190523デザイン思考_1280_670

私のリーダー論「丸井グループ青井浩社長」を読んで

日本経済新聞2019年2月21日(木)付並びに、2019年2月28日(木)付夕刊 2面 「私のリーダー論」にて、「静かなリーダーシップ」を礎としたビジネスモデル改革により経営危機を脱すると同時に、働き方改革という言葉すらなかった2008年から仕事に対する意識改革を推進されてきた丸井グループ 青井浩社長の連載が掲載されていました。

「働きがい」を問いかける:丸井グループ 青井浩社長(上)

( https://www.nikkei.com/article/DGKKZO41543510R20C19A2EAC000/ )


**「残業嫌い」で仕事観変える:丸井グループ 青井浩社長(下) **

( https://www.nikkei.com/article/DGKKZO41853470Y9A220C1EAC000/ )

以下に、記事の中で私が特に注視した箇所を一部転載します。

ファッションビルやカード事業などを手掛ける丸井グループは国内消費が伸び悩む中、9期連続で営業増益と快進撃を続ける。創業家3代目の青井浩社長は就任後に貸金業法改正やリーマン・ショックが重なり「つぶれそうになった」ことが、会社を大胆に変える契機になったと振り返る。経営危機で発揮された「静かなリーダーシップ」とは。
「赤字の直接の要因は外部環境の変化ですが、それ以前からの内部の問題が相当深刻でした。やたらと組織や人をこねくり回して、それでも苦しいから03年に抜本的な制度改正に踏み切って成果主義を導入したり、販売の社員を別会社に転籍させたりしたのですが、これがもう惨憺(さんたん)たる結果で」
…いつつぶれてもおかしくない、いつ競合から買収されてもおかしくない状態でした」「ところが社内の雰囲気は『ヤング・ファッション・赤いカード』という1980年代の成功体験が忘れられず、これを変えたら丸井じゃなくなる、と変化に対する抵抗がすごく強かった。過去の成功が会社のアイデンティティーになってしまっていたんです」
「全員が丸井グループの社員だということを明確にしました。手紙で伝えたかったのは制度うんぬんより、社員一人ひとりの人生の問題だということです。働くってどういうことか、職場って我々にとって何なのか。原点に立ち返って、変化していく力が丸井グループのアイデンティティーなんだと粘り強く話をしました」
「共創っていうのは要するに、対話するということです。その相手は社員もあるし、株主もあるし、大きく言うと社会もある。対話をすることで対立を乗り越えて、お互いの幸せや利益の重なりが大きくなってくる。これが企業価値だというのが我々の定義です」
…腰を据えて王道を行くしかないということを学びました。ビジネスモデルが陳腐化しているのなら小手先の手段に頼るのではなく、もう一度、時代やお客様に向き合う。自分たちの頭で原点から考えて作っていく。時間はかかりますが、それしかないのだと」
「私利私欲のない判断を下せる人だと思います。経営者はわがままというイメージもあるかもしれませんが、日本人は特に同調圧力が強くて、和を重んじるじゃないですか。だから正しいことよりも皆が喜ぶことや安心できることを選びがちですが、リーダーや経営者はそれを判断基準にしてはいけないと思います」



丸井グループは2008年と早い段階から残業削減に取り組み、働き方改革の先駆的な企業として知られる。「残業が大嫌い」と公言する青井浩社長は05年に就任以降、仕事に対する意識改革を推進。本業のビジネスモデル改革も同時に進め、収益力の向上へと結び付けた。
「会議と称していたけど、あれは何だったのかな。上司が黙ると部下が下を向いて黙って、いつの間にか1時間たっていたとか。あるとき意識がぼんやりしながら、皆の顔を見渡しているときに、はっと気付いたんです。待てよ、業績が悪いのは、おじさんたちが夜な夜な残業していることが根本的な原因なんじゃないかと。そのときから残業が嫌いになって、どうにかしないといけないと思い始めました。啓示みたいなものでしたね」
「現場からのボトムアップで進めたというのもありますが、もう一つ、私は残業がとにかく大嫌いなんです。残業が好きな社長だと、何となくにじみでてしまうのではないでしょうか。私は夜には会議を入れられても、勝手に帰っちゃいます(笑)」
「まず時間で働くという意識を変えないと、価値を創造していくという仕事ができないんですよね。自分の労働力を時間で売っているような受動的な仕事観を持つ人の集まりではうまくいかない。そういう仕事観を変えるために、まず残業を減らしたのです」
「仕事というのは時間で評価されるべきものではなく、アウトプットによって評価されるべきもの。そのように意識を転換していくための最低限の必要条件が残業削減でした」「中堅やベテラン社員だと入社以来、残業が当たり前で働いてきているのでマヒしてしまって、残業代が実質、生活給になっている。これを崩すと生活水準が下がるので、そこを納得してもらうのが最も大変で、時間がかかりましたね」
「立候補制は自分がリーダー職へ昇格したいと思うタイミングで、リーダー研修や昇格試験を受けたいと手を挙げられるキャリア支援制度です。もう一つ、人材育成の柱にグループ間の職種変更異動があります。かつては配属が決まるとずっと同じ部署で、異動が少なかった。それも狭くて、丸井の中の婦人服にずっといるとか」「その結果、硬直的なマインドでイノベーションが起きにくい組織になっていました。5年前から異動を増やし、これまでにグループ社員6000人のうち約半分が異動しました」


昨年2018年12月11日(火)一橋大学大学院フィンテック研究フォーラムに参加させて頂いた際に、青井浩さんのお話を会場にて拝聴させて頂きました。青井さんが直面された苦境が、それまでは小売業でのビジネスモデルによる限界費用内の限界利益を求めていた戦略から、限界費用を超える不動産業やフィンテック業へとビジネスモデルを業態転換するという決断に繋がり、新たに安定した利益の源泉を手にするに至ったのだと実感しました。

画像1

僭越ながら、私は当日、青井さんに次の2つの質問をさせて頂きました。

Q. 常識を破る際に、イノベーションのジレンマは発生しなかったのですか?何がジレンマでしたか?Q. 信用の共創に不可欠な要素とは何ですか?

画像2

青井さんは、真摯にご返答下さいました。

Q. 常識を破る際に、イノベーションのジレンマは発生しなかったのですか?何がジレンマでしたか?A. ジレンマは、これまでの成功体験(ヤング・ファッション・赤いカードなど)。
Q. 信用の共創に不可欠な要素とは何ですか?A. 信用の共創に必要なものは、「プライドは維持しつつプロとしてのエゴをどこまで捨て去りお客様の立場に立つか!」

青井さんありがとうございました。

「 共創 = 対話 」。共創に不可欠な対話というアクションは、私自身に不足しがちな要素の一つでありますので、「 Have relations 」を意識した「対話」を怠らないようにしたいと思います。



「六国を滅す者六国なり、秦にあらざるなり」といっている。幕府を滅ぼしたるは幕府の外なかった。大風が吹いても強い木は倒れぬ。(渋沢栄一著「論語と算盤」より)
MissionWhy do we exist? 何のために存在するのか?VisionWhat kind of future do we want to create? どのような未来を創造したいのか?**Value **What values and beliefs do we hold dear?  どのような価値観や思いを大切にしているのか?

2018年10月29日付 「茂木健一郎さんに聞く 人生100年時代の備えを読んで」

( https://ameblo.jp/naka-yan/entry-12415195593.html )



※こちらは2019年3月10日(火)のnakayanさんの連続ツイートを読みやすいように補足・修正を加え再編集したものです。


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさんJDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp

記事:MBAデザイナーnakayanさんのアメブロ 2019年3月10日付


頂いたサポートは、書籍化に向けての応援メッセージとして受け取らせていただき、準備資金等に使用させていただきます。