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日本のいちばん長い日[感想,批評,レビュー,あらすじ]

9年ぶりに観返した、第二次世界大戦の終戦間近の日本の様子

 2015年にこの映画を映画館で観たが意味が分からなかった。二時間と少しの映画だがものすごく長く、苦痛だった。しかし今見直してみると、映画内では何が起きているのがわかり、面白かった。ドイツの第二次世界大戦の終わりを描いている「ヒトラー 〜最期の12日間〜」と見比べれば面白いのかもしれない

ポツダム宣言と若い将校たち

 帝国主義を基盤とした教育を受けた若い将校たちは、敗戦を受け入れずクーデターを起こす。映画の後半は主にこのクーデター、つまり宮城事件(きゅうじょうじけん)を描いている
 なぜ無理なクーデターが起こるのか。若い将校は上層部の建前を信じている。戦争に負けたということができない国の先導者たちは、若い軍人には建前で接したわけである。その建前が事件につながったのではないか。建前や日本全体の雰囲気が、戦争継続を願う若い兵隊を増やしたと考えられる
 

板挟みになった阿南惟幾(陸軍大臣)

 阿南惟幾は戦争に負けたと理解しており、ポツダム宣言を受諾する以外手はないと考えている。しかし部下たちには、戦争には負けていないと、事実と矛盾した態度をとる。真剣に本土決戦で勝てると考えている陸軍の若者たちにクーデターを起こさせないためである。演じた役所広司の腹を切るシーンや、部下たちを怒鳴る場面は引き込まれるものがある

戦争を止められない空気

 戦争中は、戦争を止めようと発信することが出来ない空気が作られる。協調や和を重視する日本だから、そんな空気ができてしまうというわけではない。ドイツでも同じように、第二次世界大戦中の銃後の人々は、戦争反対の意見を言うことは許されなかった。戦争によりおかしくなってしまった空気が、戦争を継続させている
 ここでの空気というのは、国全体の雰囲気である。どの組織や集団にも、重んじられる空気というものがあるだろう。それが社会に反するものだったり、誰かを加害するものであれば、その空気を変えられるように、日ごとから物怖じせず発言するのが大切なのではないだろうか

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