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ムダに教養がつくかも知れない不定期な雑学講座の連載(講義中は寝ないこと)~世界宗教の基礎知識3「キリスト教」をひもとく 第2講「旧約聖書」の世界 その1

そもそも「旧約聖書」とは

 さて、前回までの内容は、
あくまでも「キリスト教」のお話でしたので、
どうしても「新約聖書」の内容がメインになっておりました。

 しかしながら、イエスはあくまでも
ユダヤ教の聖書でもある「旧約聖書」の延長上の存在です。
この経緯で言うと神との契約を守る事が、
「生活様式」なのか「純粋な信仰」なのかという
大きな命題の違いに別れると思います。

ですから、その神の系譜や、過去における預言者の戒律は、
キリスト教においても根本的な信仰や
教学の土台となっているからです。

ですから、「旧約聖書」なくして
「新約聖書」は成立しないという仕組みになっています。
この関係は、仏教における
「上座部仏教」と「大乗仏教」との関係に
やや似ているのかも知れません。

「創世記」について

 「旧約」最初のブロックは、預言者モーセの書だと伝えられた
5つの章からなっています。
その最初の章が「創世記」です。
この内容は読んで字のごとし、
「この世界の始まり」の様子について描かれたものです。

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 はじめ、この地にはなにもなく、闇が大いなる水の上にありました。
そこで神は「光、あれ」と光を作り、
闇と区別して、昼と夜を作りました。これが第1日目の事です。
2日目に大空を作り、、天と名付けました。
3日目には海と陸地を作り、そして、陸地に植物を生えさせました。
4日目には太陽と月、星を作り、
それぞれ天における光の役割を与えました。
5日目には海に魚を、空には鳥を作りました。
6日目には陸地における動物や他のあらゆる生き物を作り、
最後に自分の姿に似せて「人」を作りました。
そしてすべてが完成すると7日目に安息の日としました。
こうして、1週間、実働6日でこの世界が完成しました。

創世記にはそのあとに、アダムとエヴァ、
カインとアベル、ノアの方舟、バベルの塔など
当初の人類と神との関係を示す逸話が書かれています。

 アダムとエヴァ 

創世記のなかで、天地創造もそうですが、
「人類」はそもそもどのようにこの世に現れたのか。
という内容も、重要な視点です。

 さて、人類の祖とされる「アダムとエヴァ」は、
旧約聖書では、どのようにして
この世に現れたと書いているのか。
という課題にはいります。

創世記の第1章では、天地創造の6日目に、
自分の姿に似せた「男と女」を創造したとあります。
つまり、生物の創造の際に、雄と雌の対で創造したのですから、
人間とて同様であるという文脈であるといえます。

  ところが、それにつづく第2章では、
「主なる神は、土で人の形を作り、その鼻に命の息を吹き込まれた。
そして人は生き物になった。」とあります。

アダムとは「アダモ=土」の事だったのです。
ですから、神が作った「人」とは
土のかけらから作られた「アダム」という男性であった。
ということになります。

さて、神はこう考えます。
「人が一人でいるのはよくない、
彼のためにふさわしいパートナーを作ろう。」
 
そう考えて、アダムが眠っている間に、
彼の肋骨を一本取り出し、その骨から一人の女性を作った。
それが「エヴァ」です。

この言葉はヘブライ語で「命」を意味します。
ちなみに「イヴ」というのはこの英語読みです。

 なぜこのような齟齬が生じたのかは、諸説ありますが、
一つには聖書編纂時においての単純ミスである事や、
アダムにはエヴァの前に妻がいた。という説までありますが、
まぁ、後世に成立した教典の過程での、
「社会的な事情」があったかも知れません。

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失楽園

こうして生まれたアダムとエヴァは、
苦労も憂いもない「エデンの園」という楽園で
何不自由なく暮らしていました。

 彼らに課せられたルールはたった一つ。
「この園の中央にある樹からは実を食べてはいけない。
食べたら死んでしまうよ」だけでした。

 しかし悪魔の化身である蛇がエヴァをそそのかしました。
「この実を食べると死んでしまうと
神様が言ったそうですが、死にはしませんよ」

そして言います
「むしろこの実を食べると賢くなって、神様のようになれますよ」
と言葉巧みに誘惑し、最初は拒んでいたエヴァも
ついにこの実を口にしてしまいます。
 そしてエヴァに勧められたアダムも、
この実を食べてしまったのです。

 すると、二人は急に自分たちが
裸であることを恥ずかしく思いはじめ、
イチジクの葉で腰巻きを作って身につけました。

 「羞恥心」はこのように、
「罪=神様のコントロールから外れること」
によって生まれたのです。

そのことでふたりのしわざは神様に見つかり、
「わたしが食べちゃいけないと言ったのに、あなた方は
どうしてあの実を食べてしまったのですか?」
と問いつめられました。

 するとアダムは「エヴァが勧めたから食べたんです」と、
エヴァは「蛇が勧めたから食べたんです」と、
お互いに責任転嫁を始めました。
しかしそんなのは理由になりません。
神の指示に従わないのは、罪なのです。

二人はエデンの園から追放されてしまいました。
さらに神様は、アダムには
「食べるためには汗を流して働かねばならない」、
エヴァには「子どもを産むには苦しまなくてはならない」
という罰も与えました。

 そして何よりの罰は
「いつか必ず死ななくてはならない」という大きなものでした、
そして二人はエデンの園の外側
東の一角に住むようになりました。


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