マガジンのカバー画像

6
運営しているクリエイター

記事一覧

SHAKE!

人はみな
若葉の記憶を有した老人であり
熟れた果実の予感を秘めた若者
誰もが道半ば 行く先も 
わからぬまま死ぬ定め
だから、はじらうな
理解することが叶わぬなら
せめて格闘するがいい
大道に身を投げ出した
午前三時の酔っ払いのように
届いたばかりの言葉をばらまいて
誰もがそれを踏みつけていくだろう
そこから野の草が生えるだろう そしてそこに
小さなみすぼらしい花が咲くだろう

トランペットを鳴ら

もっとみる

抱擁

ぬくもりに包まれ
ゆっくり ときほぐされながら
かろうじてかたちを保っている
言葉を失った唇を やわらかい
結び目につなぎとめる
ぼくはここにいる
ありがとう
ぼくはまだここにいる

ルルー

ルルー

眠りたくない夜と

眠りたい昼をくり返し

ぼくのなかから

朝が消えた

きみに応える「おはよう」

のコードが思いつかない

昼が夜に入れ替わる

一瞬のスキをついて

きみの横にもぐりこもう

おはようとおやすみの不協和音で

一瞬だけ 声をおくれ

ルルー

困ったときの神頼み

困ったときの神頼み

絶望を知らない「大丈夫」は軽い

絶望を知らない「神」は弱い

「大丈夫」も「神」も絶望を解決しない

でも、そのために二つの言葉はある

追いつめられた最後の瞬間のために

「神サマ、タスケテー」

「ダイジョブダイジョブ」

あとは、テキトーに祈っておけば

ダイジョブダイジョブ

戦争を知らない子供の子供

戦争を知らない子供の子供

戦争から帰った男は
ところどころ残り火がくすぶる
何もなくなった街を眺め
胃からつきあげる鈍い怒りを感じた
だれのせいでこんなことになったんだ

こんなことなら最初から
何もなかったらよかったのだ
この町も、世界も、オレも
そうすればオレたち 殺しあわなくてすんだ
男は死んだ戦友の数だけ酒を飲んだ
何の味もしなかった

そんなある日
殺伐とした時代の 殺伐とした街で
男は女と出会った ぽよぽよっと

もっとみる
1993年詩集

1993年詩集

つける題なぞあるでなし
1993.4.24.

西日で干したら
しなびちまった
アイロンかけても
もうもどらない

俺は憤怒と爪をかむ
逆立ちしたって笑えない
やすらかに眠れる奴なんて
俺は絶対信用しない

歩いて走って歩いて走って
歩いて走ってちょっと笑う
俺は憤怒と爪をかむ
逆立ちしたって笑えない

パンクとは何か 
1993.6.28.

ぼくは泳いでいる
下水溝の中を泳いでいる
流れに逆ら

もっとみる