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常識こそクリエイティブのチャンス


今回は常識について書いていきます。

“常識”って何だろうか?と考えることになったきっかけは、子どものときからの祖父の教えです。「”常識”はもたなくていい、”良識”をもちなさい。」という教えで、今でも大事にしている言葉です。(ちなみに祖父の言葉でもう1つ大事にしている言葉は「妻を大切にしなさい」という言葉です。その影響もあり、私は他に追随を許さないトップ愛妻家の1人です。)

戦前生まれの祖父にとって、祖父は、戦前/戦後という時代の変化を経験し、都合のいいように移り変わる”常識”というものの”ええかげんさ”を嫌いで、本当に大切にすべきものを見抜き、大切にしなさいということを教えたかったのだと思います。

この教えを受けて、自分なりに”常識”というものを考えた結果を書いていこうと思います。

ここからは、常識を「特定の社会の成員が共有し、前提として疑わない認識」と定義して、話を進めていきます。(Wikipediaからの引用ですが、しっくりくる定義です。)

世の中に常識が存在するのは、間違いなくメリットがあるからです。伝わりやすいし、結構正しいし、常識を前提に話せば、人から責められません。まさしく安心し、頼りになる存在です。

一方で、デメリットもあります。”前提として疑わない認識”という定義の通り、常識に頼ると、思考停止を招いたり、言語化や具体化の努力を怠りがちになります。また、頻繁に起きているというだけで常識になっている物事もあります。こうした表面的な常識でさえ、私たちは疑うことなく鵜呑みにしてしまいがちです。例えば、「駅近マンションは値下がりしにくい」は表面的な常識の一つだと思います。

学校や会社でも、このデメリットのように、常識を盾に思考停止した人たちに出くわすことは多いのではないでしょうか?

こうした人は何も考えていないのに、自分は責められない場所に身を置き(そこはちゃんと考えてるのかよと毎度つっこみたくなる)、常識を振りかざしてきます。こういった人たちを見て、私のように常識自体を嫌う人が増えます。

ですが、こうしたデメリットや思考停止をした人への嫌悪感だけを理由に、ただ常識を否定すべきでしょうか?否定するのは非常に簡単ですが、もったいないです。

常識をただ否定するのは、迷惑でしかない


常識を全面的に受け入れる人の対極に、常識をおもしろくないと、徹底的に受け入れず、常識に反したことをやろうとする人もいます。

例えば、盗んだバイクで走り出した尾崎豊などただの迷惑でしかありません。そうした人は常識から、ただ外れようとし、外見だけをただ作り上げて、中身がないものを生み出すケースが多いように感じます。

私は、常識を受け入れる・受け入れないの二項対立ではなく、新しい道を模索する必要があると考えています。ここからは、単なる二項対立にならないためのアプローチを書いていきます。

前置きで、常識のメリット・デメリットを整理したように、考えたい常識や事象に対して、じっくり考えて、良いところ、悪いところの両面を見ることが必要です。なぜなら、人の性質として、まず悪いものに目がいき、パッと批判しがちであるためです。この両面を見る姿勢が常識に向かい合う1歩目です。

常識から新しい道を探すための2つのアプローチ


その上で、常識を2つの方法で活用していきます。1つは常識を「思考のスタート地点」として使うアプローチです。簡単に言うと、常識を成り立たせる”前提”に常識を打破するヒントを探すということです。

もう1つは”常識”を思考の根幹におかず、”良識”を思考の根幹におくアプローチです。これは祖父の教えそのままの考え方です。言い換えると、”本当に大事なこと”に立ち返るということです。(“何が本質か”を考えることからがスタートなので、思考自体はしんどいのが難点ですが。)

論を述べているだけでは、分かりにくいので、我々のビジネスの話を例に具体的に話をしていきます。

弊社Baridi Baridiはダイキン工業と東大関連ベンチャーWASSHAとの合弁企業です。

タンザニアでは、コンテナに詰め込んだ安価なエアコンを輸入し、価格勝負で売り切るビジネスが主流です。そのため、お客さんは4-5万円払えば、購入自体は可能です。

ですが、安価な商品のため、エネルギー効率が悪く、毎月の電気代が非常に高額です(1年間使用した場合、電気代は7-8万円)。更に、停電による急激な電圧変化や砂塵によるフィルターの汚れなどにより、メンテナンスや修理が必須です。

つまり、購入後にかかる費用が高額となるため、購入したものの使用をあきらめてしまうケースが非常に多いです。

こういった市場での課題を見て、我々は省エネエアコンのサブスクリプションサービスを提供しています。ダイキンの省エネエアコンで電気代を半額以下に抑えて、無理なくレンタル料金を払ってもらうビジネスモデルです。更に、こちらは継続して課金してもらうために、エアコンを継続的にメンテナンスし、壊れたらこちらの責任で修理をします。

①常識を「思考のスタート地点」として使うアプローチ


この事業企画時に、空調業界の経験をもつ人たちからは事業の成功は難しいのではないかというフィードバックが多く寄せられました。なぜなら、この事業のやり方が空調業界の常識に反しているからです。

空調業界の常識
1. 据え付け工事が必要なエアコンという商品はサブスクに不向き。
 (途中解約されると初期費用がまかなえない)
2. 途上国で省エネ性能が高い高級機は売れない。
 (価格帯が合わない)
3. 市場規模が小さい商圏には自前の販売会社では採算が合わない。
 (売上に占める人件費負担が大きい)

この3つの常識は、きわめて正しいフィードバックです。

この常識を考察する上で、タンザニアで協業させていただいているWASSHAのビジネスにたくさんの学びを得ました。

WASSHAのビジネスは簡単に言うと、太陽光パネルとランタンを無料で貸し出し、お客さんはランタンを使用したい分を、モバイルマネーで支払う。WASSHAはこのように全国からお金を集め、その集金したお金の一部を太陽光パネルとランタンを管理する人に支払うというビジネスモデルです。このビジネスモデルの面白いところは、WASSHAがお金の流れをすべてコントロールしているところです。

そこで気がついたのが、空調業界の上記の3つの常識は、“既存のお金の流れ”が前提になり、常識として成り立っているのではないかということです。メーカーが代理店に売り、代理店がエンドユーザーに売る。代理店はメーカーにお金を払い、エンドユーザーは代理店にお金を払う。

このお金の流れでは、代理店はエンドユーザーに売りやすいものを売るし、高級機を在庫で抱えるリスクは取れない。このように、お金の流れがビジネスの限界や常識を決めています。

もし、モバイルマネーの活用で、エンドユーザーから直接お金を集めることができたら、この常識を成り立たせているものを乗り越えることができるかもしれないというのが、われわれのエアコンサブスクビジネスの仮説です。

このように、常識からその背景・事象などを深堀りすると、常識を成り立たせている根本にあるものが見えてきます。

② 良識を思考の根幹に置くアプローチ


ビジネスの世界では、「顧客に売れるものを売る」「儲かるものを売る」というのが常識です。一方「本当の意味でお客さんのためになるものを売る」というのが良識ベースの思考です。つまり、”本当に大事なこと”に立ち返ろうということです。

せっかくエアコンを購入したのに、使い続けられないなんて、絶対におかしい。本当に大事なことは、エアコン業界のプレイヤーたちが儲かることではなく、お客さんがエアコンを使って快適な生活ができることです。それだけを徹底的に考えた結果、エアコン業界の常識にとらわれないビジネスモデルが完成した、という側面もあります。

常識の賞味期限は短いですが、良識をベースにしたビジネスは比較的に、持続的なビジネスになるはずです。ええことだけ言って、儲からなくてもいいと言っている訳ではありません。お客さんのためにもなるし、チームメンバーも誇りをもって働ける。その結果として、こっちの方が持続的なビジネスになると信じているからです。

Baridi Baridiのビジネスを基に、「常識を思考の起点においた思考」と「良識を根幹においた思考」の2つのアプローチを説明しました。常識をじっくりと思考することは”新しい仮説・アイデアへの入り口”になり、良識をベースに思考することは、”常識と対比して、良識(本当に大事なこと)を浮き彫りにするキッカケ”になります。

つまり、クリエィティブの反対側に位置づけられているような存在である”常識”はクリエイティブの入り口にもなりうるのです。だからこそ、常識にただ賛同する、否定するだけでは、非常にもったいないのです。

このnoteが、様々な常識に対して、単なる賛同や否定をこえて、1歩思考を進めるキッカケになればいいなと思います。向き合った過程・結果こそが道を切り開く武器になります。それだけではなく、自分(自分の思考)だからこそ切り開ける道を進むこと自体、おもしろいことだと思います。

私もBaridi Baridiのチームメンバーと一緒に、”空調業界の常識を打破する””良識に基づいたビジネスを成功させる”ということにチャレンジしています。また、成果を出し、自分たちがおもしろいと思うことに、より一層取り組んでいきます。

締めが宣伝で申し訳ないですが、このビジネスにチャレンジしてくれるメンバーを募集しています。(Baridi Baridiのタンザニア法人は9月に登記完了し、事業開始のスケジュールが見えてきたため、先月より採用活動を本格的にスタートしました。)

まだまだ実績がないですが、事業の仮説時点から入ることで、実際に、一から事業を一緒に作っていくワクワク感はあります。ビジネスをする市場自体が日本人の常識が通じない市場であるし、今までにないものを創り出すことが仕事なので、既存の枠をこえて、チャレンジをしたいという人には楽しい職場です。

Wantedlyの採用ページ (Updated on 12/26/20)

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