1940(昭和15)年には、東京万博と東京オリンピックの開催が計画されていた。どちらのイベントも緊迫した国際情勢により無期延期となったが、当時の日本には世界に打って出ようとする爆発的なエネルギーがみなぎっていたのであろう。そうした時代において、物流は著しく増大していた。万博の開催予定地だった月島への陸運と隅田川の水運に対応するために、土木工学、機械工学、電気工学の最新技術を結集し、桁をハの字型に跳ね上げる「シカゴ型固定軸双葉式跳開橋」を実現した。

 表紙の写真および裏表紙の図面は、桁の回転中心であるトラニオン軸付近の様子である。五角形の巨大な鋼の塊にボルトとリベットにより桁が厳重に接合されている。そこには力の集中する個所という緊張感が風格を伴って表れている。また、可動桁の重量バランスを取るための巨大なカウンターウェイトが頭上に控える水面下の橋脚内部空間は、荘厳さすら感じられる。

 現時点では可動桁が跳ね上がる姿を見る機会はないが、本橋の北側にある「かちどき 橋の資料館」において関連資料を閲覧できる。さらに橋脚内部に入って各種設備を実際に見ながら解説を聞く見学ツアー(要予約)も行われており、土木関係者だけでなく一般の方々にも人気がある。

文・写真:八馬 智 HACHIMA Satoshi
取材協力:東京都建設局・東京都道路整備保全公社

土木学会誌2013年1月号目次

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