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中国人の思想の本質を理解し、私利をおいて国益に徹しなければ新型コロナウイルス後の激変する世界ではどの国も生き残れない。いわんや憲法改正もいまだならず、軍事力で劣る日本の未来は不安である。

中国人の思想の本質を理解し、私利をおいて国益に徹しなければ新型コロナウイルス後の激変する世界ではどの国も生き残れない
2020年08月03日
以下は今日の産経新聞に、李登輝氏の愛に応えよ、と題して掲載された、櫻井よしこさんの連載コラムからである。
櫻井よしこさんは最澄が定義した「国宝」である。
台湾の李登輝元総統はいつも、日本へのあたたかいまなざしと日本人への慈しみを率直に表現した。
お会いすると大きな掌でこちらの手を包み込むようにして中へと導き、青年のように張りのある声で語るのだった。 
西田幾多郎の『善の研究』をはじめ青年時代に貪り読んだ内村鑑三、新渡戸稲造などの名著に根差した人間愛と哲学を説き始めると、時のたつのも忘れた。
台湾人の直面する中国問題を語るとき、傍らで静かに聞き入る曽文恵夫人も言うのだった。  
「二・二八事件など、台湾人は本当にひどい体験をしました。そうした歴史の真実さえ教えてもらえなかった台湾の人がかわいそうでなりません」 
だからこそ李登輝は国民党の枠を破り台湾人総統として中国に対峙した。
確固たる姿勢は西田ら先人が説いた人間社会のあるべき理想によっても支えられていたと思う。  
「22歳まで日本人だった」と度々語った李登輝氏は海外首脳とは思えないほどのあたたかい愛を日本国に注いだが、敗戦後、日本は時として台湾を失望させた。
その典型がニクソン訪中電撃発表の余波の中、台湾と断交したことだ。
震源の米国が台湾関係法を作ったのに、である。
李登輝氏が振り返っている。 
「台湾を失ってはならないという米国人の考えは強く、これは『地縁政治』(ジオポリティクス)上の問題だった。(中略)米国人の頭脳は比較的はっきりしていた」、他方「日本は米国のように考えることができなかった」「惜しいことに、日本の政治家には武士道の精神が欠けていた」 
(中嶋嶺雄監訳『李登輝実録』産経新聞出版)。
現在の日米台中関係に照らし合わせても、李登輝氏の言葉は重要な意味を持つ。
中国人の思想の本質を理解し、私利をおいて国益に徹しなければ新型コロナウイルス後の激変する世界ではどの国も生き残れない。
いわんや憲法改正もいまだならず、軍事力で劣る日本の未来は不安である。      
李登輝氏は蒋経国総統に抜擢され1984年から副総統として3年8ヵ月、中国人の統治思想と手法を総統の側で学んだ。
中国人の傑出した能力も彼らの恐ろしさも十分に見た。
その得難い体験から生まれる警告は鋭い。
李登輝氏が99年、台湾と中国は「国と国との関係」だとする「二国論」を唱えたとき、真っ先に批判した米民主党上院のファインスタイン議員に李登輝氏は言った。
ファインスタイン氏の夫は上海でビジネスを展開していた。  
「米国人は中国人を負かすことはできない。あなたたちは政治がどんなものであるかをまだ知らない。あなたたちが政治をするとき中国人はもう仙人になっているだろう」 利を追う日本の経済界こそ肝に銘ずべき指摘である。  
中国の独裁政権は誰が反対しても「徹底的にそれを押さえ込む方法を持っている」と李登輝氏は説く。
中国は数歩進むとすぐに元の位置に復古する。
彼らは「ずっと文化の漬け甕の中にいて、絶えず漬け甕に戻りこれが唯一の活路だと思い込んでいる」からだ(中嶋嶺雄監訳『李登輝実録』産経新聞出版)。
この指摘は第二の毛沢東を夢見る習近平国家主席をいや応なく連想させるではないか。 
李登輝氏は中国人が「復古」に逃げ込むのは彼らに理想がないからで、それ故に中国人は発展しないと強調する。
人類普遍の価値観を基軸にした国造り、万人の幸福を第一にする民主主義体制の構築という理想が彼らには欠落しているということだ。 
元米国務長官のキッシンジャー氏ら世界の論客が中国理解の第一人者と見なしたシンガポールのリー・クアンユー元首相と李登輝氏の間の興味深い論争がある。
中国への向き合い方について、リー・クアンユー氏は「台湾は民族主義を尊重すべきだ」と主張した。
李登輝氏は「民主主義」と「米国への接近」が大事だと主張した。 
米国の国際政治学者、サミユエル・ハンチントン氏は「リー・クアンユーの民族主義は彼の死とともに消え去るが、李登輝の民主主義は彼の死後も台湾の民主主義として存続する」と評した。
その指摘は正しく、台湾の民主主義は結実した形で私たちの眼前にある。 
蔡英文総統と民進党政権は李登輝氏の志を継いで民主主義の台湾、法治の台湾、政府と市民が協調する台湾、台湾人の台湾としての歩みを確実に進めている。
その基礎は紛れもなく李登輝氏が準備したものであろう。 
2015年にご自宅に伺ったとき、李登輝氏はいつものように朗らかな声で言った。
「日本はもっと自信をもってよいのだよ」と。
中国政府にも中国人民にも民主主義の力を見せ、日本の考えをはっきり言うのがよい、と。        
香港問題でも南シナ海問題でも安倍晋三首相は政府を代表して明確に抗議した。
だが、日本はそこにとどまってはならない。
国民の声をすくい上げ、国民の代表として明確な意思表示をするのが国会の役割だ。
ならば自民党はじめ各政党が国会で論じ、抗議し、決議せよということだ。 

立憲民主党などの野党が行っている事は櫻井さんの、まっとうな日本国民として至極当然な提言の正反対である事は衆知の事実。
彼らは武漢ウイルスのみならず尖閣諸島が危機に瀕しているという、この時においてすら安倍首相を国会に呼んで攻撃しようと考えているのである。
こんな、とんでもない態様を批判しようともしないNHKの報道部を支配している人間達や民放の報道部やワイドショー編成者達は、皆、中国の工作下にある人間達、否、中国のエージェントであると言っても全く過言ではない


ポンペオ米国務長官の7月のメッセージは米中の価値観の戦いの深まりを告げている。
李登輝氏が掲げた民主主義か否かの選択である。 
倫理、人道、法治を重視する日本精神を台湾に残したわが国は、いま、同じ価値観の旗を掲げて、日本、台湾、アジア諸国のために、力強く意思表示するときだ。 
その時に問いたい。
私たちは気概を発揮して憲法改正に挑めるか。
日台協力を実質的に強化できるか。
民主主義実現を目指してアジア諸国を代表して発言できるか。 
こうした問いに前向きに答える日本の姿こそ、李登輝氏の日本に対するあふれるほどの愛に応える道であろう。

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