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てめえのはんどる

「それでも運転席から降りたらいけないよ」
隣に座る恋人が、真剣な眼差しでそっと呟く。

うん、そうだね。ちゃんと両手で握らないとね。

我々の手のひらは、滲みでる
香油で、しっかりと結合され、
我々の視線は、重なり合って、
目と目を撚り糸で結んでいた

ジョン・ダン「洸惚」

新進気鋭の人類学者インゴルドはこう考察する。

向かい合うより、横並びの方が親密になれると。

向かい合う時。
それは、相手の背後ばかりを見て、嘘に気づかず
誤魔化し合い、意識が散漫してしまう。

隣に並んで歩く時。
目をじっと合わせずとも、景色を共有しながら、
互いの歩幅や距離感を感じ、呼応していく。


インゴルド『メイキング』より

不思議なことに、思い返すと、君を好きだと
感じる瞬間は、どれも綺麗な横顔ばかりで。

夏の北海道で、バスに並んでに揺られている時、
深夜2時、銭湯帰りのお散歩や公園のベンチ、
小さなキッチンに2人で並んで餃子を包む瞬間。

同じ高さで、同じ景色を、綺麗だねって呟いて。
頬を赤らめ、「好きだよ」なんて言ったりして。

今度こそ、ずっと、ハンドル離さないんだから。
だから、君も、ずっと離さないでね。

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