見出し画像

手放しで喜べない世の中だけど、スコッチエッグがおいしくできた。

何から話していいかわからないけど。
季節性の、たとえば陽射しや気圧のせいだけじゃなく、気が滅入る毎日じゃないですか?

ここでは食にまつわる自分の身の周りの出来事だけを書くつもりなので詳らかには列挙しないけれど、来る日も来る日も頭を抱えたくなるような報せばかりで、世の中がよくなってゆく実感が全くない毎日ですよね。

当たり障りのないところで、このnoteにも関連することで言うと物価上昇。毎日の食材がどんどん値上げしていって、以前にもまして贅沢な食生活は送れていません。まさか回転寿司やファストフードまでたまのご馳走になってしまうなんて、ねえ。困っちゃいますよね。

それでもささやかな毎日の「おいしいね」を妻と向き合って言い合うために、何とか工夫してしのいでゆくしかないわけで。

挽き肉さえも値上げしてるもんな……。

うちはたぶんもともと倹しい暮らしをしているほうで、買える食材のレパートリーにも限界がある。そんな中で何とかして毎日の食卓をせいぜい華やかに彩ろうと努めてきた。食材のバリエーションが豊富とは言えない分、工夫して一品一品に時間をかけることで何とか変化をつけてきたつもりだ。

そんな日々の食卓に重宝してきた食材のひとつが挽き肉だった。日持ちはしないけれどやっぱり安いし、肉団子やハンバーグなどボリューミーな主菜を作れるのでとても役立つ。

しかしそんな挽き肉でさえ100gあたりで10〜20円前後、じわじわと値上がりしており、陳腐な喩えで言うとまさにボディブローのようにお財布を痛めつけてきている。スーパーの精肉コーナーに立つたび、ため息をついてうなだれるばかり。それでも何とか決心して、夕方の4割引の特売価格で小さな合い挽き肉のパックを買った。

買ったはいいけど二人分のハンバーグを作るのには心許ない132g。ミートソースかキーマカレーか、と悩んでいたら妻が「スコッチエッグにしてみたら?」と提案してくれた。いつもこういうとき妻は僕が発奮するような楽しいアイデアをくれる。すぐさまその案に飛びついた。

ハンバーグの挽き肉と、どう違うの?

子どもの頃にスコッチエッグを食べたことはある。けれども久しく口にしていないし、作るとなるとよくわからないのが、挽き肉にどこまで味付けや下ごしらえをするのか、だ。

すっごく適当に調べると、スコッチエッグは1700年代(遅くとも1786年まで)に英国の有名百貨店「フォートナム&メイソン」が販売されたのが起源であろうという説が有力のよう。ただそれまでにインドネシアに類似したナルギシコフタという料理が存在しており、それを元にしたとも言われる。

いろいろ調べていると基本的にはハンバーグ同様、塩コショウ、ナツメグほかスパイスで味付けをした肉でゆで卵を包み、衣をつけて揚げるものみたいだ。ウスターソースやケチャップを入れるレシピも散見。

何となくいろんなレシピのニュアンスだけ取り入れて、塩コショウ、ナツメグ、ケチャップ、おたふくお好みソースを適宜(目分量で)混ぜることにした。刻んだ玉ねぎは入れないのが主流みたいだけど、入っているほうが好きなので入れた。あとはお麩を一握り砕いてつなぎにし、牛乳でのばしてやわらかいタネにした。

続いて肝心の玉子。

現在は半熟玉子を包むことで黄身をとろーり食感にするのが流行っているみたいだけど、記憶の中のスコッチエッグは中まできっちり火が通ったモサモサの黄身。それに一生懸命半熟玉子にして包んだところで、どうせ揚げるときに中まで煮えちゃうことが懸念されたので、もういっそ普通にハードボイルドにした。

包み方に2つのハック。

あとは挽き肉でゆで卵を包んで、薄力粉、玉子、パン粉の順に衣をつけて揚げる。ここで二つばかりコツがあるらしい。

1)ラップにまんべんなく挽き肉を薄く広げ、そこにゆで卵を乗せて包む。

2)ゆで卵の表面には軽く薄力粉を振って「接着剤」に。

この二つを実直に守って仕込んだおかげで、スコッチエッグ初心者の自分でも驚くほどキレイに包むことができた。揚がったものを包丁で切っても写真の通り、玉子と挽き肉が剥がれない美しい仕上がりに。

細工は流流、仕上げをご覧じろ!

じゃーん! 初めてにしては上出来!

ビギナーズラックの感動。

やったー。上手くできるかどうか不安だったけど、無事揚がった。挽き肉の分量的に3つ作れたので妻と1個半ずつ。

つなぎや玉ねぎも加わってるけど、おそらく一個のスコッチエッグに必要な挽き肉の量はすなわち40〜50g、ということになる。これ覚えておこ。200gあれば4〜5個のスコッチエッグが作れる計算。

先ほど書いたとおり、薄力粉の接着剤のおかげで挽き肉が卵から剥がれることなく美しい断面。かじってみると「うんまっ」と思わず声が出た。揚げたてなのもあるけどしっかり目の下味の甲斐あってそのままでじゅうぶんおいしい。一応、ソースとして「おたふくお好みソース+ケチャップ+塩コショウ」を用意。これをつけて食べるとさらに風味が増す。

何だろう、イギリスで18世紀に生まれたれっきとした英国料理なのに、昭和生まれの我々にとても親しみと懐かしさを感じさせる味わい。たまらん。

節約の精神から挑戦した一品だけど、久しぶりのご対面という感動も相まって、記憶に残る楽しい食卓にすることができた。

だからって今のこの世の中を現状のままでいいと肯んずる気持ちはないし、何とか変えてゆくことはできないかと日々心の片隅をくすぶらせているけれど、でもおいしい食卓をどうにか妻と囲めて、暖かいお布団で眠れることは、それだけで掛け値なしに幸せなのかもしれない。

ごちそうさまでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?