小松明日香

毎週日曜日にレポートを更新します!

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最近の記事

華厳経における時間観

はじめに 今回は、華厳経として知られる大方広仏華厳経について書こうと思います。この経典はインドで伝えられてきた様々な独立した仏典が、4世紀頃に中央アジア(西域)でまとめられたものであると推定されていて、大乗仏教の仏典の一つです。 釈尊が菩提樹のもとで実現されたさとりの世界、その世界の内景をそのまま表そうとしたものである、という見解が一般的です。 東大寺にあるこの立派な大仏は、聖武天皇の発願によって建立(七五二年)されたものです。そしてこの大仏を造るとき、その思想のよりど

    • ACIM覚え書き

      引用はKindle版のページ数で書いています。 第一巻 テクスト Ⅳ. こうである必要はありません 1. もしあなたに「神の声」が聞こえないとすれば、それはあなたが聞く選択をしないからです。 誰が考えるのか 兄弟のことを許さないとき、「神」の被造物を受け入れていない。 なぜ、諦めると運ばれていくのか →それは、「精霊」を信頼していることを全身で表現しているからだ。 もし、世界が友人のように優しくないとすれば、諦めることは肉体と魂の分離である。 →世界は友人

      • ノルウェイの森①—グレート・ギャッツビーとハツミさん—

        はじめに これから、何回かに分けて村上春樹の『ノルウェイの森』について書こうとおもいます。 村上春樹は中学の頃に『1Q84』『ダンス・ダンス・ダンス』、そして『スプートニクの恋人』を読んでいました。 それからかなり時を経て、大学2年生のはじめに出会ったのがこの『ノルウェイの森』です。はじめてこの本を読んだ時は、まるで頭を掴まれて水面に引き込まれたような心地がして、我を忘れていっき読みました。 中学時代、村上春樹にはお洒落でクリアな視界にさせてくれる清涼剤のようななイメージ

        • 「お笑い」におけるメタ表現

          はじめに 今回は大好きなお笑いについてです。 古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、「芸術(技術)は自然を模倣する」という言葉を残し、その言葉は現代においても広く知られています。 これは言い換えれば、芸術と呼ばれるものは何かしらの擬態であって真実ではないということでもあります。 この模倣(ミメーシス)は、例えば絵画ならば画布に塗りつけられた顔料を風景や人物に偽装することとなり、演劇では、俳優はその名前や生い立ち、職業を擬装します。 しかし芸術は、その擬態が完璧なもの

        華厳経における時間観

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        • 読書記録
          5本

        記事

          遠藤周作③—人生を振り返って

          はじめに 今回はまた遠藤周作を起点として、我々は既に起こったことについてどのように捉えるかを考えたいと思います。 ジャン=ポール・サルトルの『嘔吐』という本に、「生きること」と「物語ること」の違いが書かれています。 その違いとは、生きることは無意味な日々が単純な足し算のように積み重なっていくだけだが、物語はまず結末を用意され、生がそれに向かって進むための布石を用意されている、ということです。 この文章からも小説という芸術のジャンルは、決まってしまった現実、過去の捉え方の

          遠藤周作③—人生を振り返って

          ガバナーズ・アイランド

          はじめに 1週間休んでしまいました。自分で課した制限でも破ってしまうと少し心苦しいですね。 先週何をしていたのかというと、5日ほどアメリカのニューヨークに家族旅行をしていました。受験、そしてコロナ禍で何年ぶりになるか分からない海外旅行で、気候も良く、忙しいながらも楽しい観光でした。 メトロポリタン美術館、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館、MOMA を駆け足で巡る美術尽くしの旅行の中でも、私が1番印象に残った場所をご紹介しようと思います。ガバナーズ島です。 ガバナーズ島とは

          ガバナーズ・アイランド

          鉱石ラジオ① —はじめのゲルマニウムラジオ

          はじめに 今回は、私が制作したゲルマニウムラジオについて書こうと思います。 夏休み前に大学の図書室で電子工作の本を漁っていると、本の中に「近年鉱石ラジオ制作の再ブームが到来している」などと書いてありました。 「鉱石ラジオ」。見慣れない単語でしたが、電子工作と絵画の原料としての鉱物、音(振動)に興味を持っている私にとってこの上なく魅力的なものに思われました。 そして「再ブーム」と言われるだけあって、私の親世代には馴染み深い工作であったようです。なんでも、電池や電力供給な

          鉱石ラジオ① —はじめのゲルマニウムラジオ

          遠藤周作②—死について

          はじめに 今回は、作家・遠藤周作が死をどのように捉えたかを考察します。 この世を生きている我々は、死に対して等しく無知な存在ではありますが、死について考えることとは、生について考えることと同意義ではないでしょうか。そう考えれば、死を考えるのに早すぎる年齢というのはありません。 今回は小説は取り上げず、『死について考える』というエッセイ本に依るところが多くありますが、この本はキリスト教のみならず様々な考えに触れて書かれており、平易で読みやすい文章で書かれているためおすす

          遠藤周作②—死について

          遠藤周作① —遠藤周作のキリストと悪魔—

          はじめに今回は私が中学生の頃から大好きで、ヘルマン・ヘッセとともに私の精神を支える柱である作家の遠藤周作についてです。彼の一冊の本について書こうとすると終わりが見えなくなりそうなので、テーマを定めて横断的に何冊かの本について書こうと思います。  第1回目は、遠藤周作のキリスト教観の根底に関わる「キリスト」と「悪魔」の描き方について考えました。あくまで、広い意味を持つ「神」ではなく、人間として生きたイエスにについてです。 作品は主に『キリストの誕生』『白い人』『深い河』を取り

          遠藤周作① —遠藤周作のキリストと悪魔—

          「もの派」とメディア・アート(『メディアの現在』を読んで)

          はじめに 現在私は美術大学生でちょうど夏休みに入ったところですが、前期は実技と毎週出さなくてはいけない学科のミニ・レポートに追われている間にあっという間に過ぎていきました。 その時に思ったことですが、自分の思考をギリギリ人に見せられるような文章に整えて例え納得いかなくても期限までに提出するというレポートの作業は、自分のその時々の思考を整理するのに案外役に立つのです。 レポートと書くという行為は明らかに他者から強制されたものなので、インドの神秘家oshoなら「アクション」では

          「もの派」とメディア・アート(『メディアの現在』を読んで)