hakaiso

M2。「同世代」の表現について書きます。

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最近の記事

怪文書①

 知らないことだらけだから、といって、知りたいことだらけとはかぎらない。例えば、君のこと。君が今、だれのとなりで寝ているのだろう。とか。たいして知りたいとは思わない。でも、どうしたら戦争で死ぬ人が一人もいなくなるのだろう、とかはよく調べようという気持ちになる。そうでもないかな?ほんとうは、マッチングアプリの上手な使い方をググる。どれも信用ならない、いけ好かない、頭の悪い記事に見える。この人たちは、本当にマッチングアプリを駆使して、夜な夜な街へ繰り出して、軽薄なやり取りをして、

    • Orangestarにおける「青空と神話」

      Orangestarのアルバム作品は、『未完成エイトビーツ』(2015)『SEASIDE SOLILOQUIES』(2017)『And So Henceforth,』(2023)である。本稿はこれらのアルバムのアートワーク、すなわちジャケットイラストについて述べていく。 『未完成エイトビーツ』のアートワークでは、白いワンピースを着た少女が中心に据えられこちらに背を向けている。表情はようとして知れないが、たなびくスカートや、まっすぐと遠方の都市を望むすがたからは決然とした印象

      • リーガルリリーの歌詞についてのノート——タイムカプセルが媒介する生の複数/唯一性

        いままでのノートでは、リーガルリリーの『東京』と『overture』の歌詞について、それぞれ「逸脱」と「物語性」という観点から軽く論じた。本稿では、それらを手がかりに『セイントアンガー』について述べていく。 『セイントアンガー』は、複数の登場人物たちの生を、つぎつぎに入れ替わる場面のなかで描出していく。「私」「君(あなた)」「少女」「少年」「ホームレスのおじさん」「野球選手」が登場し、それぞれが現実と向き合っている。ここでは、「ホームレスのおじさん」と「野球選手」の対比を中

        • リーガルリリーの歌詞についてのノート——多用される軍事的なモチーフ

          引き続きリーガルリリーの話。リーガルリリーの歌詞で繰り返し登場するモチーフとして「戦争」がある。「うつくしいひと」では、子供が出兵した母親がかなり直接的に描かれている。また「ハナヒカリ」では、「兵隊さん」「戦闘機」「F-16」といったワードから戦争にいく「君」を引き止めたい心情を綴るストーリーになっている。最近の曲でも「明日戦争がおきるなら」「ノーワー」といった、タイトルに「戦争」を含む曲が出ている。 また、そのほかにより表現的なメタファーや演出としてミリタリーモチーフが登

        怪文書①

        • Orangestarにおける「青空と神話」

        • リーガルリリーの歌詞についてのノート——タイムカプセルが媒介する生の複数/唯一性

        • リーガルリリーの歌詞についてのノート——多用される軍事的なモチーフ

          リーガルリリーの歌詞についてのノート——『東京』にみるロックのクリシェからの逸脱

          リーガルリリー、いいよね。 特に、たかはしほのかの書く歌詞がいい。彼女の歌詞は、借り物の言葉じゃなく、自身のなかから発見した言葉だと思う。それは単にボキャブラリーが豊富であるということではない。それは、いまこの世の中にあふれている言葉が、つねに誰かがどこかで言っていたことを別の場所で繰り返しているかもしれないという不安の裏返しなのである。だから、彼女はロックソングの歌詞には到底使いそうもないような言葉をあえて使っているのではないか。 こうした語彙が突然曲のなかに出でくるわけ

          リーガルリリーの歌詞についてのノート——『東京』にみるロックのクリシェからの逸脱