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私がときどき聴きたくなる曲たち(5選)

 私は特定の曲を頻繁に何度も何度も聴くということはしないのですが、それでも気に入っていてときどき聴いている曲がいくつかあります。今回はその中から5曲を選んで簡単に紹介してみることにしました(当初10曲のつもりだったのですが記事が長くなりそうだったので半分になりました)。要するに私のオススメというわけです。もちろん幅広くバランス良く取り上げようなどという考えは一切無く、私の偏った好みが全開となっておりますので、そこのところはご了承下さい。

①F. ショパン:バラード第4番
 言わずと知れた名曲です。ですが実のところ私はこの曲を聴く!というよりこの演奏を聴く!という演奏があります。1839年製らしいプレイエルのまるでシャンパーニュの泡のように溶け広がっていく音と、適切なAndante(淀みなく進む)のテンポが、この曲が本来持っている軽やかさや伸びやかさという魅力を教えてくれます。

②F. ショパン:チェロソナタ
 ショパンの生前出版された中では最後の作品です。特に第3楽章Largoの旋律は誰が聴いても美しいと思うことでしょう。しかし残念ながらあれだけ日本で注目を集める「ショパンコンクール」では絶対に聴くことができない作品です(あのコンクールはピアノのソリストのためのものですから)。私の勝手な妄想ですが、この作品からは作曲家として新たな境地に向かおうとする彼の意欲を感じます。第1楽章がかなり長いのですが、第3楽章だけでも聴いてみてほしいです(下掲の動画では22:45〜)。

③オルランド・ディ・ラッソ:Matona mia cara
 オルランド・ディ・ラッソ(1532-1596)は後期ルネサンスの作曲家。この作品は短い世俗的な合唱曲です。matonaというのはmadonnaが訛ったものとされ、外国人の男がちょっとぎこちないイタリア語でどこぞの奥様を窓辺から口説くという内容になっています。21世紀の私たちにもキャッチーで親しみやすいメロディーで、リズムのノリが楽しいです。たびたび挿入される「ドンドンドン・ディリディリ…」というオノマトペもコミカル。ただしインターネットに転がっている詞の日本語訳はほとんどが最終盤の部分を正しく訳していないので、内容が知りたければ英訳を見た方が良いでしょう(まあ正しい訳の方がお下品なのですが…笑)。

④L. v. ベートーヴェン:交響曲第8番
 ベートーヴェンの九つの交響曲の中で(平均的な演奏時間が)最も短い作品であり、私が最も好きな作品でもあります。第9番に代表されるような彼の「大作」にありがちな「これでもか!」と言わんばかりの執拗なまでな壮大さとは遠い場所に位置している作品です。全体として簡潔でウィットに富んでいるところを私は愛します。遅いテンポの楽章は一つもないというのも特徴です。

⑤M. モシュコフスキ:ピアノ協奏曲(第2番)
 モーリツ(マウリツィ)・モシュコフスキ(1854-1925)は現ポーランド・ヴロスワフ出身のピアニスト・作曲家・指揮者。多くのピアノ学習者から「ショパンもどきの練習曲の作曲家」程度のイメージを持たれているかもしれませんが、それはあまりに過小評価です。このピアノ協奏曲は全曲を通じて気品とロマンに溢れた傑作と言えます。盛大なネタバレなのですが、第1楽章の厳かな冒頭部分は最終楽章のラストで高揚の果てに「凱旋」します。そこで私たち聴き手は、この曲が見せてくれた雄大な旅の道のりを噛み締めることができるのです。


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