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No Hawker, No Life

今日もわくわくして目が覚める。
時間はまだ朝の五時半。


さあ、今朝はどんな美味しいものを食べようか。




シンガポールの朝は、決まって六時半ごろが夜明け。
でもそれから起き出していたのでは、とても間に合わない。
急げ急げと子供達の支度をして超特急で朝ごはんとお弁当を作り、
ついでにパパも起こして朝ごはんを食べている間に、
えいしょっと下の子を抱っこ紐に入れて持ち上げ、私の準備は完了。



快く見送ってくれる二人に行ってきますをして、さあ、出発!
心地よい朝の湿気の中をにこにこしながら歩く。


さーて、と昨日調べておいたルートを最終チェック。
美味しいストール、お店はどんなに早く並んでも早すぎるということはないので、
少しだけ早足でバス停へ急ぐ。
シンガポールに来てからプロ並みに覚えたバスの乗り換え術を駆使し、
普通に暮らしていたのではまず行くことのない、ローカルの方がほとんどの
エリアにある懐かしいホーカー、屋台街へ向かう。


食べることだけ大好きで、東南アジアに住むのが長年の希望だった私にとって、
転勤で住むことになったシンガポールでは、絶対に現地の食事をたくさんたくさん食べようと
行く前から心に決めていた。
暮らし方も、食べ方も、限度はあるとは思うけれど、
なるべくその国の人がするやり方によりそって過ごしたい。
出産という大きな経験をした後だったので、体調には気をつけたけれど、
早くシンガポール中を飛び回って美味しいものを探したい!という気持ちで
いっぱいだった。
その気持ちを知ってか、生まれた下の子は
暑い中過ごしても汗疹もほぼできず、
ローカルフード巡りをする私がいろいろな人と仲良くなるきっかけを作ってくれた。


冷蔵庫ほどにクーラーのきいたバスの中から夜明けを眺める。
ああ、今日も綺麗な朝やけだね、と話しかけつつ、
バス停で降りて、きょろきょろと周りを確認。
お目当てのホーカー、Whampoa marke hawker centerまでは歩いて5分。
その道中には、大好きなローカルベーカリーもあって、
カヤトーストにぴったりのパンが信じられないくらい安く売っている。
ささっとパンを買い、これまた日本では見たことがない
ふわふわ、四角くて六つに分かれているあんぱんも買って、無事に到着!

ここは、どの駅からも遠いけれど、古くからあるHDBと呼ばれる公団住宅の中にある
小さなマーケット併設のホーカーで、
美味しいもの揃いと有名なところ。
シンガポールにきてから目覚めた多様な麺料理の中でも、板麺と呼ばれる
うどんのような麺料理はとりわけ大好きで、50軒ほどは食べ歩いただろうか。
その中でもお気に入りが決まってくると、そこばかりに通いつめて
全メニューを制覇するぞー!と意気込んでいた。
そんなお店の1つ、china whampoa homemade noodles。
何度も書いてはいるけれど、書き尽くせないくらい美味しい、そんなお店。
小麦粉から出来た手打ちの麺を、目の前で希望する幅に切ってくれて、
大豆といりこからとった美味しーい出汁のスープか、
不思議とくせになる甘辛いタレを和え麺のようにして食べる。
いつもどちらにしようか、注文を伝えるぎりぎりまで悩みに悩んで、
えいっと注文し、お知らせブザーをもらう。
人気店なので、待たせないように工夫してくれているのが助かる。


待っている間も、ぶらぶらとマーケットを探索。
ここのおすすめはもやしのお店と奥にある果物屋さん。
こんなに痛みにくいもやしは初めてというくらい新鮮で長持ちするので、
日本から来た母は毎回ここのもやしを使った炒め物をリクエストするくらい。
活気があって、この新鮮な野菜やお肉、お魚からどんな美味しいものが作られるのかと
想像するだけで、なんだかわくわくする。
こんな風景の中にいられて、しあわせだなぁとしみじみ思う。



わー、とうとうブザーが鳴ってくれた!
早足でストールの前にいくと、若夫婦の旦那様のほうが
にこにことサーブしてくれる。
奥様の方がストールの調理場からひょこっと顔を出して、
抱っこ紐の中にいる、下の子に笑いかけてくれる。
それだけで、なんだかここのコミュニティのメンバーになれたような、
不思議とそんな気がして、嬉しくなったのは忘れられない思い出だ。
普通ならなかなか記憶に残してもらえないと思うけれど、
きっと抱っこしているこの子がいてくれるからだろうな、と感謝した。

今日のチョイスは、バンメンのドライ。
麺の種類は、ユーミェンと呼ばれるもちもちの角切り細麺!


人気のあまり10時すぎには売り切れていることもあるので、
出会えると幸せな麺の一つだ。
このストールの売りでもある、手作りのチリソースを混ぜて
豪快に乗せられた大きな海老とひき肉を頬張る。




うわー、美味しい!!
チリの辛味とソースの深い甘味が混ざって
なんともいえない旨味になってる。
箸休めにこちらも絶品の出汁スープを飲んでは
麺にかぶりつく。
うーん、やめられない。
あっという間になくなりそうで、寂しいので少しスピードを緩めよう。
下の方にいけばいくほど、タレがいい具合にしみていて
ますます美味しい。
おまけでつけてもらった違う種類のグリーンチリをかけると、
ますます辛くなってますます美味しい。
うーん、しあわせ。しあわせの味。



そうそう、以前スープバージョンを頼んだ時に
美味しいからなるべく熱々のうちに食べたくて
首を傾げながら(なぜならいつも抱っこ紐で抱っこしていたので・・・)
お椀の中の麺と格闘していたとき、
「言いにくいけど髪がスープに入っちゃってるよ、抱っこしててあげるから
ゆっくり食べなさい」と見知らぬおばさんが抱っこしてくれたっけ(笑)
食べ物に夢中になると、周りが見えなくなっちゃう、
そういう自分の素の部分が久しぶりに出てきたのも、
なんだか面白い経験だった。
そしてそんな私を見ても、誰も笑ったりせず、見守ってくれていた。


美味しかった!
この一言を、帰り際に必ずストールの人に伝えるのを毎回忘れないようにした。
感謝の気持ちを込めて。
こんなに安い値段で、朝から美味しいものを食べさせてくれる
ストールの人たちに敬意を表したかったから。
そうすると、決まって、嬉しそうにしてくれる顔を見られて、私も嬉しくなった。
板麺屋さんのお二人も、にこにこ手を振ってくれて、
とても満足なお腹と心で、ホーカーを後にする。
両手いっぱいの新鮮な野菜とパン、そして赤ちゃんを抱えながら。







自分の力で美味しいものを探しに出かけること、
そしてその場でそれを見知らぬ人たちと分かち合いながら食べること。
少しでも、その国の文化に触れるだけでなく、実感すること。
ローカルフードの食べ歩きがあったからこそ、
心からわくわくして楽しくすごせた三年間は、
今思い出しても、夢のような毎日だったな。
いつか必ず、ここに戻ってこよう。
今はなかなかすぐには行けない場所になっているけれど、でも、
また、必ず!




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