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『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

世界のエリートと呼ばれる人たちは「美意識」を鍛えている。
金持ちの道楽なんかではない。経営に必要だから必死に学んでいるのだ。
現代では「正解」を「早く」出すことの価値は相対的に低下している。ではどのように差別化を図るのかと言えば、「直感」や「感性」である。エリートたちは、この「直感」や「感覚」を磨き「真・善・美」を獲得するために美意識を学んでいる。
僕はエリートではないが、論理や理性だけではなく、美意識を鍛えるためのトレーニングとして、哲学や文学にももっと関心を広げようと思った。

今回読んだ本は『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか 経営における「アート」と「サイエンス」』(山口周  著)

読書のきっかけ

ブランディングについて学ぶために読んだ書籍『ブランディング・ファースト』で紹介されていたため。

何について書いてある本?

エリートが美意識を鍛える理由は3つ
・一般的なマーケティング戦略でもてはやされた論理的・理性的な情報処理スキルが一般化し、誰でも「正解を出せる」ようになった結果、論理的な正解の価値が相対的に低下した。論理で正解が出せない問題には、直感を頼りにする必要がある。
・顧客が「機能で製品を選ぶ」のではなく、「自己実現欲求を満たす製品を選ぶ」ようになった。自己実現欲求を満たすには企業や製品の「ストーリー」と「世界観」といった「アート」が必要である。
・システムの変化にルールが追いつかなくなった。ルールを守っていれば何をしてもいいというスタンスでは、遅れて作られたルールによって締め出される。どんなルールになっても揺るがない普遍的な「真・善・美」に基づいて戦略を練る必要がある。

ハイライト

美意識を鍛える方法

■VTS(Visual Thinking Strategy)で「見る力」を鍛える
VTSセッションでは「見て・感じて・言葉にする」ことが求めれらます。
1,何が描かれていますか?
2,絵の中で何が起きていて、これから何が起こるのでしょうか?
3,どのような感情や感覚が、自分の中に生まれていますか?

VTSセッションは世界のエリートたちが実際に行っている。
絵画などを見て、対話をしながら感性を磨いていく。

■哲学を学ぶ
1,コンテンツ(内容そのもの)からの学び
2,プロセス(コンテンツを生み出すに至った気づきと思考の過程)からの学び
3,モード(その哲学者自身の世界や社会への向き合い方や姿勢)からの学び

日本ではほとんど学ぶことのない哲学だが、欧州のエリート教育では哲学に代表される真善美の育成に重きを置いてきた。
過去の哲学の歴史をひとことで表現すれば、「疑いの歴史」ということになる。哲学を学ぶことで、「無批判にシステムを受け入れる」という悪に、人生をからめとられることを防げる。

■文学や詩を読む
文学は、「真善美」を純粋に追求してきた宗教や哲学と同じ問いを、物語の体裁をとって考察してきたと考えることができる。

リーダーがやれる仕事というのは徹頭徹尾「コミュニケーション」でしかない。となれば、少ない情報量で豊かなイメージを伝達するためのレトリックの根幹をなす「メタファーの技術」を学ぶのはとても有効であり、「優れたメタファー」の宝庫である「詩」を学ぶことは、とても有効なリーダーシップのトレーニングになる。

この本をどう活かす?

美意識を鍛えることの重要性を痛感した。
本書が発行された2017年と比べたら、AIの進歩などで美意識を鍛え、真善美を磨く必要性はさらに増している。
これは無視できない。
まずは、普段あまり読まなかった(いままでは全読書量の10%程度)文学や詩に触れよう。
哲学的な問いをたてて、じっくり考える時間もつくりたい。
できることなら文学や哲学、美術についての対話を楽しみたいと思う。
美意識を養うことは、ビジネスに生かされるだけでなく、人間としての豊かさを磨き、人生を充実したものにしてくれるだろう。

こういう人におすすめ

日常的に難しい意思決定を求められる経営者や管理職は必読。
そのほかすべてのビジネスパーソンが対象。


立崎直樹


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