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「半・分解展」に行ってきた/展示におけるエモさの重要性

長谷川彰良さん主催の「半・分解展」に行って来ました。

「半・分解展」は古い洋服を半分解体して、パターンを研究している展示です。

パターンを分析し、そのパターンのサイズ展開をしたレプリカを着ることが出来るという、パタンナーとしては興味深い展示でした。

古い洋服は展覧会で見ることはありますが、分解したものを見るというのは初めてです。

分解して展示出来るのは、長谷川さんが自費で購入しているからです。

その熱意は頭が下がる想いです。

今回は100年前の洋服を中心に展示していました。

今のジャケットのパターンとはかなり異なる形状のパターンを沢山観ることが出来、とても興味深かったです。

まず、古いフランスの消防士の制服がありました。

今のメンズスーツとは大きく異なる、なで肩、鳩胸の反身体型のような形でした。

背幅は狭いのですが、その分袖が太く、袖で運動量を確保しているようでした。

レプリカのジャケットを着てみると大変動きやすかったのです。

まずカマ底(脇の下の袖付け位置)が高く袖もかなり前振りになっているからでしょうか。

オーダーと既製服という差もあるかもしれません。

既製服はある程度の体型差をカバーするためにどうしてもカマ底が下がり、袖もあらゆる動きに対応出来るようにしますからね。

それにしても面白いと思ったのは100年前の男性の体型です。

女性はコルセットをしているので、かなり現代の女性とは骨格が違うのですが、男性も違ったのだなぁと思いました。

なで肩、鳩胸、反身体は昔の女性の体型にも言えることですが、男性も同じようにそれが理想とされていたのは面白いです。

なので、レプリカのジャケットを着ると、厚手のニットを着ていたせいもあってか、私の体型にピッタリしたのです。

今の私達が思う、肩幅があり、逆三角形の“男らしい”体型というのは、ここ何十年のことなのだなぁと思いました。

そもそも昔の人は今の私達よりずっと身体も小さかったようですし。

男らしさの変遷も、女らしさと同じく変化していることが垣間見れた気がして良かったです。

それにしても「半・分解展」は普通の展示とはちょっと違いました。

会場にもいらっしゃいましたが、長谷川さんの体験や感情を存分にぶつけたものでした。

もっと機械的に洞察したクールな展示かと思っていたので、些か私は驚きました。

長谷川さんという方の闘志にも近い情熱、古い服と出会った感動、震えのようなものが展示のベースにありました。

めちゃくちゃエモかったのです。

なるほど、この「半・解体展」というのは、古い服を解体したものを実証的に観るという側面と、長谷川さんの服との出会い、購入などのプロセスや、解体しているときの熱っぽさや感情を追体験するような展示のされ方でした。

なるほど、「半・解体展」が支持されているのはここか、と思いました。

長谷川さんの印象としては、かなりドSな印象でした(笑)。

茨城出身ということで、失礼な言い方をしてしまうと、若い頃はあまりファッションの情報を得るのには大変な地域ではなかったかと思うのですが、そこから出て、ここまでの展示をする情熱が、少しドSな印象を与えるのかなぁと思ったりもしました。

とにかく、特に男性には魅力的であろうと思いました。

公共的な展示じゃないのだから、こういう主催の人間のエモさが存分に伝わる展示というのは、ともすると楽屋オチのように内輪にしか向かわない危なっかしさもありますが、これからの展示には重要なキーワードになるように思いました。

そういう部分でも大変勉強になる展示でした。

さて、レタルの展示も考えないとですね。

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