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読書レポ|日本一やさしくて使える会計の本

「経営者視点」を手に入れるための入門書

『経理以外の人のための日本一やさしくて使える会計の本』久保憂希也さん

介護現場のマネジャーは、ときに「経営者視点」で物事を考えることが求められる。
経営者と従業員で最も視点が異なるのが「お金」のことだろう。

経営者はお客さまからいただいたお金を、従業員に給与として分配しつつ、事業を維持するための支払い、さらに将来へ向けて投資することを考える。
だからお金は、多いに越したことがない。(たくさんの給料を払い、故障する前に設備を整備し、思いきった先行投資を行う)

ならば売上を増やせばいいですね。と思いがちだが、ここでいう“お金”は売上ではない。利益である。

売上目標を達成しても、利益を生み出さなければ、使えるお金が手元に残らない。

ある介護事業所が1時間1000円で高齢者宅の庭掃除を自費サービスとして提供した。
お年寄りは「自分でできずに困っていたから、本当に助かった」と大喜びだ。
庭掃除をした職員も、感謝をされて、よろこびと充実感を味わっている。
「また次も頼むよ」
「もちろんです!」
さて、この職員にも給料が振り込まれた。時給は1500円だ。
この自費サービスは提供するたび会社に500円の赤字を生み出す。経営は小さな数字の積み重ねである。どれだけお客さまが喜んでくれても、赤字事業は継続できない。(先行投資や広告宣伝としての赤字でも実施するサービスもあるが)

介護事業は目の前のお客さまからの「ありがとう」を直接受け取ることができる尊い事業だ。
その分、利益に関する考えが二の次になりがちだ。
介護事業には、働くことの意義として他者貢献をトップに挙げる人が多い。それ自体は素晴らしいことだ。
だからこそ利益“も”大事なのだ。

介護現場のマネジャーなら、まずは会社で決めたルールで仕訳する“管理会計”で数字を見る習慣をつけたい。
その上さらに、経営者視点で事業を捉えるには、財務会計やキャッシュフローの見方を知っておいた方がいい。

目の前の人の生活を支えることに集中してきた人にとって、“会計”という文字を見ただけでも、縁遠い話で頭が痛くなる。
僕もその部類の人間だ。

しかし、マネジャーとして経営の一翼を担うのならば、会計の概要ぐらいは知っておきたい。簿記に出てくる難しい言葉を覚える必要はない。

この本では、「貸方」「借方」という言葉すら使わずに、マネジャーとして知っておきたい会計知識を学ぶことができる。
財務経理担当者向けの高度な話はなしにして、なるべく単純化して、概念や全体像を描くことに特化している。
そのため、会計全体を“覚える”のではなく、“理解する”のに非常に適した本だ。

一度読んだだけで、全てを理解したわけではないが、数字と睨めっこするときには辞書のように開いて、その意味を確認したい。


めでたしめでたし

立崎直樹

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