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【詩など】苦しみの産物

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人を喰う詩らしいので、閲覧注意です
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【詩】有無

【詩】有無

よく見るとその目玉には無数のヒビがあり
表面の厚い鱗の様なものが剥がれかかっている
瞬きなんてものは恐らく
一時も逃さず凝視し続けるという
そいつのレゾンデートルの中で
永いこと封印されていた無駄な術なのだろう

しかしその目は衰えてなどいない
彼女が決して幸福などという
虚ろな道に迷い込まぬよう
片時も目を離さない
彼女が己の罪を忘れ
人になれると思い違いをした時には
如何なる倫理も内臓から少し

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【詩】逆転

【詩】逆転

なぜなのかわかる白は
安寧とは程遠く
わからなくて怯え続ける黒は
疑いもなく永遠に終わらない

可視化された不自由は
形を変えても消えることなく
這い蹲る影なき影に
巨大な隻手が蓋をする

金属の音が鳴り止まない
気づけば白も近いのに
黒に陣取られた目が覚醒し
まだここに居続けたいらしい

浸透していく熱い不安に
焦がれるのは先か後か
本当は幸せになりたいなどと
無様に喚くのはいつかの白で
鮮明な

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【詩】白い脳が破裂して

【詩】白い脳が破裂して

思考と感情の繊維の束
暴れて 乱れて
のたうち回り
複雑に 絡まり 解けない
焦りに震え 白い脳で
救いを求めるのは最悪手
もっと絡まって ぐちゃぐちゃに
ぐちゃぐちゃに ぐちゃぐちゃに
もうこの手で千切るしかないじゃないか!

他人の悪意は その存在を
計り知ることはできなくて
この手で生み出し この心臓が
無限に増大させてゆく
ぎり ぎり ぎり ぎり
悪意が軋む音がする
いつしか それに追い込

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【詩】奴

【詩】奴

ざらついた舌で脳を舐めるような唸り声
「如何なる時もお前と共に」

私の中にそいつは棲みつき
決して逃れられないその手は
粘液に塗れていて
強かに肉に食い込む骨の枝
引き千切られるのは
私の誰か

【詩】侵蝕

【詩】侵蝕

口から化け物が出てきそうで
喉を絞って飲み込んでいる
飲み込んでも腹の中で
そいつは暴れ続けている
内から蝕まれ中はがらんどう
がらんどうの中に私の欠片が落ちている

どうすれば
他人を穢さず侵されず
この毒を咀嚼できるだろう

寄り添いたくても牙を仕舞えず
卑屈に身を震わせて
それでも蔑む輩には
微塵も媚びず容赦はしない

悲しい悲しい悲しい悲しい
孤独はとても辛いのに
喰い荒らされて喰い荒らし

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【詩】隠れ洞

【詩】隠れ洞

自分の腹を引き裂いて
不安の虫をばら撒きたい
その虫は醜く這って
これ以上はもうやめよう

なんて汚く穢い生き物だろう
何処にも誰にも
受け入れられることも無く
まともを装わなくてはならない
できるのか? お前に

腐りかけたら身を隠し
ひとりでどう耐えればいいのか
絶えればいいのか
頼ってはいけないのに
拠り所を探し
差し出されたその手も
虚偽の舟に見えてならない

頼ってはいけないのに
破壊さ

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