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【映画ベスト10】2021年新作映画ベスト10
2021年に公開され、映画館で鑑賞した映画から渾身の力をこめて選出し、自信を持ってお勧めするベスト10です。
1.ドライブ・マイ・カー(Drive My Car 濱口竜介/2021)
ドライブすることと演じることが等価なものとなって車内空間が演劇空間に接続し、車内の座席を巡る的確な切り返しショットが男と女と車によって成立するこの物語をドライブさせ、私たちはアクターたちの間に立ち上がる奇跡を目撃
【映画ベスト10】2020年新作映画ベスト10
2020年に公開され、映画館で鑑賞した映画から渾身の力をこめて選出し、自信を持ってお勧めするベスト10です。
1.フォードvsフェラーリ (Ford v. Ferrari ジェームズ・マンゴールド/2019)
これは「フォードvsフェラーリ」ではない、「個人vs組織」の闘いだ。捕獲しようとする資本に対してそれを突破しようとするアソシエイトした諸個人の力能。多用されるクローズアップとローアング
【映画100選 超ショートレビュー 第17回】飢餓海峡(1965)
冒頭の汽車の中での男たちのショットのような、ざらざらとした硬質な画面を埋めつくすクローズドフレームが多用され、この映画に内容と形式の両面において濃密な時間を与えている。
左幸子の手のひらに刺さった三國連太郎の爪の切れ端は彼女の三国に対する思慕が形象化されたフェティッシュとなり、物語の基軸となる人物を変化させながら10年の年月をスリリングに支配する!
1965年製作/182分/日本
監督:内田
【映画100選 超ショートレビュー 第16回】七人の無頼漢(1956)
砂漠を横移動するキャメラが捉える、ランドルフ・スコットの清々しい佇まいは、この映画の原題に相応しい端正な表情を纏わせ、ヒロインに頬を寄せる別れの挨拶に半端ない熱量のエモーションを焚きつける。
幌馬車の中のスコットとリー・マーヴィンの切り返しのサスペンスは視界を遮るもののない裸の舞台である砂漠の対決において、視線と弾丸の交錯が瞬時に入れ替わる、高速の切り返しとなって回帰する!
1956年製作/
【映画 超ショート時評】アルプススタンドのはしの方
アルプススタンドに居合わせる高校生たちのツーショットが四人のダイアローグへと拡大するにつれ、隠っていた彼らの生のパッションが密かに伝播し、冒頭の肩を叩かれるシーンのシャロウフォーカスがこの映画に投げつけた「諦念」の呪縛から彼らは少しずつ解き放たれていく。
オフスクリーンに向かって声を張り上げ、呼びかける、友愛のアクションがフィールド/スタンドの中心/周縁というポジションを逆転させ、その階層秩序
【映画100選 超ショートレビュー 第15回】椿三十郎(1962)
満開の椿へのショットは緻密なロジックで物語=アクションを動かす浪人にその名を与え、その形象が襲撃の合図=記号となり、クライマックスに小川を流れゆく白い椿へとそのイメージを結晶させていく。
ラストの対決シーン、それまで抑制されていた抜き身の刀のようなギラギラとした感覚がその刹那に血飛沫として噴出する!
1962年製作/96分/日本
監督:黒澤明
日本初公開:1962年1月1日
【映画100選 超ショートレビュー 第14回】座頭市物語(1962)
一部の隙もなく緻密に設計された構図にフィックスとパンショットが交差するキャメラワークが活劇の息吹きを吹き込み、モノクロの画面と相まって、その空間にたちまち異様な殺気を作り出す。
映画史上に残る座頭市(勝新太郎)と平手酒造(天知茂)の対決シーン、背中にもたれかかった平手の消えゆく温もりに惜別の涙を流す座頭市のクローズアップは必見だ!
1962年製作/96分/日本
監督:三隅研次
日本初公開:1
【映画100選 超ショートレビュー 第13回】黒い罠(1958)
時限爆弾を操作する手のクローズアップから縦の構図の望遠ショットを挟んでの横移動の後、俯瞰ショットとトラックバックにより車を追いかけながら1組の夫婦と交差させ、車が過ぎ去った後の彼らのキスシーンでの爆発音までの映画史に残る神憑り的な冒頭の長回し。
シャープなカッティング・イン・アクションとビートを刻むジャズがこの映画のドライブ感を半端ないものにし、仰角のクローズアップが画面を占拠するオーソン・ウ
【映画 超ショート時評】透明人間
エリザベス・モスが監視カメラの張り巡らされた家から逃げ出すオープニングは、この映画の主題が「視られること」であることを告げ、無人のショットが招き入れるフレーム外の不穏な視線は次第にミソジニー的な暴力へと転化していく。
不可視の視線に絡めとられたエリザベス・モスは、極限までその身を曝すことによって対峙する透明人間を可視化し、視られる者から視る者へと転換した彼女のバストショットは、不可視の魔力を飲
【映画100選 超ショートレビュー 第11回】狩人の夜(1955)
ロバート・ミッチャムの両手の指に彫られたLOVEとHATEの刺青は光と影を操るこの映画に相応しいアイコンとなり、幼い兄妹が彼の魔の手から既の所で免れる、2度に亘るスリリングなシーンを剔出する。
窓辺の椅子に座ってライフル銃を手にするリリアン・ギッシュの黒い影が子供の灯す蝋燭に照らされた瞬間、窓外に映るロバート・ミッチャムが瞬時に消える光のマジックが私たちの目を危うく眩ませる!
1955年製作
【映画100選 超ショートレビュー 第10回】ビッグ・コンボ(1955)
逃げる女と追う男たちのランニングアクションを捉えた冒頭のローアングショットはこの映画が純度の高い闇を駆使したフィルムノワールであることを端的に明示する。
魔術的なローキー照明が光と影のコントラストを際立たせ、ワンシーン=ワンアクトの長回しがバイオレンスの闇を更に深くし、光が闇を捕獲するラストシークエンスにおいて最高にクールなシルエットが浮かび上がる!
1955年製作/84分/アメリカ
監督:
【映画100選 超ショートレビュー 第9回】白熱(1949)
冒頭の列車強奪シーンにおいてトンネルを抜けてくる列車の水平運動と陸橋から飛び降りる垂直運動が鮮やかに交差し、この壮絶なフィルムノワールを華々しく起動させる。
電話機、ラジオ、発信器など小道具へのクローズアップによるフェティッシュな眼差しがサスペンスの精度を高め、潜入捜査という逃げ場のない設計に投げ込まれたカッティング・イン・アクションが否応なく凄みを増し、この映画を恐ろしく強度に満ちた活劇にし
【映画100選 超ショートレビュー 第8回】忘れじの面影(1948)
既に亡くなった主人公リザがかつての恋人ステファン宛の手紙を読み上げるという奇妙なスタイルによって進行し、劇場で「第二幕が開幕する」との匿名の声と共に10年ぶりに彼と再開した彼女の第二の人生が始まるように、画面の運動が映画の構造そのもののを規定していく。
絶えず動き続ける流麗なキャメラワークは同一のアクションとショットを少しずつずらす差異と反復を繰り返しながら、リザのステファンへの変わらぬ思いを
【映画100選 超ショートレビュー 第7回】蜂の巣の子供たち(1948)
画面の奥まで伸びる長い道のトラックバックショットがそこを歩く、社会空間から遺棄された孤児たちの自由で果敢なアクションを画面に躍動させる。
望遠のロングショットは白煙を上げて進む汽車、泰然とした山野や煌めく海を同時にフレームにおさめ、その中を駆け抜ける子供たちに寄り添うキャメラは零度の眼差しで戦争の痕跡を提示する!
1948年製作/86分/日本
監督:清水宏
日本初公開:1948年8月24日
【映画100選 超ショートレビュー 第6回】無防備都市(1945)
ナチス占領下のローマを描く重厚な時代背景に反し、この映画の活劇性が軽快な速度を生み出し、後退移動するキャメラは連れ去られる婚約者を追いかけて死への跳躍に身を任せる女のアクションを疾走感と共にフィルムに躍動させる。
扉をノックする音が内戦を仕掛けるゲシュタポに抵抗する住人たちの緊張感を画面に漲らせ、その扉=開口部は原題名の"開かれたローマ"が暗示する現実の裂け目が露呈した暗い深淵となる!
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