ADHDとか。〜その11 教員業のこと〜

ADHDの身であるが、なんと私は通信制高校の非常勤講師をやっている。

教えている科目は美術である。

子どもの頃から絵を描くのが好きで、ファッションデザイナーになりたかったけど、高校の時点で専門学校にそのまま行くのは、なんか違う気がして、もっと大きく美術を学びたいと思っていた。

出身の北海道では一番美術が学べるのは教育大だったので、特に教育に全く興味もなく、北海道教育大学函館校に行ってしまった。

出身の札幌ではなく、函館を選んだのは、実家を出たい気持ちがあったのと、美術の予備校に通うものの、予備校が辛過ぎて不登校状態になっていたので、予備校の人に会わないよう、札幌校を避けたのだった。

私はそんな風に嫌なことを避け、流れて生きてるところがある。

その当時はゼロ免課程という、教員免許を取らずとも卒業が出来る課程があり、私はそこに行ったものの、みんな教員免許を取っているし、教育大行って取らないのもなぁと思って、高校の免許のみ取得した。

今思うと中学も取れば良かったと思うけど、当時の私にそれをさせるのは不可能だったと思う(当時もなかなか精神を病んでいた)。

高校の教育実習ですらレポートの量の多さに最後担当の先生に泣きついた記憶がある。

うちの大学は実習1日につき、レポート4ページくらい書かされて、当時は毎日寝不足になりながら、実家で泣きながらやっていた。

教育実習は特に思い出もなく、せいぜい美術部のちょっと内気な女の子と仲良くなったくらいだ。

まわりの友人は教育大に来るくらいなので、教員や公務員を目指していたけど、私自身は教員になろうなんて当時はサラサラ思ったことはなかった。

教育大では発達障害の授業(必修だった)もあったので、私はADHDのことを実は結構昔から知っていた。

しかし、当時の自分はまさか授業で習ってる障害の当事者だとは全く思っていなかったのだが…。

非常勤講師は2年前から始めた。

これもまたフリーランスになったので、そういや教員免許も持っているんだし、自分に箔でも付けたいな、教えるって経費かからないし、という軽い気持ちだった。

そんなに高校の美術教員の募集は少ないのだけど、ある時通信制高校の採用が目に入った。

ちょっと面白そうな学校だし、こんな学校なら私みたいなのを採用してくれるかもしれないと受けてみたら、採用されてしまった。

その学校は様々なカリキュラムがあるのだけど、私がフリーでパタンナーという仕事をしていたのが良かったようだ。

今はだいぶ先生と呼ばれることにも慣れたけど、初めの頃は本当に慣れなかった。

通信制高校は独特で、生徒は普段動画を観て勉強しているのだが、年に決められた単位数はスクーリングと呼ばれる学校に行く日がある。

私はその時の美術の担当である。

生徒とは一期一会、代わる代わる生徒が代わり、私のその時の数時間の授業が彼等の高校時代の実際受けた唯一の美術の授業となる。

基本的に授業内容は変えないのだけど、毎度生徒も全然違うし、この先のことを考えると結構緊張感がある。

通信制高校は仕事が不定期だし、上半期はほぼ仕事がないので、厄介といえば厄介だけど、でも、やっていて良かったなぁと思う。

通信制高校は生徒の質が多岐に渡るので苦労はするのだけど、どの生徒も何かしら抱えている生徒なのはよくわかる。

私より年齢が上の生徒もいるし、全く何一つ課題をやってくれない生徒もいる。

逆にずっと話しかけてきたり、しつこく課題を見せてくる生徒もいる。

授業中に具合が悪くなる生徒もいるし、そもそも出席を取っても、2割近くの生徒は欠席する。

中には発達障害や学習障害を持つ生徒も多いだろうと思う。

全く一筋縄ではいかない。

そして、どの生徒も多かれ少なかれ、学校や教師というものに抵抗感を感じている。

私は授業の最初に自分の本職のパタンナーの話をし、実際の仕事のCADの画面をスライドに写して見せたりする。

あけすけに「普段はフリーランスで仕事をしているけど、自分に箔をつけたくて教員をやっている」とも言っている。

生徒の中には「すごい…」と言う子もいるし、まぁそうじゃない子もいる。

反発してくる子も勿論いる。

私はわりと厳しい教師だと思う。

私は長い間学校という場から離れていたので、学校というもののしきたりを忘れているし、それでいいと思っている。

社会人の私が採用されているのだし、社会のルールで話した方がいいだろうとも思っている。

例えば出席は、通信制高校では一番重要なのだけど、生徒にはまず「返事をするか、手を大きく上げなさい」と言っている。

生徒の中には声を出すのが苦手な子もいるからだ。

そして「出欠を取っているときに私語がうるさい生徒は欠席扱いにする」と言っている。

これを言うと結構ビビる(笑)。

あまりにうるさいクラスのときに「君達はたかだか出欠取ってる1、2分も口を閉じられないのか?中には大きな声で返事が出来ない生徒だっているんだよ?」とキレたことがある。

そうしたら次の時間から見事に出欠を取るときだけ静かだった(笑)。

彼等は教師というのをよく見ていて、理不尽なことや、ルールだからみたいなことを言っても通用しない。

そもそも私もそういう生徒だったから、なんとなくそこは理解している。

矛盾があることを言えばすかさず突っ込まれるし、生徒とはいつもサシでやり合っている気分になる。

授業をやるときに心掛けていることは、いかに生徒のパフォーマンスを上げてあげられるかということを考えている。

通信制高校の生徒は、普通校の生徒よりも集中力がない。

ある意味自分を見ているようで、自分の当事者研究にもなるし、私は一応人を使う立場でもあるので、人を動かすマネージメント能力の訓練にもなるし、プレゼンの練習にもなる。

どうやれば集中するか、寝ないように出来るか。

生徒が集中し、パフォーマンスを上げさせられたら授業としては成功だと思うし、彼等への評価は絵が上手いことは重要ではなく、いかにその時間に集中し、出来る感覚を掴んだかだと思っている。

課題はまだまだあるけれど、美術史の話などは、生徒によっては目をキラキラさせている子もいる。

終わったあとに質問する生徒も最近は増えてきて良い傾向かな?とも思う。

ただ、ちょっと私の授業は難しい可能性があるので、そこはもう少し考えていかないとなと思っている。

学校にはADHDをカムアウトしていない。

すべきか悩むときもあるし、それで仕事が来なくなるとなー…とも思い、悩ましいところだ。

ただ、生徒に私がADHDであることを言ってあげられたらいいのかな?と思う瞬間もある。

同じような障害を持つ生徒が、こんな私だけど、「やっていけてる人もいるんだ!」って思ってもらえたらいいなと思うのだけど。

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