家業に就く時の心構えと、就いてからしたこと。

 今回は、アトツギとして家業に戻ってから新ブランドを立ち上げるまでに意識していたことをお話します。

 社長には、新ブランドについても全面的に協力してもらっていて、かなり自由にやりたいことをやらせてもらっています。

 そのような関係を築くまでに何を意識していたか、またどんなことをしてきたかをお伝えすることで、同じような境遇にいるアトツギの方の参考になればと思っています。

家業に就くときに、意識したこと

【両親ではなく上司としてやり取りする。】

 まず最初に、「両親と仕事する」と思わず「社長と専務と仕事をする」と考えるようと思いました。

 小さいことかもしれませんが、両親だと思うと気恥ずかしさなどが勝ってしまい、まじめな話や腹を割った話がしにくくなると思います。少なくとも私はそうでした。

 自分の父や母に、仕事について真剣な話をすることや従業員がいる中で敬語で話すという事は、とても違和感がありました。

 ただ、会社で働くと決めたからにはそうもいってられないので、前職で上司と接する時のように、敬意を持って話すことを心掛けました。

 【何か提案するときは、過去を絶対に否定しない。】

 新卒で東京の大きな会社にいたこともあり、いろんな面で家業にギャップや会社としての至らない所に目に付くだろうと思っていました。

 ただ、父の性格上、いままでやってきたことを否定してしまうと話を聞いてくれないだろうという事も予測できました。父でなくとも、過去何十年と経営してきた会社を自分の子供に頭から否定される事は、相当辛いことだと思います。

 また、「少なくとも倒産していない」ことと、「私自身はこの会社のおかげで育ってこれた」という事実があるわけで、そこに敬意や感謝を感じようと思いました。

 なので、何かを変えた方が良いなと思って社長に提案するときは、絶対に今までのやり方を否定しない事にしていました。

家業に就いてから、したこと。

【まずは、自分に出来る事から全力で。】

 最初にしようと思ったことは、「まず社長と専務から信頼を得る」という事です。自分がしたいことを認めてもらうには、「こいつなら任せてもやりきるだろう」と思ってもらうことが必要だと思っていました。

 なので、社長が「必要だと思っているけど、手が付けられていないこと」の中で、今の自分に出来ることを探しました。

 POSレジの導入や補助金の申請、SNSアカウントの開設やHPの更新など、やらなきゃいけないと思いながらも手が回らなかった事をひとつずつ潰していきました。

 そうすると、事業承継することを意識した既存業務の仕事も「これやってみるか?」と振られるようになりました。

【決算書から、会社の状況を見る。】

 私は、家業に入ってすぐに新ブランドを立ち上げようと思ったわけではありません。

 まずは、決算書から会社の現状を正しく把握することに集中しました。決算書を見たことはほとんどなかったため、理解するのに時間はかかりましたが、初心者向けの本など読みながら会社の現状を理解していきました。

 そのうえで、決算書を良くする案はいくつか出ました。既存事業を伸ばすことや、コストカットのために生産性を上げる取り組みをする、などの手もありました。

 そんな中で社長と相談して現実的だったのが、新ブランドの立ち上げです。決算書を見て、大体必要な売上高と粗利率を考えると不可能ではないという結論に至りました。

 長い目で見るとその他の会社の問題も解決することが出来ると思っていますが、やはり決算書を良くするというメリットがあるからこそ、お金をかけてブランドを成長させていこうと判断することが出来ました。

最後に

【他の会社で働いていて良かった点】 

 私は、新卒で入社した会社を辞めた後、家業の取引先の会社に2年間研修という名目で働いていました。その2社とも、働いていて本当によかったと思っています。

 1点目は、社会人としての基本的なスキルを身につけられたこと。これは主に新卒で入社した会社でのことですが、やはりいきなり家業に入っていたら経験できないレベルの仕事を出来たことは、大きな財産だと思っています。

 2点目は、両親と働くまでに助走期間があったこと。これは2社目の取引先で働いていた時に感じたことです。

 もう数年後に家業に戻ることが決まっていたのですが、もし最初から家業に入っていたら、面と向かって仕事の話をするのは難しかったと思います。

 たまに電話やLINEなどで連絡をする、という段階を踏めたから今の関係を築けたかなと思っています。

 なので、私の場合は違う会社で働いていて本当に良かったと思っています。

 もちろん会社によって状況は違うので、一概に言えない部分も多々あると思いますが、何かの参考になれば幸いです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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