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“オオカミ少年メディア”?

 もはや現役の報道マンではないのでLINEやニュース速報に眠りを妨げられるのはご勘弁。就寝時はiPhoneとスマートウォッチは「おやすみモード」にしている。それでも電話の入電やアラーム(目覚まし時計)では鳴動するし、そもそも60を過ぎたいま「うわ、会社に遅れる!」と飛び起きるような時間まで眠り続けるのは、“ぜひやってみたい夢のような事態”である。

 けさ起きたら日本各地の沿岸に津波注意報が発表されていた。昨夜フィリピンで発生した地震によるもの。津波には「大津波警報」「津波警報」「津波注意報」の三段階の呼びかけがあり、その最低のものだ。

 今でも私はもし東日本大震災級の災害が発生し、家族の無事が確認できれば報道局に駆けつけて微力ながら手伝う覚悟でいるが、けさは「ああ、注意報レベルなのね」と見切っている。

 NHKがすごい。

 24時間録画をしている総合チャンネルの番組一覧を見ると昨夜からずーっと「ニュース」のまま。けさ7時の定時ニュースも冒頭およそ30分は津波関連情報を続け、各地からの中継報告をつなぐだけでなくヘリコプター中継までやっている。

 これに対して民放は落ち着いたものだ。もちろんニュース項目としては取り上げているし、画面下に注意報が出ている地域を示す列島地図を出しているところもあるが、基本的には通常放送だ。番組を取っ払うということはスポンサーの関係もあってとてつもなくハードルが高いし、そのためにしっかりした基準を設けているはず。「注意報なんだから民放各局の程度の扱いでいいのではないか」と考えるのは民放出身者の感覚だ。

 これに対してNHKは「公共放送の使命として災害報道で手を抜くわけにはいかない」という論理だろう。様子見でやきもきするくらいなら、あの分厚い取材網を総動員して突っ走るほうが「ラクチン」ということになる。スポンサーは視聴者サマだし。

 しかし。

 いつまで見ていても実際に観測した津波は八丈島の40センチだけ。アナウンサーや記者は「絶対に海岸や河口には近づかないでください」繰り返しているが、そこに映っている中継映像の海岸は平穏そのもの。

 建前としては続ける以外にないのだろうが、これでは「またNHKだけが騒いでいるね」という“オオカミ少年”気分を強化するだけにならないか。この反動として、本当にヤバい事態での呼びかけにどれだけ視聴者が反応するかが心配になる。

 NHKにも“秘策”はある。緊急事態になった際には「つなみ!にげろ!」とひらがなで大きく表示して、アナウンサーも叫ぶように避難を呼びかけるようになったはずではある。

 大きな事故や災害が発生してNHKや民放が一斉に「特別番組」になってもテレビ東京だけ通常どおり、ということがある。どのタイミングだったか忘れたが、かつてそのテレビ東京までが特別番組になった際にネット民が「テレ東まで特番って、そんなにすごい事態なのか」と話題にしていて、“判断基準”と認識されていたのがおかしかった。

 それにしても。

 「NHKの取材網ってやっぱりすげえなあ」「『10センチの津波を観測』って、普通の波とどうやって区別しているんだろう?」と思っている。
(23/12/3)

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