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To Doリストをやめたら、仕事が楽しくなった

「どれだけやっても仕事が終わらない」という相談を受けて、ある高齢者施設の事務所へ訪問した。
時間より10分ほど早く到着したため、空いている席に座り、相談者の仕事の様子を観察させてもらった。
まじめで几帳面な性格のマネジャーの佐藤さんは、施設の事務部門の責任者。デスクの上にはびっしりと書き込まれたTo Doリストが貼ってある。
忙しくマウスをクリックしたあと、「経理の山下さんへメール返信」とTo Do リストに書き込んだ。

10分後、佐藤さんが「あちらの部屋で」と案内してくれたが、僕が「他の人に聞かれてマズイ話でなければ、ここでお話ししましょう」と伝えると、快く承諾してくれたので、そのまま事務所で相談を聞き始めた。

「見てください。恥ずかしいのですが、こんなに未着手の仕事がたくさんあるんです」とデスクに貼られたTo Doリストを見せてくれた。ざっと見ただけでも10個以上はありそうだ。
「それは今日の分ですか?」と尋ねると「はい、今日やろうと思っている分です。たぶん夕方までにはもっと増えると思います」と佐藤さん。

To Do リストをやめてみた

To Do リストを作成し、活用している方はたくさんいると思います。
僕も以前は何年にもわたって使っていました。
以前は……そう、現在は使っていません。
業務量はTo Doリストを使用していたときよりも増えているし、業務の成果も以前よりも上がっています。
いま現在、僕がどうやってタスク管理をしているのか、ご紹介します。

ポイントは3つ。
・すぐにやる
・しかかり(やりかけ)の状態で残しておく
・人に任せる

すぐにやる

一番かんたんな方法です。
10分以内でできるタスクは、受けたらすぐにやることを基本にしました。
たったそれだけのことですが、時間短縮(生産性向上)効果も実感しています。

短縮できるのはTo Doリストに書き込む時間だけではありません。
佐藤さんがTo Doリストに書き込んでいた「メール返信」を例に説明します。

〔To Do リストをつくる場合の手順〕
1.受信メールを読む
2.To Do リストに書き込む
3.(時間が経ってから)To Do リストを確認する
4.もう一度、受信メールを読む(返信するにはもう一度メールを見返す必要がある)
5.返信メールを作成、送信する
6.To Doリストに完了チェックを入れる

〔すぐやる場合の手順〕
1.受信メールを読む
2.返信メールを作成、送信する

すぐやることで、6工程が2工程へと短縮されます。
もう一度両者を見比べてみてください。
〔すぐやる場合〕の(手順1,2)と、〔To Doリストをつくる場合〕の(手順4,5)はまったく同じだということに気がついたでしょうか。
つまり、(手順 1,2,3,6)はTo Doリストをつくることによって追加で発生するタスクといえます。
これが、To Doリストをやめることで生産性が向上するカラクリです。
ただし、手順6だけは、達成感を味わえるTo Doリストの醍醐味ですが。

しかかりの状態で残しておく

何でもすぐやるに越したことありませんが、他の業務の都合で、すぐに完了できないこともあります。(後に回すのは、目安として10分以上かかるタスクのみ。10分未満ならすぐやる)

あとに回す仕事も、基本的にはTo Doリストを作成しません。
まずは未着手のまま残さず、とりあえずすぐに手をつけます。時間見積もりを立てることと、To Doリストの代わりに自分への動機づけをするためです。

定型業務ならば、経験をもとに時間見積もりを立てることができます。しかし管理職の仕事は基本的に定型よりも、非定型業務が中心です。

経験のない仕事も、やり始めれば、どれくらいの時間がかかるタスクか何となく想像がつきます。
やり始めてから時間の見積もりを立てるのと、まったくの未着手の状態で頭の中だけで見積もりを立てるのでは、見積もりの精度が全く違います。
時間見積もりが正確なほど、無駄な時間が減ります。

着手して(あるいは経験上)、時間がかかりそうなタスクは、しかかりの状態で残しておきます。
メールの返信でも、内容をよく検討する必要がある場合や、資料等を作成したうえで返信する必要があるものなどは、すぐに完了することができません。
すぐに返信できないメールは、とりあえずメールの「返信」ボタンを押して、返信メールの作成画面を開きます。作成するといっても本文に書くのは、「〇〇さま」だけです。
これだけ入力したらメール作成画面を閉じ、メールソフトの「下書き」フォルダへ格納します。

しかかりの仕事が残っている状態は、気持ちが悪いです。
下書きフォルダに書きかけのメールが残っているのは気持ちが悪いです。
つまり、あえて気持ち悪い状態を作り出して、残しておきます。
気持ち悪い状態にするのは、「時間ができた時にすぐに解消したくなる」しかけを作るためです。
僕のメール下書きフォルダには常時0~4通の下書きメールが保存してあります。

人に任せる

マネジャーのところにくる仕事は、マネジャー個人ではなくチームとして任された仕事です。
すべての仕事をマネジャー自身がやらなければならないというわけではありません。むしろ、マネジャーはマネジャーにしかできない重要かつ困難な仕事に集中し、人に頼める仕事はどんどん任せた方が良いでしょう。

僕の脳は記憶容量が少ないので、メンバーに依頼した時点で、いったん脳からその情報を消してしいます。
誰に何を依頼したか忘れないために、仕事を受けてくれたメンバーに、タスクの内容と期限をチームのオンライン情報共有ツールに投稿してもらっています
これによって、僕の口頭指示が相手に正しく伝わったのかどうかも把握できるようになりました。

以上の3つのポイントで、僕はTo Doリストの作成をやめました。
しかし、タスクが溜まり、どうしても脳内で整理できない量になったときには、一時的にTo Doリストを作成し、片っ端からやっつけていくことがあります。1年に3回ぐらいです。
To Doリストは使い方によっては効果的なツールです。
To Doリストをつくっていても、タスクが処理しきれないという人は、To Doリストが精密すぎる可能性があります。
リストに書き込む前に、タスクに着手して、リストに書き込むタスクを減らすことから始めてみると良いと思います。たったそれだけで生産性は向上します。
To Doリストに書かなければならないほどのタスクを、自分の手元に抱える状況を解消することが優先です。

To Doリストを手放し、時間に追われる感覚をから解放され、生産性があがり、仕事を楽しめるようになると、メンバーの心にもゆとりが生まれ職場の雰囲気が良くなると思います。


めでたしめでたし

立崎直樹

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