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焙煎機の技術的メモ3:焙煎機のカスタマイズについて〈作業効率向上とヒューマンエラー対策〉

当店で使用している焙煎機はマイスター2.5という半熱風式の国産焙煎機です。ちなみにフル・マニュアル・オペレーション機です。

焙煎は日々のルーティーン作業です。
なので、「焙煎機からなるべく手が離れるよう、同時にミスせずに」焙煎作業をができるようにすることを主眼にカスタマイズしています。

マイスター以外の焙煎機にも応用できる部分もたくさんあると思います。参考になれば幸いです。


《マイスター2.5焙煎機の作業効率の向上のための工夫と、ヒューマンエラー対策について》

私のマイスター2.5の操作盤

私のマイスター2.5の写真をご覧いただいて、最初に感じることは「いろいろなものがごちゃごちゃと後付けしてあってうるさいね」といったところだと思います。
しかしそれらは実務としての焙煎を繰り返すなかで、考え付いた工夫の結果です。

マイスター2.5はフル・マニュアル・オペレーション機です。
つまり、焙煎人は焙煎中、つきっ切りで操作しなければなりません。

しかし、焙煎作業中にハンドソーティング作業や陳列などの付帯作業も同時進行で進めることができれば、作業効率は大幅に上がります。

フル・マニュアル・オペレーション機でセミオートマチックに近いオペレーションを実現するために、私がしている工夫についてご紹介させていただきます。その工夫は以下の3点です。

操作や作業のタイミングを4つのタイマに任せることで、正確に、また忘れることなく、焙煎作業と他の作業を同時進行でこなせるようになる。
⇒作業の効率化

メニューボードを使用することにより、焙煎量ごとに変更しなければならない火力、排気ブロアの回転数とその操作タイミングを正確に把握し、ミスを防止する。
⇒ヒューマンエラーの回避

カウンタとメンテナンスメモなどを利用することにより、焙煎機と消煙装置のメンテナンスを忘れることなく実施できる。
⇒焙煎機の良好なコンディションの維持管理

写真を用いて具体的に説明します。

T1~T4:タイマ

〇操作や作業のタイミングを4つのタイマに任せることで、正確に、また忘れることなく、焙煎作業と他の作業を同時進行でこなせるようになる。⇒作業の効率化。
4つのタイマそれぞれの役割を説明します。T1、T2は焙煎開始と共にON
T1:チャフ飛ばし開始(焙煎開始後3~4分に設定)
 焙煎量により焙煎開始から3~4分後に、排気ファンの回転数を全開(1,600rpm)に上げるタイミングを計ります。
T2:チャフ飛ばし終了(焙煎開始後4~5分に設定)
チャフ飛ばし開始から1分後に蒸らし回転(800rpm)に戻すタイミングを計ります。
T3:焙煎豆の冷却時間の管理
焙煎された豆は冷却開始後3分程度(※1)で常温になります。このタイマにより、冷却に必要以上に時間をかけてしまうことを防止します。
※1:冬場で焙煎量500~1㎏程度まで。夏場で焙煎量1.5㎏以上の場合は4分程度
T4:再点火のタイミングの管理(兼、電源オフのタイミングの管理)
豆の冷却が完了したタイミングでオンにします。
豆温度計の指示温度が140℃まで下がる時間を計ります。140℃に下がったところで再点火してつぎの焙煎行程に入ります。
マイスター2.5は、豆温度計の指示が180℃を起点に約4~5分後(※2)に140℃まで下がります。
タイマで管理することにより再点火のタイミングを逃すことなく次の焙煎に移行することができます。
さらにその日の焙煎がすべて終了し、電源オフにできるタイミング(豆温度計の指示温度が60℃以下になる)も管理することができます。(最後の豆冷却完了後25~28分)
※2:冬場の所要時間。夏場は5~6分後

なぜ私はタイマを共用せず、目的ごとにタイマを用意するのかといいますと、共用すると、そのたびに時間を設定し直さなければならず、そのぶん手間がかかるからです。

〇メニューボード(写真中③)を使用することにより、焙煎量ごとに変更しなければならない火力、排気ブロアの回転数とその操作のタイミングを正確に把握し、ミスを防止する。
メニューボードには、銘柄、焙煎量、焙煎度が記載されており、これによりチャフ飛ばし開始終了時間セット、火力設定を間違えないよう管理しています。

〇カウンタ(写真中①)とメンテナンスメモ(写真中②)などを利用することにより、焙煎機と消煙装置(富士工機 ローヤルクリーン)のメンテナンスを忘れることなく実施できる。
カウンタで焙煎回数をカウントすることで、消煙装置の清掃タイミングを計っています。

消煙装置(富士工機 ローヤルクリーン)のユニットとフィルタは焙煎量30㎏ごとの清掃が推奨されています。
なので焙煎量500gを1カウントとしてカウントし、60カウントでユニットとフィルタを清掃しています。
これにより、排気系を常に最良の状態に保ち、焙煎条件の安定化を図っています。

また、メンテナンスメモには、ベアリングの給脂、熱電対温度センサの清掃などの比較的短周期でメンテナンスをする部分の清掃作業予定日を記載してあります。そして常に目につく場所に掲示することにより、メンテナンスの時期を逸さぬよう心がけています。

〇静電気除去シート(写真中④)
焙煎中、椅子に座ってハンドソーティングなどの付帯作業をしています。その間に衣類に静電気が蓄積し、焙煎機に触れるたびに感電します。静電気除去シートは感電ショックを和らげるために有効です。焙煎機に触れる前にまず静電気除去シートに触れる習慣をつける必要がありますが、すぐに習慣づけることができると思います。(冬場のみ)

追記:焙煎量毎に火力=ガス圧(kPa)を変更します。そのガス圧を管理するための「ガス圧管理マグネット」も追加しました。

ガス圧管理マグネット

全国のマイスター2.5使いの方、そしてその他の焙煎機をお使いの方の参考になれば幸いです。

追記:マイスター焙煎機について
マイスターシリーズは、岡山県の(株)大和鉄工所が製造する純国産焙煎機です。
大和鉄工所と田口護の共同開発により2002年に完成し、現在2.5、5、10、20の4機種がラインナップされています。
当店のマイスター2.5はマイスターシリーズ中最も小さなモデルで、生豆の重量で2.5㎏までの焙煎ができます。
ちなみにマイスターシリーズは、ダンパー操作(=排気ファンの回転数の変更)を、指示通りに自動操作可能なセミ・オートマチック・オペレーション機なのですが、マイスター2.5だけはフル・マニュアル・オペレーション機です。


サポートは謹んで辞退させて頂きます。お気持ちだけで十分幸せです。