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【短編小説】たぶん、大丈夫
ひとり娘のヒナ子は四月から小学校に入学したが、まだひとりで登校したことがない。「ママと一緒じゃないと行かない」と毎朝駄々をこねるのだ。もう五月になるというのに毎朝私が小学校まで送り届けている。私は早く何とかしなければと焦っているのだが、夫は「そのうち友達でもできれば大丈夫だって」などと能天気なことを言って私のイライラを増幅させていた。
ある日曜日のこと。私は、ヒナ子が私と寝る時に使っている大好
【短編小説】笑える夏 #青ブラ文学部
春生は生まれた時から私の言うことを聞かない子だった。
「お昼はチャーハンでいい?」と聞くと「ラーメンがいい」と言い、「今日は暑いからそうめん食べようか」と言うと「ざるそば食べたい」と言うような、端的に言うと面倒臭い子だった。
もちろん親としてはそんな子でもかわいい。そんな子だから余計に言うことを聞いてあげたくなって甘やかして育ててしまったかもしれない。
高校三年生になり、周りの友達が大学受