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ギフト~坂道~

 あっという間に夏休みになった。といっても毎日のように部活があるから、あまり休みという感じはしない。おれは学校までのこの坂道が嫌いだ。春はまだ良かった。桜並木で、きれいだなと思った。でも少しでも暑くなってくると、もうしんどかった。校門までが遠く感じた。なんでバス停は校門前にないんだろうと何度も考えた。でも考えたところで仕方ない。部活があるから登らなきゃいけない。足取り重く坂を登り進んでいると、
「おー橘!おはよ〜!」
豊中が部活に向かうおれの後ろから駆けてきた。あの草むしりの日以来、豊中はよくおれに絡んでくるようになった。
「おーおはよ」
おれは立ち止まって振り返り挨拶を返した。豊中はおれの隣に並び
「今日もあちーな。絶対体育館蒸し風呂だよ」
と空を仰ぎ、眉を下げた。
「でもまだ室内だからいいじゃん。おれらは直射日光浴びながらだよ?つれーよ」
おれは足元を見ながら、眉を下げた。
「まぁそうだよな。そっちの方がつらいか。お互い熱中症には気をつけようぜ〜」
「おー」
「じゃな」
「じゃあな」
そう言っておれは校庭へ、豊中は体育館に向かって行った。

 豊中は本当にいいやつだなと思う。


 

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