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ナチ捕虜収容施設の極秘任務と人類月面着陸を導いてアメリカの英雄になったドイツ人科学者の話

アカデミー賞のショートリストから映画「P.O. Box 1142: 知られざるナチ捕虜収容施設 / Camp Confidential: America's Secret Nazis 」を見た。

迫害を受けてドイツから命からがら米国に逃れたユダヤ人が、従軍して就いたのがナチ捕虜の尋問という極秘任務だった話。


諜報活動の一環だったが、しかし戦争が終わると事態は一変する。ソ連との冷戦を見越して、ドイツの技術力を押さえるために、軍事戦力の中枢を担ったドイツ人科学者を秘密裏に入国させ、アメリカの戦力にする任務にすり替わったのだった。連合国側に多大なる犠牲をもたらしたV2ロケットの生みの親であるヴェルナー・フォン・ブラウンも、ドイツから来た科学者のひとりだった。

抑えがたい憤りを押し殺しながら、ユダヤ人兵士は信頼を勝ち得るためにナチ捕虜たちとテニスに興じ、デパートへの買い物に付き添い、もてなしたのだった。そんなドイツ人科学者たちは結局戦争犯罪を問われることなく、むしろ米国市民として幅広い機会が与えられる。

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その後ドイツ人科学者らはNASAでロケット開発に携わり、フォン・ブラウンはマーシャル宇宙飛行センターの初代長官となった。そして人類を月に送り込むアポロ計画でロケット開発を導いて、ついにはアメリカの英雄として讃えられるようになったのだった。


本作はこの極秘任務に就いていた生存者2名の証言をアニメーションと組み合わせて展開する短編ドキュメンタリー。科学的な偉業を前に、過去の悪事をなかったことにはできないという、生存者の苦悩に満ちた表情が印象的である。


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140文字の文章ばかり書いていると長い文章を書くのが実に億劫で、どうもまとめる力が衰えてきた気がしてなりません。日々のことはTwitterの方に書いてますので、よろしければ→@hideaki