ガイコクジンとは何か

「アメリカに留学すると、日本人って簡単に言えなくなる」と、アメリカ文学の先生に言われたことがある。その時は、頭ではものすごくよく理解した気になっていた。確かに、「ナニ人」というのは国籍だけで決められるものではない。そりゃそうだ。だけど、それは頭で「わかった気」になっていただけで、何もわかっていなかった。それが体で理解できたのは、やっぱりアメリカに行ってからだった。

別に何か大きいきっかけがあったわけではないが、確かにあの国に「アメリカ人」なんていなかった。メキシコからの移民が多い地域だったから、メキシコ国籍とアメリカ国籍を持っている人もたくさんいた。バイリンガルが普通だった。ルームメイトは日本国籍とアメリカ国籍を持っていたが「自分は日本人」と言いながら日系アメリカ人のサークルに入っていた。アメリカのパスポートを元に、アメリカ国籍で大学に入学していた(だから日本語話者どうしがルームメイトになったんだけどね)。スイートメイトのご両親の生まれは中国とベトナムだけど、自分のことを「American」と言っていた。だからこそ逆に、むしろ、私のことを「full Japanese」と表現した現地の友達の気持ちもわかる。しかしいったい何をもってFullなのか。

「ガイコクジン」という単語はすなわち「日本人ではない人」のことだろう。鎖国なんてことしていた国だから、自国には自民族しかいないと思ってしまって当たり前である。しかしそれが当たり前で良かったのは数十年前までだ。
国は総力をあげてガイコクジン観光客を増やそうとしている。グローバルスタンダードとやらに追いつくために、小学校の英語も必修化した。そのくせ、未だに「ガイコクジン」という概念は消えない。言葉を学ぶというのはすなわち文化を学ぶことなのだから、そういうところからの教育は必要不可欠である。

そんなことを考えるようになったのは、バイト先周辺で始まったキャンペーンだ。日本に他国籍人として入国している人は、一定金額以上のお買い物で免税を受けることができる。要はその人たちを対象にスクラッチカードを配っている。しかし、免税を受けないがスクラッチカードをもらうこともできる。その対象は「訪日外国人」と書かれている。

さて。これをどうしたらよいか。
定義としては先ほど述べた「他国籍人として日本に入国」している人が対象で、在日外国人は対象外。また海外在留の日本人も対象外。しかしまあこれが本当に難しい。顔で見分けて英語で話しかけるなんて言語道断。同僚でそんなことをしている人もいるんだけど、顔で「ガイコクジンだ」と思うのはいくらなんでも前時代的すぎるだろ。私は「ご自宅用ですか?」と最初に聞いて、理解できなかったら英語にシフトする。そのあと「日本に住んでいますか?」と英語で聞くようにしている。

アメリカでも、人種差別の原因の一番大きなものは「言語」らしい。意外かもしれないが、見た目で差別する時代は終わりかかっている(ないとは言わない)。ちなみに私もスイートメイトが「I don't really like people who dont speak English well」と言っていたのを聞いてしまってちょっと傷ついたことがある。
閑話休題。つまり、日本語を話せないからといって「ガイコクジンである」という結論に至ってはならない。

ガイコクジンとは本当になんなのか。
これはキャンペーンだから、ちゃんとした基準がある。
免税も、法律で決まった行為だから基準がある。
だけどスクラッチカードに書かれた「外国人」という文字を見て、これが変わる日がこない限り、日本って島国は一歩遅れた国であり続けるのだろうな、と思う。

頭でわかった気になるだけで全然違うと思うんだ。外国人なんて、いないし、日本人なんていない。私は、日本で生まれて育って、日本語が母国語で、しょうゆ味のものが一番美味しいと思う、髪が黒くて肌が黄色い人間なだけです。

もちろん、簡単なコンテクストで「日本人」という言葉を使ってしまうのは仕方ないことですよね。そこがまた難しいんだが・・・・。

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