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「実戦共同体としての組織マネジメント勉強会」を創ってから5年

タイトルを見て「ん?」「実践共同体(Community of Practice)じゃないの?」と思われた方。おっしゃる通りです。でも、結果として「実戦(Fight)」だった話。

話は5年前にさかのぼる。

当時の僕は特に仕事という仕事をしていなかった。サラリーマンを辞め、もうサラリーマンはやらないと決めて、一年半が経っていたころだ。

今考えると色々と申し訳なかったが、僕はサラリーマンをやっていたころ、会社組織の中で「歩く刀剣」のように戦い続けていた。

https://www.pinterest.jp/pin/510947520204727217/ から

修羅場を戦ってぼろぼろになりながら、かつ、負けたときには新たな武器を手に入れながら、転んでもタダでは起きなかった。僕はどんどん昇進した。海外の赤字子会社をいったんは建て直しつつ、最終的にはつぶし、上司を退けていき、最後は勝てるはずのない最後の戦いに挑み、予想どおり敗れた。

ドラクエでいうラスボスとか裏ボスとかいうレベルではない、資本主義社会が生み出したゲームのシステムそのものにに敗れたのだ。株式会社では、株を多く持つものには正攻法では勝てない。

体も心もぼろぼろだった僕は、しばらくなりを潜めて休むことにした。食事もろくに取れなかったし、車の運転もまずいな、という感じだった。

そこから僕の新たな闘いが始まる。自分との闘いだ。

数年前に見たTED「20代のときにしておくべきこと」の中に「ゆるやかなつながりを頼る」がある。

http://recommend-ted.blogspot.com/2013/10/20.html?m=1

29歳の僕は、そんなことは知らなかったが、ふと思い出して、サラリーマン時代に仕事で知り合った同い年の方に連絡を取った。その方は転職していたこともあってか、会社の看板がなくなった僕にも親身に接してくれ、しかるべき人を紹介してくれた。それが前に進む始まりだった。

色々な人、言ってしまえば有象無象、魑魅魍魎の人たちとの出会いで、それまで自分がいかに会社という箱にとじ込もっていたかを気付かされた。サラリーマンは家と会社の箱が二つ、ドアも一つ、そんなこと誰が決めたのか。

今ではもう二度と会うこともない様々な人と対話をするなかで、僕はだんだんとあることに思いが至る。

「戦うことに何の意味があったのか? 他に戦い方はなかったのか?」

「若さゆえの過ち (シャア)」だったのだろうか。
僕は、組織について、マネジメントについて、再び勉強を始める。

サラリーマンの頃も勉強はしていたが、読む本はその時の自分にはまりそうなものを選んでいたため、断片的で、自分の中で体系化されていなかった。

会社経営
リーダーシップ
ファシリテーション
コーチング
企業事例
企業会計

こんなところは読んでいたが、組織論については読んだことがなかった。

僕は勉強する以外取り柄がないと思っているので、今までの経験を振り返りながら読み漁った。そして、実践する場はないので読んだ本について会う人に話していくことにした。

そうこうするうちに、会社組織でサラリーマンとしてもがき、悪戦苦闘している人に出会った。自分でかなり外の場にも出られて、勉強され、実践しているが痛い目に遭ってうまく行かないとおっしゃっていた。

その頃、僕はある確信に行き着いていた。

「組織では局地戦も重要だが、まずは全体アプローチこそが最も重要だ」

僕は組織を人間の体に例えるのが好きだ。ある部分に問題が生じているとき、それは短期の治療(局地戦)をやれば解決するのか、あるいはもっと別のところに原因があるのか、考える必要がある。専門医ではなく、統合医的アプローチ。システム思考。

世の中には様々なセミナーや勉強会はあるが、組織での「より良い」戦い方を教えるような実践の場は福岡にはない。組織マネジメント、いや、組織サバイバルには体系的な考え方とアプローチが要る。ないなら、自分で創るしかない。

僕は悪戦苦闘している方に企画を持ちかけ、組織マネジメント勉強会の企画をした。その核となるコンセプトが「実戦的組織マネジメント勉強会=組織サバイバルの実践につなげる箱」だった。

僕は勉強会とかセミナーなんてやったことなかったが、一人でも来てくれればいいと思って色々な人に声をかけてみたところ、興味のある人が7~8人集まってくれた。メンバーは入れ替わりつつ、毎月集まってインプットとアウトプットを繰り返し…そして5年が経過した。

最初に共同企画した方は、勉強会で得た考え方を現場に持ち帰り、それまでとはアプローチを変えた結果、以前よりもうまく行くことが多くなり「この勉強会のおかげです」と言ってくださった。もちろん、勉強会だけではなく、その方が勉強してきたことがうまくからんだのだと思う。

途中から参加した別の方は、会社が事業売却を行った結果、別の会社と合併し、色々なことが折り合わずリストラが持ち上がるなど大混乱の憂き目に遭っていた。

勉強会では本人が把握する限りの状況を聴くが、今何が起きているか、そして、目に見えない所で何が起きる可能性があるかについて、パターン予測を行う。要は、一体自分が今どう考えて、行動すればよいか、冷静になれるということだ。

感情的な判断に走るのではなく、今の立ち位置から一歩引いて組織と現状を見つめ、自分の新たな立ち位置を定める。そこで具体的にどうするかは本人が一番よくわかっている。その方は、徐々に冷静に俯瞰するようになり、周りが濁流に巻き込まれ流されていく中、会社に留まる選択を決断した。新たなステージが待っていて挑戦中だ。

ちなみに、その方の会社に、ある部長が他拠点から就任してきたとき、ある失敗エピソードを聞いた。勉強会では「その部長は短い間に恐らくいなくなるだろう」と予測したが、はたして、一年以内に更迭された。当たるも八卦、当たらぬも八卦。

大企業に勤めていた僕の友達は、この勉強会で「権限委譲」について学び、部下を持ったときにそれを実践したらみんな楽しそうに仕事をするようになった、と言っていた。

勉強会に参加した人がそんな劇的な変化を享受できるわけではないし、一回参加して来なくなった方もたくさんいる。人にはそれぞれスタイルがある。去る者は追わない。

5年が経ち、僕も含めてそれぞれの人にキャリアやプライベートで変化もある中で、この勉強会も節目を迎えている気がしている。また新しくメンバーを募り、一から始めるのもいいなと思っている。

どのようなあり方が良いのか、模索し続けた5年間だった。
僕は、サラリーマンの戦士を育てたかったわけではない。

「戦わずして勝つ」

『孫子の兵法』にある言葉どおり、組織の中で、いかに戦うかではなく、戦う以外の方法で結果として勝てればいいのだ。僕はそれが大事だと思っている。

僕は、経営者レベルの方にも学んでもらいたいと思ってもいるし、実際にご支援先には折に触れて組織マネジメントの考え方を提供し、組織を捉え直していただいている。

多くの人が組織に関わるか、所属するのに、組織のことを学ばないのはもったいない。

一人でも多くの人に学んで良かったと言ってもらえるよう、これからも続けていきたい。

※ トップ写真は、「ダナハー」というアメリカの会社を取り上げたときのテキスト表紙

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