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超短編小説「疲れたマン」

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疲れたマンは地球の平和を守る使者。「疲れた疲れた」が口癖です。
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記事一覧

疲れたマン/9/☆電車

疲れたマン/9/☆電車

その日、疲れたマンは目的地と反対方向の電車に乗っていました。仕事をさぼり、行ったことのない街で降りてみようと思ったのです。窓の外の世界がキラキラと輝いて見えます。駅を五つほど進んだところで、疲れたマンは小さく息をはくと、電車を乗り換え、仕事に向かいました。地球の平和を守るために。
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疲れたマン/8/☆寿命

疲れたマン/8/☆寿命

寿命が来ればいいのに。疲れたマンはときどき、そんなことを考えます。生きていることをつらく感じることが多くなりました。だからって、自分から死ぬことはできません。未練はあるけど、勇気はない。寿命が来ればいいのに。疲れたマンは、そんなことを考えて今日も働きます。地球の平和を守るために。
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疲れたマン/7/☆感情

疲れたマン/7/☆感情

疲れたマンは仕事中、あまり感情を表さなくなりました。仕事の間は心を閉じて、ただただやり過ごします。長いこと地球の平和を守ってきた疲れたマンにとって、仕事に感情は必要ありません。技術と経験でほぼカバーできるものです。疲れたマンは、日々淡々と仕事をこなします。地球の平和を守るために。
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疲れたマン/6/☆夏

疲れたマン/6/☆夏

子どものころ、疲れたマンは夏が大好きでした。父の田舎は海が近く、夏休みになると家族で父の田舎へ遊びに行き、毎日朝から晩まで、海で遊んでいました。今、疲れたマンは夏が嫌いです。春も秋も冬も。。。だって楽しくないから。疲れたマンは一年中、朝から晩まで働きます。地球の平和を守るために。
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疲れたマン/5/☆休日

疲れたマン/5/☆休日

十日ぶりの休日、疲れたマンは彼女と映画を観に行きました。今日は映画を観て、その後、彼女の靴を買いに行く予定です。映画が終わり、スマートフォンの電源を入れると、着信がたくさん入っています。急な案件です。疲れたマンは彼女に断りを入れ、急いで仕事に向かいました。地球の平和を守るために。
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疲れたマン/4/☆青空

疲れたマン/4/☆青空

疲れたマンは下ばかり向いて歩くようになりました。上を向く元気がないのです。ある朝、疲れたマンは玄関を出ると晴れた空を見上げ、ため息をひとつつきました。いつから青い空が嫌いになってしまったのだろう。そんなことを思いながら、疲れたマンは今日も仕事へ向かいます。地球の平和を守るために。
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疲れたマン/3/☆昼食

疲れたマン/3/☆昼食

午前中に仕事をひとつ片づけた疲れたマン。今日はゆっくりと昼食がとれそうです。大好きな鉄板焼きハンバーグを食べようと洋食屋さんに向かいました。注文したところで電話が鳴りました。急な案件です。疲れたマンは小さくため息をつくと、ハンバーグを食べずに店を出ました。地球の平和を守るために。
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疲れたマン/2/☆起床

疲れたマン/2/☆起床

朝、疲れたマンはなかなか布団から出ることができません。仕事に行きたくないのです。そんなとき疲れたマンは「疲れた疲れた。もういやだ」と朝から涙を流し、ギリギリまで布団にくるまりウダウダしています。そして、時間になると疲れたマンは立ち上がり、仕事に向かいます。地球の平和を守るために。
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疲れたマン/1/☆誕生

疲れたマン/1/☆誕生

「疲れた疲れた」が口癖の疲れたマンがいました。疲れたマンは地球の平和を守るのが仕事です。毎日「疲れた疲れた」と言いながら地球の平和を守っています。まだ彼が若かった頃、疲れたマンは希望にあふれる平和の使者でした。毎日続く仕事が彼から喜びを奪い、彼を疲れたマンに変えてしまったのです。
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