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表情で魅せる演者4人〜光る君へ

大河ドラマ「光る君へ」が毎週楽しくて仕方ありません。

4話あたりから大きく展開が動き、まひろ(紫式部)と藤原道長の関係がどのようになっていくのか気になるところです。

6話では「ききょう」こと、後の清少納言も登場。
バラエティ番組の印象が強いファーストサマーウイカさんの起用は、実のところ期待と不安が入り混じっていました。

ふたを開けてみると、文学が好きで終始楽しげな様子は独特のクセがあり、10代の頃の篠原ともえさんのようなエキセントリックさを感じました。

主演二人を含め、ほかの登場人物もですが、このドラマは個性の強い演者さんが多い。
個人的にキャスティングが手堅く、遊び心もあり豊かに思います。

各話順を追って感想を述べていくスタイルに慣れないため、不定期で要所に的を絞った記事を書くことにしました。
今回は「表情で魅せる演者さん」を4人取り上げます。

静の道長、動のまひろ

5話のまひろの告白から、次兄・道兼が犯した罪を知った道長。
まひろを慰めるよりも道兼を殴りに行ったシーンは、それまで「もっと腹から声出せ道長!」ともどかしく思っていたうっぷんが幾分晴らされました。

6年前の真実を知ってから、道長の振る舞いと演技は自然に変わりました。
今まで藤原家の暗略に我関せずだったのが、腹を据えたのか一段トーンが低くなったように思います。
どこかふわふわとしたこれまでの道長を、柄本佑さんはきちんと演じ分けていたと実感できました。

一方まひろ役の吉高由里子さんは、明朗活発だったといわれる紫式部の娘時代を感情豊かに体現しています。

4話の五節の舞のラストで「道兼さま……」と憎しみを抑えても漏れ出てしまう声音、5話で母・ちやはの死について道長に語る際の悲しみが溢れ出てくるさまは目をみはりました。

感情が表に出やすいまひろと、淡々としていながら心優しい道長。
ふたりの演技の対比が6話の「漢詩の会」で出ていました。

参加しないはずの漢詩の会に突如現れた道長。驚きを隠せないまひろに期待が高まります。
道隆(井浦新さん)の策略に協力しても良いと決めたのもありそうですが、「為時の娘が来る」と誰かから聞いて飛び入り参加したのではと思いました。

まひろに会えなかった日々を表したような道長の詩に感じ入るまひろ。
会が終わってもまひろと同じ空間にいたいのか、しばらく居座ってから後にしようとしてまひろを見下ろす道長のいつくしむ眼差し。
ききょうのクセが強くなければ、完全に二人の心の機微しか記憶に残りませんでした。

喜怒哀楽に富んだまひろ、繊細な表情の違いで視聴者に感じ取らせる道長。
これまでほとんど観てこなかった主演二人の雄弁な表情に、今後の展開や変化の過程がより楽しみになりました。

無垢だから読めない「倫子様」

演者さんのなかでも昔から好きなのが、左大臣の一の姫・倫子役の黒木華さんです。

素朴な顔立ちなためか時代劇の出演が多く、「真田丸」「西郷どん」と、大河ドラマでも重要な脇役として登場しています。

NHKではそのほか、髙田郁さんの時代小説「みをつくし料理帖」が実写化された際主人公の澪を演じました。
澪の純朴ながら芯の強いイメージとぴったりで、毎話楽しく観ていたのが懐かしいです。

これまでの時代劇の役柄と異なり、倫子は天皇の血を引く家柄だけあって悠然とした佇まい。
少女向け小説にしか存在しないと思っていた、肌の内側から発光しているような美しさを誇り、常に笑みを絶やしません。

物腰は柔らかですが、物言いはかなりはっきりしています。
「詮子さま(吉田羊さん)のようにはなりたくない」と入内に難色を示したり、「私が高貴な身分だということをお忘れかしら」とまひろをけん制したり……。

それでいて猫の小麻呂を追っかけたり、「書物が大の苦手なの」と扇の内側でてへぺろでもしていそうな茶目っ気もあるため、男女問わず求心力がすさまじいです。
倫子に興味を持ち、間者役を抜きにしてもサロンに通いたくなるまひろの気持ちが分かります。

ただ、倫子の茶目っ気はおそらく「計算ずく」。
小麻呂を追っかけたのは屋敷に藤原兼家(段田安則さん)が来ていた際です。
倫子は藤原三兄弟に興味を示していたため、兼家に自身の存在をアピールして会う機会を作りたいのだと推測します。

無垢な面立ちに品格と強かさを宿した倫子。
黒木華さんの魅力と演技が合わさった存在は嫌味がなく、今後も目立つことでしょう。

父・為時がにじませた娘への思い

そもそも左大臣が倫子を入内させる意思があるのか探りを入れるべく、まひろを間者役として遣わせたのが父・為時(岸谷五朗さん)です。
(※為時に命令したのは兼家)

6話で、まひろは左大臣家とも繋がっていたほうが良いと進言。
為時がお前が男であれば、とつぶやくのに対し、まひろは「女子でもお役に立てまする」と確かな口調で言い切りました。
その時の為時が、何ともいえない喜びを浮かべていたのです。

まひろと為時は殺された母・ちやはの件があってからぎくしゃくしていました。
しかし元々は仲の良い父娘。学問に長けた父をまひろは幼少期から慕い、ぎこちない間柄になってからも、まひろは父の実力に見合わない待遇をもどかしく思っていました。

まひろがいかに為時を思っているか、役に立ちたいと思っているか。
一家の大黒柱として自身の仕事に注力し、兼家の片棒を担ぐ後ろめたさもあり、為時はあまり実感できていなかったのではないでしょうか。

あまり注目されませんが、岸谷五朗さんの表情の豊かさ、言葉のない感情のニュアンスにさすがと思わされました。

歌を書き写して繰り返し浸る

今回の内容とは別に、私が運営している手帳と文房具のWebマガジン「テラス手帖」にて記事を書きました。

PILOTのインク・色彩雫シリーズにある「紫式部」を使い、ガラスペンで紫式部集やドラマの劇中に登場した道長の詩と歌を書写する模様を紹介しています。
ありがたいことに、note公式の「今日の注目記事」に選出されました。

こんなに胸躍るドラマを楽しめていること、趣味の幅が広がったこと、とても嬉しく思います。

今後も不定期で「光る君へ」および関連記事をアップしていきます。

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