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花粉症とピロリ菌と私の体重

 二十代で花粉症を発症した。毎年秋、イネ科の花粉が飛びはじめる9月中旬から、檜花粉が終わる梅雨入りまで、薬を手放せない。

 最も酷いときには処方薬を飲み、漢方薬を飲み、さらに点鼻薬を使っても、毎朝鼻詰まりで苦しくなって目が覚める日々。口呼吸で喉はカラカラになり、水を飲んでも飲んでも乾きが癒されない、という悪夢を見たことも一度や二度ではなかった。

 そんな私は現在、処方薬を飲むだけでほとんどの症状が治まるようになった。ピーク時でも少しくしゃみがでて軽く目が痒くなる程度で、我慢ができないほどではない。

 私が個人的に思っている改善の要因は、ピロリ菌の除菌である。

 数年前にピロリ菌を除菌してから、明らかに花粉症の症状が軽くなったのだ。
 田舎育ちで祖父母の家の井戸水を飲んでいたため、私は自分の胃にはピロリ菌が生息している、と以前から確信していた。
 子どもの頃から胃腸が弱く、少し食べ過ぎただけで体調不良になるのもそのせいであるのだろう、とピロリ菌の存在を知って納得していた。

 除菌しなければ、と思いつつも先延ばしにしていた最大の理由は、胃カメラによる検査を受けなければならないことだった。できれば避けたいと思っていた検査が必須である。
 ピロリ菌の除菌だけでは、保険診療の対象にはならない。
 胃の調子が悪い、内視鏡検査で胃炎を確認、同時にピロリ菌の抗原検査が陽性になれば、胃炎はピロリ菌が原因ということで、初めて治療の対象となる。

 しかし、胃癌の原因のほとんどがピロリ菌であるといわれると、さすがに放置はできない。意を決して胃腸科クリニックへ行った。

 検査の当日、内視鏡を飲む前に検体検査の結果は出た。
「ピロリ陽性ですね。ではカメラ入れますよ」
 なんだかなあ、と思いつつ鼻からカメラは入っていった。
 口からのカメラよりも随分楽になったんですよ、と言われたが、残念ながら口からの経験はない。それでも、周囲の人にさんざん脅されていたおかげで、予想していたほどにはつらくなかった。検査前に飲む不味い消泡剤を飲み込む方が苦しかったかもしれない。

 それでも体に機械が入ってくる違和感は楽ではない。
 看護師さんに「ゆっくり、力を抜いて、そう上手ですよ」と言われて、出産時を思い出してあれもつらかったな、などと考えた。

 無事にカメラは胃に到達し、先生は言った。
「うん、慢性胃炎だね」
 そうでしょうとも、と私は思ったが、もちろん言葉にはできなかった。

 胃酸を抑える薬と抗生物質の処方箋をいただき、禁酒を言い渡されて帰った。受けとった抗生物質は以前にも処方され、飲んだことのあるものだったことに驚いた。胃酸を抑える薬を同時に飲まないと、ピロリ菌には効かないということであった。
 私は幸い一度目の服薬で除菌に成功した(失敗したら抗生物質の種類を変えて再度試みるそうである)。

 そして、花粉症が軽くなった。
 ピロリ菌が胃からいなくなったことで腸内環境が改善したのか、今までは食べられなかった量を食べられるようになったおかげなのか、理由はよくわからないが、個人的には関連があるように思っている。

 しかしながら、食事を美味しく平らげられるようになった結果、太った。

 痩せないと、と思っているうちにコロナ禍に突入し、さらに太る。そして年々代謝は悪くなる。
 現在、人生最高値を記録している。

 それでも、胃癌のリスクが下がり、花粉症も軽減した。何より食事が美味しく食べられる。
 ピロリ菌とサヨナラしたことに後悔はない。

(個人的体験に基づく感想です。医学的な知識は皆無ですので、ご承知おきください。ピロリ菌除菌薬によるアレルギー等、除菌によるデメリットも起こりえます。本文はピロリ菌除菌を推奨するものではありません)


これまでに、頭の中に浮かんでいたさまざまなテーマを文字に起こしていきます。お心にとまることがあれば幸いです。