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今月の短歌

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月に一度、わたしが想うその月の雰囲気に因んで現代短歌をひっそりと。
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短歌集/長月 「フラペチーノとラテ」

短歌集/長月 「フラペチーノとラテ」

いたはずの貴方はいない風が吹く
夢のおわりは季節のはじまり

半袖じゃそろそろ寒いねその声と
掛かる温もり待っていたのよ

「焼けたね!」と口の中では百回目
とどけと願う広い背中に

ほんのりと頬染め見上げる横顔に
ゆらり滲んで月は溶けゆく

赤茶色地味でしずかな吾亦紅
粋だと思う年齢になったわ

黄緑の宝石一粒おいくらかしら
瑞々しい香初秋の便り

白よりもキャメル赤よりもボルドー
身支度が変わ

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短歌集/葉月 「日差しつらぬく」

短歌集/葉月 「日差しつらぬく」

弧を描く とうめいな水 涼しげな
七色になる 魔法のように

雨続き 願った晴れ間 手の中に
あなたを誘う 理由ができた

べとべとに 愛の香りを 漂わせ
やわらかな肌に がぶりと歯形

天高く 蒼空に消ゆ 振り向けば
トランペットは 君へのエール

なにしてる 五文字の調べ 11時
まずはパジャマを 着替える予定

ねぇ見てよ これはフランス これはチリ
愛しい背中 世界は広い

日焼け止め 日

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短歌集/文月 「木陰、まなざし」

短歌集/文月 「木陰、まなざし」

「 まなざし 」
逃がさない 彼の黒目が 語ってる
滴る汗と 速まる鼓動

「 隠した紫 」
べっとして 見せた青色 まぶしくて
わたしは紫 見せられないけど

「 遠い 」
お祭りも 浴衣も花火も 海だって
次会うときには 過ぎたことなの

「 コンビニ 」
用もなく 携帯片手に 彷徨った
あなたが来てる ような気がして

「 木陰 」
降り注ぐ 強さにわたしは 耐えきれず
木陰を求めた それだ

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短歌集/水無月  「降る日のこと」

短歌集/水無月  「降る日のこと」

「 うしろ 」
あまおとが ちかづいてくる 容赦なく
隠しきれない 嘘がつけない

「 あの花 」
かえりみち 右を曲がると あかむらさき
左に逸れる こころが揺れる

「 熱帯夜 」
しってたの ほんとはちがう 雨のよる
あの日はぼうっと うなされてたの

「 かき消す 」
ねえきいて わざとちいさく 声にする
振り向くと吉 傘の行方は

「 ひらいて、とじて 」
きみがいて あのまぶしさも つ

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