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ペニス発つ日に【プロローグ】

水の都「ペニス」

深夜2時。私はこの人生に疲れ、まさに今、この命を絶とうとしていた。

つけっぱなしにしていたTVモニターからは「シャバネットリ・ショッピング」のCMが流れている。シャバネットリ社長の甲高い声が鼓膜を振動し、音の情報を電気信号に変え、蝸牛神経を介し脳に伝わる。

📺《北ヨーブシャー中心から仕入れたイキマス製のスカ〇ローバイブ、お値段160€のところを今なら特別価格80€!!》

バイブか。そういえば一度も味わうことなかったな・・。そう思いながら私はくだものナイフを自己の首元に押し付けようとしていた。

(これでラクになれる)

その時、どこからともなく声が聴こえた。

👶 👶 👶

『人間のまま、つまり幻想のまま幻想に殺されるのかのう?』

「だ、だれ!?」

『わしか、わしはあなたじゃよ』

「?私はあなたのようなおっさん赤子のハゲは知りません!!気持ち悪い💦」

気持ち悪い。私は確かにそう思ったのだが、そのときの部屋の雰囲気・・空間全体を包み込むようなふわふわとした不思議な感覚を同時に感じていた。

『自分とは一体何なのか。それを知らずに消えるのかね?まだ幼いあなたは幻想思考世界という小さな世界の中にしか生きておらぬ』

「何を言ってるの?人間とは思考する生き物でしょう!」

『ペニペニペニwww・・あなたは人間ではないよ』

「はぁ!?意味わかんない。もうどっか消えてよ。私は死ぬの!」

『その思考でよくよく考えてみるといい。”人間”とは後付けされた名前ではないかね?仮にあなたの云うように人間だとしよう。ならどうして、その尊き命を、人生の道具でしかない思考に奪われなければならないのだろうか

「・・・・・」

『窓の外を見てごらん。水の都の美しさ。それ以上に美しき本当のあなたを知ってから、キノコを勃つ...あ、イノチを絶つも遅くはないであろう』

「本当のわたしの?」

『間違った力の向け方をしていたのかもしれない。それとも今こうして本当のあなたを知るために起きた多くの過去必然だったのかもしれない』

「悩んで患って、苦しんできたことが無駄だとでも言いたいわけ?」

『それが心の結果、観念の結果じゃよ。トキに大病を患いトキに鬱になり、そうして誰もが考える努力をしてきた。どこかにあるであろう幸せを探しながら』

「考えることがイケないの?」

『まったく問題ない。じゃが思考の使い方の問題じゃ。事実、考えることだけに頼りすぎ、思考だけに偏ったエネルギーを注ぎすぎた結果、あなたは今そうしてス〇ボローバイブでなく、くだものナイフを手にしているのじゃろう?それを首に向けるのは問題ではないのかね?』

「・・ハッ!?」

『今日、ここで自殺をするために、これまでのあなたの人生はあったのだろうか。まだ愛の振動を感じることは許されておるぞ。なぜなら、最初からあなたはすべて赦されているのじゃから』

「私はすべてゆるされている・・?」

そう諭され、奇妙な感覚をおぼえた。許されるどころか、私はいつも何かに怯え、何かを求め、何かに見て見ぬフリをしてきた。そうすることで無意識に何かから逃げ続けていたのかもしれない。傷つくことから身を守るため偽りの自分を演じ続けていたのか。起きる現象を直視することすらせず・・。

『実のところ、あなたが直視していたのは思考だけである。それは自我を満たしはすれど、一歩間違えばその命を奪うこともある』

言葉を失った。

突然現れたこのおっさんハゲとの短い会話。その話しにあまりに納得している自分に気づいたからだ。

次の瞬間、無意識に口が開いた。

「私は一体、どうすれば?」

『何も考えることはない。何も気にすることはない。何も心配はいらない。完全なる解放へ向かうための単なる変化の真っ只中である』

「・・解放への変化」

『窓を開けてごらん』

私は言われるがまま、部屋の窓を開けた。

外には涅槃雪が舞っているのに、私の体には心地良くあたたかな風が吹いていた。その風を受けている間、なぜか”私”は消えているような気がした。

👶 👶 👶

ドピューっと吹くシャワーじゃ💜』

ピューっと吹く!ジャガーでしょ!」


ではまた🎵


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